ときの忘れもの ギャラリー 版画
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ごあいさつ


 
 ときの忘れものは、1995年6月にオープンしました。
それ以前からここにおり、編集事務所をやっておりました。
今の建物は木造とはいえ、真四角の現代建築ですが、当初は同じ場所にあった仕舞屋風の一軒家でした。私たちは1990年から6年間ほど『資生堂ギャラリー75年史』という大部な本の編集に携わっていたのですが、95年に刊行されたので編集チームを解散し、それまで編集室だったところを改造して小さな展示室をつくり、「ときの忘れもの」というへんてこな名前をつけました。庭には紫陽花などの樹木が生い茂り、訪れる人によくほっとするとほめられたものでした。
南青山の一等地にあるものですから、何かとたいへんで、2003年春に建て替えられました。設計者が青森の十和田湖ホテルの設計にも携わった木造の専門家で、何だか画廊らしくない山小屋風の内部になりました。天井が5メートルもあり、スタッフには快適な空間です。
第一回企画展は「銅版画セレクション1/長谷川潔、難波田龍起、瑛九、駒井哲郎」展でした。以来、あっという間に10年がたちました。
 よく「ときの忘れもの」という名前の由来をきかれます。法人名は「有限会社ワタヌキ」で「ときの忘れもの」はいわば屋号です。画廊とかギャラリーという冠をつけなかったのは、画商と編集事務所を兼ねているからで、ささやかな私たちの志と夢をこめた命名でした。
「とき」は「時」であり「時代」であり「記憶」であり、「歴史」です。
ときの彼方に忘れ去られたもの、時代の流行に乗り遅れてしまったもの、そういう中に真に美しいものがあるのなら、誰かがそれを言い続けなければならない。忘れないでと小さく叫んでいる作品を、忘却の河からすくいあげたい、そう思ってつけた名前です。
 私たちが美術界に入ったのはもっとずっと前、1974年でしたが、それからまあ山有り谷有りの幾星霜。その辺りのことは、ある雑誌に「連戦連敗」と題して書いていますので、ご笑覧下さい。
 二人の息子たちが、ホームページをつくってくれて、ネットでの発信を始めてから数年経ちます。正直言ってネットで絵を売るとは(売れるとは)夢にも思いませんでした。私、腕時計はしたことがない(時計がないから時間は私の自由だ。少年の頃、母に買って貰った時計をしたままうっかりお風呂に入ってしまい、以来身につけるアクセサリー、機器類は断念しました)。家にはテレビもない(おかげで奥さんとの対話と読書の時間だけはたっぷりある)。車の運転もできない(短気な私がもし運転していたらとっくにあの世ですね)。数年前に買い替えた全自動洗濯機は何べん奥さんに叱られても使い方がわからない(妻なき後の老後は悲惨ですな)。
つまり旧世代の人間で、インターネットがどうして世界中につながるのか、どうして電話代は地域で大きな差があるのにネット料金は同じなのか、何度息子たちに説明されても理解できない。
ただし、還暦を迎えた私の世代にしては少し機械に強い点があって、ひとつは電卓が早い。大学を出て1969年に入社した某新聞社で先ず計算課というところに配属され算盤を渡された。これには参りました。新聞社に入って算盤させられるとは夢にも思わなかった。そこで、当時は非常に高価だったカシオの卓上計算器を勝手に買い(正確にいうと奥さんに買ってもらい)猛練習。おかげで、間もなく電卓名人になり、当時流行っていた「電卓VS算盤」大会に出場したら、とけしかけられる程でした。
もうひとつは、40歳も半ばを過ぎて東芝ルポを使い出したことです。これも理由があって、私40歳で現代版画センターを潰してしまい無一文になってしまった。やっと就職できた先がフランス人の経営する企画会社で、私以外は全員フランス語ぺらぺらの才色兼備の女性たち。海外の美術館へ手紙や企画書を送らなければならないのですが、もちろん私の唯一の専門語は日本語ですから、スタッフの女性に翻訳して貰わなければならない。その下書きを誰も読めない、つまり悪筆。日本人でも奥さん以外誰も読めんのに、ましてボスはフランス人。これにも参りましたね。
その頃の私は借金返済だけが人生の目的でしたから、給料(貰ったとたんに借金返済に充てられる)を払ってくれるボスには逆らえない。ボスにも読める日本語は活字しかない。かくして東芝ルポを買い、猛特訓したという次第です。
おかげで、ネットの仕組みは分からなくても、こうしてネットに書き込みを自分ですることはできる。
 ここまで書いて来てふと気付いたんですが、「画廊主」というのは正確ではなく、これを書いているのは「画廊主の亭主」であります。
家族労働に毛がはえた程度の零細企業である「ときの忘れもの」は、婦唱夫随で、社長はわが愛する奥さんでありまして、私「ときの忘れもの亭主」は株主ですらなく、一従業員であります。
経験だけはたっぷりあるが、見識ははなはだ頼りなく、商売にいたってはまるで頼りない画廊の亭主ですが、冷静沈着な社長と心優しいスタッフに囲まれて何とか生き抜いております。今後とも宜しくお引き立ていただきたいと願う次第です。
建物の外観


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