磯崎 新
連刊画文集[百二十の見えない都市]

磯崎新 連刊画文集[百二十の見えない都市] 第二期刊行概要と予約募集要項


磯崎新 連刊画文集[百二十の見えない都市]

 連刊画文集とは、作家の作品創作と予約購買者への頒布を同時進行的に行うシリーズ版画のエディション企画です。すでに明治末から昭和初期における創作版画のなかには、この方法でつくられた名作が少なくありません。海外においても長年月をかけて制作された大連作版画の誕生のかげには、版元とそれを支えるパトロンたちの後援がありました。
磯崎新のほとんどの版画を版元としてプロデュースしてきたときの忘れものは、1998年8月〜99年9月の12回にわたって、版画とエッセイが予約購読者(限定35人)に郵送される[栖十二]という連刊画文集を刊行しました。同じように制作と同時進行でパトロンを募るという今回の企画は、10年間で[百二十の見えない都市]を版画240点とエッセイ120篇で描ききるという壮大なプロジェクトです。第一期12都市(版画24点+エッセイ12篇)は2003年1月に完結しました。
引き続き第二期の刊行を進めます。


photo by Eiichiro Sakata

磯崎新「百二十の見えない都市」最新情報

・発行形式:限定予約出版(35部)。予約は年度ごとに募集します。1年で12都市(12号)を刊行、4号ずつ3回にわけて予約購読者にお届けします。以後毎年12号ずつ、10年間にわたり刊行します。
  
・作品内容:磯崎新の・オリジナル版画(2点、各作品にサイン、番号入り)と・書き下ろしエッセイを一組(1号)とし、特製たとうに納め1年で12号、24点の版画をお届けします。

・体裁:各号とも、〈オリジナル版画2点+エッセイ〉から構成されます。 
   
・サイズ:版画用紙サイズ=38×38cm
     本文用紙(三つ折り)サイズ=40×120cm
     たとうサイズ=40.6×42.5cm

・版画技法:リトグラフ、銅版、シルクスクリーンほか。石田了一工房、白井版画工房など日本を代表する刷り師の協力を得て各種技法(および併用版やコラージュ)で制作します。

・本文:シルクスクリーン。刷りは、1977年以来、磯崎新のシルクスクリーン全版画を刷り続けている石田了一工房です。

・第二期発行予定:第1回頒布(4都市)を2003年6月刊行、第2回頒布(4都市)を2003年9月刊行、第3回頒布(4都市)を2004年1月に刊行、第二期分を完了予定。 
   *第二期完了後、あらためて第三期(12都市)の予約募集を行います。 

・予約定員:35名。

作者=磯崎新
企画編集=植田実
装幀=北澤敏彦
制作進行=綿貫不二夫
発行=ときの忘れもの

◎第二期(12都市)予約特別価格
価格はお問い合わせ下さい

[注文ページへ]
*各号の分売は致しません。申込は先着順にて、1〜35の限定番号を決め、定員になり次第、締め切らせていただきます。複数年度の予約も可能です。
*分割払いについてはお問い合わせ下さい

◎特典
・予約購読者のお名前を画文集のパトロンとして奥付に刷りこみます。
・画文集制作に連動して事務局では、伴走者として磯崎新の初期から現在まで、建築のみならず広い範囲での活動を見守ってきた植田実を編集人に迎え、「事務局通信」
をほぼ月刊で発行します。連続インタビューを軸に、リアルタイムで磯崎の活動の全貌を記録し、予約購読者の皆さんへお届けします。2003年1月現在、13号まで刊行さ
れています。
・磯崎新の建築ツアーの実施、展覧会へのご招待など。

申込先:[磯崎新 百二十の見えない都市]事務局

〒107-0062 東京都港区南青山3-3-3 ときの忘れもの 内
Tel:03-3470-2631 Fax:03-3401-1604

 

第一期の作品

2001年7月 漏斗都市

 

 

2001年8月 地中都市

 

 

2001年9月 垂直都市
2001年10月 方城都市

 磯崎新さんからのメッセージ

Uさん、Wさん
 はじめて世界の街を旅したのちに、私はひとつの都市論をかき、「見えない都市」 という小みだしを終章につけてしまった。
言葉は呪縛するのですね。以来四十年、私の都市についての思考、提案、デザイ ン、すべてこのひとことを巡ってなされてきました。それから十年程して、イタロ・カルヴィーノが同名の小説を書き、五年程して日本語でも読めるようになった。マルコ・ポーロが、シルク・ロードで訪れた街のことをフビライ・カンに物語るという趣向です。これは小説、私のは都市論、無関係なんですが、虚構という点では同じだと気づいたのは、更に二十年後。南支那海上に島=都市をつくり、これを『海市』(ミラージュ・シティ)と命名したときでした。砂漠の都市も蜃気楼のかなたにゆらめいていた。カルヴィーノはあの光景をイメージして『見えない都市』という題を思いついたに違いない。
 どの都市も刻々と姿を変えます。記憶もあやしくなります。空想が肥大します。だ が、人々はそんな都市に住んでいると思っている。みずからの栖をつむいでいる。集合して空中に楼閣を組みあげている。想像のなかの楽園とか死後の都市のほうがよりきらびやかに飾られている。眼前の都市の姿を信じてないためでしょうか。都市が見えないことを直観していたためだと私にはみえます。

 Uさん、Wさん
あなたがたは、私が一ダースしか住宅の設計をしてないことを知っていたのです ね。だから、先回の企画『栖十二』という数が算出されたのでしょう。都市については四十年以上やっている。スケッチブックを持ち歩いている。異った街で、違った地勢をみると、無理を承知でコンペに参加している。これは、つかみどころのない『見えない都市』を相変らず捜しつづけている証拠ではないか。もう十年しか残っていないよ。とりあえず、十ダースで区切ってみたらどうだ、こんな具合いに裏読みされたのじゃないか。
 『晩年』と題した小説はその作家が若年の頃に書いています。晩年に晩年のことを 書く阿呆らしさを知っていたのはF・L・ライトや谷崎潤一郎やです。彼等は別人のような仕事をしています。それにあやかって、『百二十の見えない都市』が、私に同じシチュエーションを与えてくれるならば、これは受けねばなるまい。『見えない都市』を見せることができれば、四十年前に口ばしったことの仕末ができる。あのとき虚だったものが実になっている。実だったものが虚になっている。虚虚実実というじゃないですか。『見えない都市』はそのどちらでもある。往復しています。その正体をどうやって引き出せるか。

 Uさん、Wさん
 とはいうものの勝算はまだない。いままで用いたことのない手法だけを使おうとし ている。いくつこなせるのだろうか。百二十という数の都市をマトリクスにおさめようとして、はたして実数か虚数か混乱してもいる。決まっているのは今世紀最初のディケードにうずめる箱の容積だけです。
 日付けが変りました。それがあなたがたの送った作業開始の指令だったんですね。


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  銅版画集“栖 十二”
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最新情報

2005年07月07日

磯崎新モスクワ展のDM

モスクワ展のDM  

2005年07月01日

『百二十の見えない都市』最新状況のご報告

「ときの忘れもののメイン企画である磯崎新連刊画文集《百二十の見えない都市》について、新たにこのブログを使って、制作の進行状況や、磯崎新関連のイベントのお知らせをすることになりました。担当は6月に入社したばかりの新人・尾立麗子です。どうぞ宜しくお願い致します。最初のニュースは、制作が遅れていたお詫びとともに、目下の磯崎先生の制作ぶりをパトロン(第二期予約購読者)の皆さんにお伝えした書簡を転載致します。」

『百二十の見えない都市』第二期予約購読者の皆様

拝啓
 いつもお世話になりありがとうございます。
皆様にご参加いただいている磯崎新先生の『百二十の見えない都市』第二期の企画につきましては、先日お知らせした通り、遅延を取り戻すべく、磯崎先生がエンジン全開で制作に取り組んでおられます。ご報告が遅れましたことを、お詫び申し上げます。

 別紙の植田実編集長からの書簡の通り第二期の構想が大きく変更になりました。もともと10年かけて『百二十の見えない都市』を描く構想の中で、磯崎先生の頭の中には、既に全体の120都市の全貌は見えておられるのでしょうが、その中のどれをいつ描くかという順番の問題は、磯崎先生のいまの状況と密接不可分に結びついています。ここ数年のダイナミックな活動全体を反映した形で、第二期の内容が変更になったことを、先ずはご報告致します。
 加えて、購読者の皆さんには嬉しい変化もあります。
第一期募集時の挿入作品2点の予定サイズは32×25cm、用紙サイズは二つ折り32×50cmでした。ところが、皆様のお手元にお届けした第一期作品は、作品も大きくなり、用紙も三つ折り40×120cmと、大幅にバージョンアップしたことはご承知の通りです。
ところが、今回の第二期の作品制作においては、挿入作品2点(銅版)のほかに、エッセイと絡んでさらに大判作品(シルクスクリーン 用紙サイズ40×120cm!)が1点追加されることとなりました。従ってお届けする作品は一都市につき3点、12都市で36点という大画文集になります。
 コストのことを考えると版元としては頭の痛い状況ではありますが、それだけ磯崎先生が燃えておられる証左でもあり、皆様と素晴らしい作品群の誕生の喜びを分かち合いたいと思っています。
 制作は、12都市分が同時進行しています。刷りやエッセイの執筆状況にもよりますが、画文集のお届けは数都市分づつにわけて行なう予定です。第一回の納品時期についてはもう少しお時間をいただきたく、宜しくご了承のほどお願い申し上げます。
 
 事務局通信が中断し、いまの磯崎先生の活動のご報告ができず、申し訳ないと思っておりますが、先日ご案内の通り、近々誌名を『磯崎新研究(仮題)』と改め、植田実編集長のもと刊行を再開する予定です。

◆ひとつだけ、最近のニュースをご紹介させていただきます。
磯崎先生は近く、下記の展覧会のためにモスクワに赴かれます。
『磯崎新 モスクワ展概要』
展覧会名・・・RE-RUINED HIROSHIMA
 会場・・・・・モスクワ建築博物館(5 Vozdvizhenka str., Moscow, Russia)
 主催・・・・・日露文化フォーラム
 会期・・・・・2005年6月25日〜約一ヶ月(予定)
展覧会主旨:
日本とロシアの文化交流の発展を図るため、2004年に「日露文化フォーラム」が創設
されました。その関連事業として、2005年より建築およびパフォーミングアートの分
野でのイベントが日本とロシアにおいてそれぞれ隔年で行なわれます。
今回の磯崎新の展覧会は、その建築分野での第1回のイベントとして開催されます。展
覧会名の“RE-RUINED HIROSHIMA”は、1968年のミラノ・トリエンナーレのため  に制作されたインスタレーション“Electric Labyrinth”に用いたフォトモンタージュのタイトルからきています。この作品に含まれている、建設と破壊を同時に想起させるコンセプトは、一貫して磯崎のプロジェクトや展覧会に現れているものです。
今展覧会では、その“Electric Labyrinth”を会場にあわせ新たに制作しなおし、中核となる作品として展示されます。
会場内では、上記インスタレーションに加えて磯崎の60年代から現在に至る作品を系譜ごとに紹介します。コンセプトに対する具体的なイメージを提示することで、磯崎新の半世紀を俯瞰できるような展示となるでしょう。

上記モスクワでの展示には、“Electric Labyrinth”のほか、作品パネル、版画(シルクスクリーン、銅版画)、映像などが使われる予定です。現時点では未定ですが、いま制作している《百二十の見えない都市》の中の数点の試刷り作品を出品するかも知れません。その場合は、予約購読者の皆さんにお届けする以前に、モスクワで一部が発表されることを、どうかご了承願います。
もうひとつ、予約購読者の皆様には嬉しいニュースがあるのですが、まだ詳細を発表できる段階ではなく、次回のお楽しみということにさせて下さい。

 最後に人事のご報告です。この企画の第一期からというより、1998年に始まった連刊画文集《栖十二》から事務局を担当し、画文集の編集に携わってきた栗原佐和子が、このたび退職することになりました。実は昨年春から体調を崩し、一年間療養につとめてきたのですが、なかなか復調がならず、誠に残念な結果になってしまいました。後任のスタッフについてはあらためてお知らせ致します。

皆様にはどうか変わらぬご支援とご理解をお願い申し上げます。
 季節柄、どうぞご自愛下さいますよう。
                                   
                                   敬具

2005年6月14日          ときの忘れもの  綿貫令子 綿貫不二夫 


       『百二十の見えない都市』第二期予約購読者の皆様へ

 磯崎新さんが『百二十の見えない都市』第二期の構想を考えておられた、ちょうどその時期と重なって、磯崎アトリエはたいへんなことになっていました。とりわけ海外のプロジェクト群が実現に向かって形をとりはじめ、それと併せてここ数年の仕事をふり返ってみると、磯崎さんの初期のプロジェクトの数々が突然現実のものに転じつつあるような様相を呈してきたのです。
 数年前からのいくつもの展覧会や本の刊行で、現代にこそ強いメッセージを発信した「アンビルド」が、その構想をより生々しい姿で建てはじめられる。そういう事態になってきました。
 「次のシリーズは、建設が未完に終わった都市を取り出そうと考えています」と、磯崎さんは連刊画文集第二期刊行概要に予告され、具体的な十二の未完都市の名まで列挙されていますが、今回は予定を急遽変更し、いま磯崎さんが日々の実務においてもっとも腐心されている、これらの実現しつつあるプロジェクト群から遡って、初期に描かれた、あの「孵化過程」から始まる一連の「アンビルド」の図像のいわば定本を、第二期十二都市に当てることにしました。
 これらの図の多くはよく知られています。印刷メディアや展覧会のパネルにも屡々引用され、あるものはその後磯崎さん自身の手が加えられていくつかのヴァージョンがあります。今回はアトリエに保管されている原図、あるいはもっとも原図に忠実な姿をとどめている資料を選び、磯崎さんにそのひとつひとつを再吟味していただきながら、版を起こし刷り上げることを目指しています。流布されている図像を、この画文集において元に戻し記録する。そういう意味での決定版になると思います。
 予約されている皆様の御理解を得られれば幸いです。
磯崎新さん、植田実さんモスクワ展 

2005年6月                         
磯崎新連刊画文集『百二十の見えない都市』              
企画編集 植田 実
  



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