はじめに
 池田20世紀美術館で開催の小野隆生展にあわせて、エッセイを綴ることになりました。
テーマは、画家が90年代初頭からはじめた「断片」の作品です。板を切り取ってできたさまざまな「断片」たちの背後に潜む秘密や魅力を、今回展示される作品を通して探ってみたいと思います。

小野隆生の「断片」をめぐって
その1. 紳士靴---もっとも身近な愛すべきモノ
ONO40
 クラシックなスタイルの靴は、「断片」の作品のなかでも比較的多く登場するモチーフで、小野作品の根底に流れるダンディーな趣きを象徴しているように思えます。画家本人に会ったことのある人ならばお解りでしょうが、彼はいつもピカピカに磨き上げられたいかにも上質の革靴を履いています。外出先ならばともかく、たとえそれがアトリエであっても、自宅のリビングであっても、ピシッと履いていらっしゃる。イタリアでの生活が長いからだろうかと考えてみたのですが、イタリアにだってスニーカーやラフな感じの靴はいくらでもあるわけで、そのせいとは言い切れません。どうやら彼は無類の靴好きのようです。同じ靴を二日続けて履かないとか、使ったら必ず磨いて型に入れておくといった靴にまつわる話を、例の淡々とした口調で延々と語ってくれたことがありました。お洒落を楽しむこと。そのためには、生活自体がラフになりすぎないよう自分を制する緊張感が伴うものだということを教わった気がしたのです。
(2008年6月23日 いけがみちかこ)

*掲載図版は小野隆生「断片98-XIV池田20世紀美術館カタログno.40

小野隆生靴左は池田20世紀美術館の展示スナップ

*画廊亭主敬白
小野隆生先生は、26日から始まる池田20世紀美術館での展覧会にあたり、美術館、所蔵家のご協力を得て1993〜2007年の15年間の仕事から約70点を自選されました。その中心は、90年代から始めた合板切抜きによる「断片」シリーズです。
小野作品を長年にわたり見続け、イタリアのアトリエも訪ねたことがある池上ちかこさんに「断片」シリーズについてのエッセイをお願いしました。ご愛読ください。

小野隆生展表面小野隆生展裏面



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