ギャラリーお出かけ日記

2006年10月〜12月
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ギャラリーお出かけ日記 12月27日

 磯崎新アトリエの忘年会にお呼ばれした。嬉しい反面、少しドキドキ。
 19時に磯崎アトリエのラウンジに綿貫さんたちと着くと、女性たちが慌しく準備していた。シェフもおり、スタッフも腕を揮って料理を披露するらしい。温野菜やパンに付けて食べるディップソース(かぼちゃ、アボガド、レバノン料理のものなど)や、鯛と牡蠣の料理、パイ、パエリアの米を麺に変えた通称“ポキポキパスタ?”などなど豪華絢爛。私も料理が上手だったら・・・。
 磯崎先生のご挨拶から始まり、料理の説明やおめでたいご報告などがあり、シャンパンやワインで乾杯した。日本人だけではなく、海外の人までこんなに大勢の所員さんが働いており、すごく大きなプロジェクトが動いているとは知らなかった。
ラウンジの壁面には、昔、綿貫さんがエディションしたMoCAの巨大な版画が飾ってある。
最初は隅っこに突っ立っていたけれど、色んな方が話しかけてくださって、なんだかんだで24時くらいまで話していた。みなさん仲良しで、学校みたいで、すごく楽しそうだったし私も楽しかった。
 来年もお付き合い宜しくお願いします。                                                (おだちれいこ)


1 2 磯崎アトリエ忘年会・平田


ギャラリーお出かけ日記 12月26日

 12月2日、細江英公先生と「机」で食事をした時のこと。3月に刊行予定の版画掌誌第6号の細江英公特集で、誰に執筆してもらったらいいかと相談すると、「清里フォトアートミュージアムの山地裕子さんがいいよ」と言われた。清里フォトアートミュージアム(K・MoPA)は細江先生が館長をしておられる。「行かなくちゃ・・・」と言っているうちに、日はどんどん過ぎ、とうとう年末になってしまった。

 26日午前10時半過ぎ、この日はドシャ降り。令子さんの運転する車に乗り、山梨県にある清里フォトアートミュージアムへと向う。勤務中だし、令子さんが運転してくれているので申し訳ないなぁ・・・と思いながら、睡魔と闘いあっさり負けた。

 3時間掛かってK・MoPAに到着。コンクリート打ちはなしの美術館の中は細長く、やたら天井が高く、とにかく広い。この空間にいると、私たちがとっても小さく見える。休館日にもかかわらず、細江先生からご紹介いただいた主任学芸員の山地裕子さんが迎えてくださった。ウィン・バロック展を見せてもらう。子供の写真はどれも可愛かった。綿貫さんはこのコレクションのすごさに感激していた。
寒そうにしている林が見える元レストランで、山地さんと以前細江先生のアトリエで働いていたという田村さんと打合せを行ない、原稿執筆を依頼した。
 暗くなる前に館内を案内してもらった。一直線になった長い天窓は、照明と同じ働きをしている。K・MoPAの施設は文句なしだった。写真美術館だけでなく、レストラン、ホテル、温泉、天体観測所があるそうだ。残念なことに、ホテルとレストラン部門は現在営業していない。天体望遠鏡は、観測者も絶賛するほどのものだそうだ。ホテルは洋室・和室、全部で約30部屋ある。林側の部屋と水(人工池のような)側部屋だ。どこもキレイなままだし洒落ているのに、使っていないなんてもったいない。
 玄関ホールに、昔、細江先生がン百万円で購入したという超大きいカメラが飾られてあった。田村さんにカメラの中を見せてもらった。じゃばら折りのものとレンズだけ、あとは空洞だった。「こんだけ?」と、何を期待していたのか自分でもわからないが、なんだか期待はずれの気持ちになった。
 帰りも、ワイパーをフル作動させながら東京に戻ってきた。
                     (おだちれいこ)


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ギャラリーお出かけ日記 12月8日、9日

静岡県掛川市へ一泊二日の出張。
 8日、新幹線で駅弁を食べながら掛川へ向う。新幹線の中から磯崎新先生設計の「静岡コンベンションアーツセンター(1998 グランシップ)」が見えるというので、しばらく外を眺めていると、軍艦のような巨大なセンターを発見!
12時半過ぎに掛川駅到着。駅のお土産屋さんに目を奪われながら綿貫さんの後を付いて行き、資生堂企業資料館へ向かう。
 HOUSE OF SHISEIDOで新春1月9日から開催される「椿会の春 60年の輝き」の資料パネル制作のため、今日と明日は資料館で調べものをするための出張。仕事を始める前に、まずは探検から。
 谷口吉生・高宮真介氏設計の資生堂アートハウスへ。MoMAと違って高さがグッと押さえられた建物。エントランスに伸びるアプローチを進み、中に入って7段くらいの階段をのぼると、ガラスの先に短く刈られた芝生が見える。左に進むと、巻貝のように時計回りにぐるっと回り込む絵画の展示空間がある。円になった中庭を囲んでいるガラスは、作品に気を遣ってのことだろうか、真上から差し込む日の光を遮るためのフィルムが貼られていて少し残念。片面ガラス張りの企画展スペースは、外からの光が足元に入り込む。今度は大きく時計回りに進むと、彫刻から工芸まで展示品が変わっていく。建物が弧を描いているので、先が見えない面白さがある。
 この気持ちのよい空間を楽しんだ後は、窓がひとつもない空調の利いた資料室で、暗くなるまで資料を探した。

 翌日、朝から資料探し。お昼は「のら」というご飯屋さんに連れて行ってもらった。メニューには「花子」とか「たまえ」とか書いてあるので何料理か分からぬまま掘り炬燵に座っていると、笑っちゃうくらい大きな大きな、きっと世界一大きな“お椀”が運ばれてきた。大きな蓋を開けると、色鮮やかな和食創作料理がのっている。新鮮でバランスも良く、ヘルシーで美味しい。デザートも6種類くらい付いていて、大満足したら少し眠くなった。このまま掛川散策したい気持ちになったが、資料館に連れ戻された。 (おだちれいこ)

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2007年1月9日(火)―3月11日(日)
「椿会の春 60年の輝き」会場=HOUSE OF SHISEIDO


ギャラリーお出かけ日記 11月19日

 今日は日曜日。世田谷美術館に、福原義春さんの講演「わがコレクション:駒井哲郎」をみんなで聴きに行く。
講演の前に同美術館で開催中の「ルソーの見た夢、ルソーに見る夢」展を廻る。
 ルソー展なのに、私はある二つの作品しか記憶にない。
一つは松本竣介の『立てる像』。オーバーオールを着た少年の前で足が止まり、立ち尽くした。今まで見ていたルソーの油彩を全て忘れさせるほどの力がある。もう一度見たいとさえ思う。なんだろうあの暗くて冷たくて悲しい闇は・・・。
もう一つは、世田谷美術館のレストランに向う長い廊下に設けられた、子供たちがワークショップで作ったというルソーの『熱帯風景、オレンジの森の猿たち』のトンネル。猿の鳴き声まで聞えて、ワクワクさせるトンネル。
展覧会は12月10日までです。是非、トンネルを通ってみてください。
                              (おだちれいこ)

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ギャラリーお出かけ日記 11月17日

 17時から、スパイラルホールで行なわれた京都服飾文化研究財団(KCI)主催の「リレー・トーク:いまラグジュアリーとは」に出席した。このイベントは、深井晃子さん(KCI京都服飾文化研究財団理事、チーフ・キュレーター)を司会に、KCI発行の研究誌「ドレスタディ」に協力した方々のうち4名の方に、現代のラグジュアリーについてリレー・トーク形式で話を伺うというもの。
 最初の方は、ロボット・クリエイターの高橋智隆さん。ロボットの技術開発から設計・デザイン・製作・発表までを一貫して行なうそうだ。2体のロボット『クロイノ』と『FT』を実際に動かしてくれるというので、皆さん前のめりになって見入る。細身体系をした女性ロボット『FT』は、モデルウォークで前進し、腰に手を当てポージング、そしてターンし戻って行く。セクシーロボットの女っぷりに、女性顔負けでした。小さい頃ロボコン好きでよく観ていたが、こんな可愛い姿で、こんな動きまでするようになったなんて・・・もっと遠い未来かと思っていましたが、文明の発達に感激です。
 続いて、コスチューム・アーティストのひびのこづえさん。現在、NHK教育テレビ「にほんごであそぼ」と「からだであそぼ」のあそび心のあるセット衣装を担当しているそうです。映画、オペラ、歌舞伎の衣装も手掛けており、コスチュームだけに留まらず、パナソニックと共同開発した四角い炊飯器(まだ商品化までには至っていないそうです)も制作したとか。四角い炊飯器って新鮮。
 そして、一万年前から狩猟をして大盤振る舞いすることがラグジュアリーと思われており、その感覚は今もあまり進歩がないと言う東京大学大学院教授の船曳建夫さんに続き、共立女子大学教授の鹿島茂さんは、ラグジュアリーとは決して高いお金を使うことではないと語る。女性に「どんな男性が嫌か」と尋ねると、大半の女性は「貧乏な男性はいいが、貧乏くさい男性は嫌い」と答えるらしい。女性のみなさん笑ってました。自分の目的に見合った投資や労力を掛けなければ、貧乏くさいと思われる結果になってしまうそうです。
 私にとってのラグジュアリーとは何か・・・そんなこと考えたことなかったけれど、自分への投資に、少しくらい贅沢をしてみようかなと思いました。
                               (おだちれいこ)

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ギャラリーお出かけ日記 11月11日

 今日は自発的にお出かけ、というか、三浦さんが仕事終わりに奥さんと一緒に“蜷川実花写真展「永遠の花1」”のオープニングレセプションに行くというので、付いて行きたい・・・とお願いすると快くオッケーしてくれた。インヴィテーションには、「ドレスコード 花」と書かれているという。素敵〜!
三浦さんは花柄のシャツを、奥さんは花柄のハンカチを用意して来ている。私は・・・と、身の周りの“花”を探すが、ありそうでない。花を買って行こうかどうしようか考えた結果、花の画像を紙に印刷し、切り取ったものをニット帽にセロテープで貼り付けた。
 会場はトーキョーワンダーサイト渋谷。
受付時は、ドレスコードをチェックされることはなく、“花”を用意した甲斐もなく・・・。
しかし、来廊者のほとんどがどこかに“花”を身につけている。花柄の洋服、花形のアクセサリー、生花を髪に挿している人・・・きっと昨晩からどんな風にファッションに“花”を入れるか考えたに違いない。みんなのどこかにあるはずの“花”を探して回るだけでも楽しかった。
 今まで私が出かけたオープニングレセプションとは雰囲気が全く違う。会場内は過半数を女性で占めており、普段ギャラリーには足を運ばなさそうな匂いのする人ばかり。蜷川さんに挨拶するための行列ができているという妙な光景も。
 展示は全て造花の写真。メキシコ、グアム、サイパンの墓地の土に挿された造花。造花を生花に見せようと撮ったものではない。「造花ですが何か?」と、造花たちが胸を張っている写真。造花には感情がない分、とても強さを感じる。青山墓地に見かける茶色く枯れた花を見るよりはずっと前向きになれる。枯れた花と偽りの花、ご先祖様はどっちの方がマシだと思ってくれるのだろうか。花も空も、喉が渇くような強い色。斬新で、とても素敵だ。
                                  (おだちれいこ)


写真展「永遠の花1」 11月11日[土]―26日[日] トーキョ―ワンダーサイト渋谷
写真展「永遠の花2」 11月17日[金]―12月9日[土] 小山登美夫ギャラリー

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ギャラリーお出かけ日記 11月2日

 夕方、三浦さんと本郷の東京大学総合研究博物館で始まった「東京大学コレクション―写真家上田義彦のマニエリスム博物誌」展のオープニング・レセプションにお出かけ。
 博物館の入り口から、さっそく標本が並んでいる。緑や黒のツヤツヤした昆虫が大中小、虫は苦手なので標本箱の前は素通りして展示室に向う。
展示されているは、上田義彦氏による学術標本コレクションの撮り下し。白骨化した動物や、剥製にされた動物たちは、さすがに“美しい”とまでは思わないが、理科室にあるようなそれらとは全く違い、センスのあるもの。写真家によって写真の中に閉じ込めることにより、骨は光をいっぱい吸収した白さを灯し、剥製の動物たちはいつまでも若いままだ。写真だと、至近距離で見ることができた。
 写真はツヤツヤしておらず、マットな質感だ。「EPSONが協賛だからインクジェットで出力したのかな?」と、三浦さんと首を傾げる。ときの忘れものでは写真の企画展が続いており、ゼラチン・シルバー・プリントに慣れているせいかツヤの無い写真がどうもしっくりこなかった。しかし、もしかすると、この写真の質感が白骨の古さや粉々に砕けてしまうという性質をうまく伝えているのかもしれないな。
象は骨の塊だった。あの長い鼻は途中まで骨がある・・・前足の指の骨らしきものが無数にひらひらしている。
 皆さんのスピーチが本当に素晴らしかった。
展示作業が終わり、スタッフが帰った静けさの中で作品を眺めて上田氏とどういう会話をしたかなど、私たちには知りえない話をしてくれた。そのスピーチが、もう一周してじっくり見たくさせる。展覧会に対する愛情や感謝の気持ちが私たちにも届いた。
ケータリングは、展覧会に合わせたものを用意したのでどうぞ召し上がれ、なんて言われると、皆も遠慮せずに摘める。見た目も味も独創的なオードブルは、どれも絶品で話題のひとつとなり、場も賑やかになる。さり気ないおもてなしや気取ってないところなどとても雰囲気が良かった。
 会場を出た時にはもう空は真っ暗になっていた。暗くなるのが早い季節になりましたね。 
                                  (おだちれいこ)

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*会期は2007年1月28日まで。


ギャラリーお出かけ日記 10月24日

 西麻布の「Super Deluxe」へ、ヴィルジニー・マルシャンさんの公開イベント『リーラの遊びのなかで(IN THE PLAY OF LEELA)』を見に行く。

 昨年10月、ときの忘れものでジョナス・メカスさんの個展を開いた
ヴィルジニーさんは、そのときジョナス・メカスさんと一緒に来日。東京を拠点に横浜・京都・倉敷で撮影を行なっており、今夜その作品が放映される。

 雨模様の中、20時前に会場に入り、冷たいコンクリートの床に座る。観客は70名くらいだろか・・・ヒマワリやガーベラで客席と舞台の境界線を示してある。壁には、4つの映像が映し出されている。
 20時開演、白のサテン生地のシャツにグレーのロンTの重ね着で、ずいぶん髪が伸びたヴィルジニーさんが客席に背を向けて座り、スタート。何かに取り付かれたような踊り。てっきり跳んだり跳ねたりするダンスかと思っていたが、指がピクピク動いたり、眼がくるっと白眼にむくというもの。ハットを被ったメカスさんと、もう一人のカメラマン、ゾルタン・オヴィーユさんは脇を閉めてハンディービデオカメラを構えている。この『リーラの遊びのなかで』の様子を撮り、一つの画面に二人が撮っているヴィルジニーさんの動きがリアルタイムで映し出される。VJにより両者撮影の映像が切り替えられる生放映だ。客席の後方ではDJとVJがMacを操作する。サングラスを掛けた詩人で音楽演奏家のトミー・ロジャーズさんが、即興で鐘の音のするものや机やアコギのボディを叩き、音を鳴らす。また、思いついたように、低い声で詩を読む。
 もう一つの映像は、昨年の来日の際に、大野家で撮影された大野一雄さんとヴィルジニーさんによるダンスのセッション。クランク式ベッドで上半身が少し起こされ、話すことも動くことも不可能そうに見受けられる大野さんの姿であるが、ヴィルジニーさんは大野さんの手を握り、踊る。大野さんの表情は何ひとつ変わらないが、ヴィルジニーさんの踊りに応えているように見える。ヴィルジニーさんのコメントには、「2人のダンサーはたちまち舞踏言語でコミュニケートしあい、その後、11月中に2度、それぞれ3時間以上も通しでダンスのセッションをおこなった。」と記されている。3時間以上も通しでダンス・・・恐ろしい。その姿をハンディービデオカメラで撮るメカスさんのことは考えているのだろうか・・・。芸術とはこんなものなのだろうか。
 もうすぐ22時だ。目の前の公演『リーラの遊びのなかで』は永遠に終わらないんじゃないかと思ってきた。つまらなかったわけではない。インスタレーションとして見ると、素晴らしいものだ。しかし“程度”というものがある。少し動きが止まるが音は止まず、音が止みそうになると動き始める。それが何度も続き、正直疲れた。
 21時半あたりから、客が荷物を抱えて逃げるように出る姿が目立つ。終電の時間が近いわけではないが、皆限界に達したのだろう。綿貫さんから“死にそうなので、どこかお店で待ちます”というメールが届いた。“私も死にそうです”と打つと、“脱出せよ”と返信。この公演の終り方はすごく気になるが、花束を受付に託して、三浦さんと奥さんと共に脱出。近くの飲食店で「あれは30分でいいよ。」など、文句を肴にお酒を飲んだ。
            (おだちれいこ)


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