第349回 「Tricolore 2022 ハ・ミョンウン・戸村茂樹・仁添まりな」
2022年12月9日[金]〜12月23日[金] 11:00-19:00
※日・月・祝日休廊



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ときの忘れものが選んだ作家三人のグループ展を開催します。

韓国の作家・ハ・ミョンウン(b.1980)は、誰もが知っている20世紀を代表するポップアートを再解釈・再構築し、自らのスタイルに昇華させた作品を紹介します。

盛岡在住の戸村茂樹(b.1951)は、風景描写の中に、現実には見えないが確実に存在しているものを、自然の時の移ろいや空気感に託して、一本一本丹念に線に刻み込んで描きます。

沖縄在住の仁添まりな(b.1993)は「琉球絵画の花鳥楽園」を一貫したテーマとして扱っています。伝統的な吉祥の画題を、現代の琉球絵画で描く楽園として制作していくことで、伝統と革新を試みています。

【ハ・ミョンウン ステートメント】
新しい絵画の表現を模索するということは、作家にとって常に宿命的な課題である。特に私の作品は脱絵画として、形態の脱皮を追求してきたため、それがより一層際立つ。創作活動を通じて私は同時代的な価値を探索していく過程で媒体の新しい形式的、談論的な代案を研究し、新しい媒体を試み、それの解釈に努め、他の領域の新しい媒体を作品に融合させ、純粋絵画の領域に融和するよう研究している。これまでの創作活動で重要視してきた造形形式は視覚的、空間的な立体である。一部、ポップアート的な鮮やかな線と色彩が存在するが、これは外形上の接近に過ぎず、概念と作業行為において顕著な違いがあることが分かる。絵画作品でありながらも平面を反復させることで平面の性格を持つ彫刻の反復が空間感を生成するが、その空間の中で、見る人の視線をあちこち通過させ内側の何かを探索させようとする、参加を誘導する創作活動をしている。

A Master piece of Painting series は同時代の文化的ICONとしての対象を部分的、あるいは全体的に取り入れた方式であり、結局これは過去と現在とを関係づける、すなわちオマージュの反復的現象の一つである。多様な文化の中で象徴化された作品のイメージを再解釈し、オリジナルの造形的言語で展開させる。このような創作過程により、過去と現在を、作品を通じて親密で直接的な関係を持つようにするとともに、過去に対する一部の回想と現在に対する反省の意味も盛り込む。
名画のイメージを用いて表現するオマージュ方式は、すでに欧州や米国など全世界の作家に数え切れないほど多く現れており、その領域の交差も単に絵画の領域だけで可能なものではない。オリジナルよりも再解釈された作品がさらに話題になった「シミュラークルsimulacrum」の芸術が、21世紀の美術市場には1日に数十種類の作品として登場している。このような現象は、新しい純粋創作物の登場の限界だと説明されることもあり、中途半端な新しいものよりは大衆に視覚的安定感を与えるオマージュ方式が作家にとっても消費者にとってもより容易だからかもしれない。
美術史は通常、過去の累積過程により創作されてきた。ある人は「前作が後作を招待する」と表現したりもした。私もそのような概念を適用して表現している。文化が当代の知識、信仰、芸術、法律、道徳、慣習を反映した表現の場だとするなら、私の創作活動は現在、周辺の最も熱い文化性向を一つの文化的ICONと認識し、これと親密で直接的な関係を結ぶ概念の表現だといえる。

描く行為についての考察
作品で表現しているBRUSHは絵を描く人の「道具」という意味と、行為(brushing)、そして成果物(brushstroke)の意味を含んでいる。
これは当然の本質について話そうとしているのかもしれない。数年間に亘り創作活動をしてきて、作家が無から有を作り出す過程、すなわち創作活動の中で最も重要なことが何かについて悩むようになり、溢れるイメージの波の中で作家としての中心を掴んで創作活動の過程を考えてみながら、それをイメージ化していく作業を試みた。
作家が絵を描く行為それ自体が或いは作品であり、その時間と多様なメディア、時間を融合して作り出す成果物が美術品ではないかと思う。その本質について考え続け、作業を続けたい。

【戸村茂樹 ステートメント】
長い冬が終わって、それまで固く凍りついていた雪が溶け始めるたびに、私は時がもたらす切れ目のない変化の中にいることを、強く印象づけられます。
北国の厳しい冬は必ず過ぎ去る自然であり、やがてあらゆる命を復活させることを知っているからこそ、私たちはここに住み続け、待つこともできます。
ひとの意識によってつくり出される変化は、しばしば修復できないほどの結果をもたらしますが、そこには何か、不自然なことがあると思えてなりません。
私は、できるだけ自然な時の経過に沿っていたい。
これまで画家の目を通して見てきた自然は、そんな生き方を教えてくれました。

【仁添まりな ステートメント】
琉球人は何を想い、何を伝え、何を願ったのか。自身は未来に向けた沖縄をテーマにした理想郷を描いているが、琉球当時の理想と現代の沖縄の理想は異なるだろう。しかし、きっと現代にも通ずる変わらない想いがあると思う。かつて多くの国と渡り合い、小国ながらも豊かな文化を培っていた琉球の誇りを取り戻したい。武器を持って争うのではなく、アートの力で世界中を渡っていけるように。目に見えないものを形にするのはとても難しいけれど、当時の琉球人の痕跡を辿ることで世界中の人々とアートを通して心で繋がるヒントが得られるのではないだろうか。良いと思ったものを素直に吸収し、試行錯誤し、独自のものへと昇華させていく。私が目指す蓬莱の島は、きっと何よりも生々しい光と影、生きとし生ける生命が棲む島である。そんなことを日々模索しながら、作品をとおして万国津梁の舟となる日を夢見て描いている。

ハ・ミョンウンHA Myoung-eun (b.1980)
韓国の若い世代を代表する女性アーティスト。20世紀のポップアートを用いて、さまざまな素材のオブジェへと再解釈して、独自の作品を作る。2011年ソンシン女子大学一般大学院西洋画科卒業。

戸村茂樹 TOMURA Shigeki(b.1951)
八戸市生まれ。岩手大学特設美術科卒業。1984年から版画制作に専念する。89、91年にウッジ国際小版画展(ポーランド)で名誉メダル賞を受賞など海外においても多数の受賞を重ねる。ロシア、イギリス、ドイツ、アメリカなど海外での作品発表も多い。

仁添まりな NIZOE Marina(b.1993)
沖縄県北谷町生まれ。2010 年、沖縄県立芸術大学美術工芸学部絵画専攻(日本画コース)に入学。日本画を学びながら、学部3 年次から琉球絵画の研究を始める。2021 年に同大学院博士課程を修了し、現在は沖縄県立芸術大学の非常勤講師として働きながら県内外で作家活動を行っている。


展示風景

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