ときの忘れもの ギャラリー 版画
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写真を買おう!! ときの忘れものフォトビューイング
御礼と報告5 原茂
2010年12月10日
第3回 写真を買おう!! ときの忘れものフォトビューイング」は、11月12日(金)、写真家でありまたプリンターでもある金子典子さんをゲストに、11名の参加者を得て開催されました。

 いつもはギャラリーの営業時間終了後の午後7時からのビューイングですが、今回は展示の合間ということで6時30分からの開始となりました。壁には9点の金子作品が展示され、ミニ「金子典子」展の様相でした。壁全面が金子さんの新作で埋まる日のことを夢想したことでした。


 私自身、作品とは何度も対面して来ながら、金子さんご自身とお目にかかるのは初めて。そのおっとりとした、どこか浮世離れした(失礼!)物腰に、こんな方だったのかと驚きもし、また納得もしたことでした。


 三浦さんが用意してくださった資料をに手に取っていただき、一問一答の形でビューイングを始めさせていただきました。最初に簡単なプロフィールをお伺いしたのですが、金子さんがラボテイクに入社したときは事務職だったと聞いて一同喫驚。ごく普通のコンパクトカメラ(機種はもう覚えておられないそうです)で写真を撮りながら、漠然と写真と関わりたいと思いながら入社したラボテイクで、最初は窓口業務をされていたとのこと。フィルムやプリントの受け渡しをしている間にどうしてももっと直接に写真に関わりたいとの思いが募り、プリンターとして働き始められたとのことでした。プロフィールに「1993年プロラボ ラボテイク入社、1995年〜プリント担当になる」とあったのはそういう事情だったのかと納得したことでした。

 安友志乃師匠(文章を書く上での私の師匠なので師匠と呼ばせて頂きます)が主催しておられたワークショップに参加したのをきっかけに、「ホカリファインアート」での展示が決まり、1999年の「未来への涙」、2000年の「Light and Shadow」、2002年の「Anthorogy」と個展を重ねられることになります。2002年末のホカリ閉廊後は、同じくホカリの展示作家でもあった村松真理子さんが開かれた北青山のギャラリー「DAZZLE」http://gallery-dazzle.com/index.htmlで2003年に「フォトグラムとコラージュ」、築地仁、鈴木秀ヲさんとの3人展「掌の宇宙」、2004年に「グッドバイ」、2006年に「光と水と凪の心」をそれぞれ開催してこられました。その後は、プリンターとしてのお仕事が忙しくなって、しばらくご自身の作品を撮る余裕がなかったとのことでしたが、最近になっていよいよ写真家としての活動を再開されたとのことでした。

 今回は、「未来への涙」から「光と水と凪の心」まで、カラー作品の「グッドバイ」を除いて、これまでのお仕事の全体を(それぞれ数点ずつではありますが)ご紹介いただくことができました。特に、今年から撮り始められた「伊勢」のシリーズを初めて拝見できたのがサプライズでした。モノクロームのファインプリントの醍醐味をたっぷり味あわせていただいたひとときでした。

 金子典子さんのフィトビューイングでは、「未来への涙」(1999)、「Light and Shadow」(2000)、「Anthorogy」(2002)、「フォトグラムとコラージュ」(2003)、「掌の宇宙」(2003)、「光と水と凪の心」(2006)、「伊勢神宮」(2010〜)から数点づつ、金子さんご自身によって選んでいただいた作品を、コメントを加えていただきながら拝見しました。

 タイトルはいずれも展覧会のタイトルで、作品そのものにはタイトルはつけられていないとのこと。また、展覧会のタイトルも、特定の手法や対象を意味しているのではなく、全体として一つのシリーズとして見て欲しいとのことでした。

 代表作ともいうべき「鳥」は、広島に友人と旅行された際のもので、こちらが勝手に「古代の遺跡」かと思い定めていた場所が、実は「原爆ドーム」であることをうかがってびっくり。鳥もそのときに偶然(!)そこに飛んできて、ほんの短い間だけ止まっていたかと思うとすぐに飛び去っていきましたということで、やはり写真家になるような人は「何か持っている」のだなあと納得したことでした。「原爆ドーム」という誰でもよく知っている、映像で何度も見ているはずの場所を、「古代遺跡」にしてしまうその力に、飯沢耕太郎さんの「写真家とはカメラを抱えたシャーマンである」(『写真的思考』、河出書房新社、2009年、11頁)との言葉を思い起こしました。

 「清里フォトミュージアム」に「噴水」と共に収蔵されている「ジャングルジム」(金子さんの作品では実はこれが一番の売れ筋で、エディション切れも間近?だそうです)も、場所は目黒の保育園とのことで、日常生活のただ中に、この世ならざる世界への通路を開いてしまうその力を改めて見せつけられた思いでした。それは「未来への涙」(1999)から「光と水と凪の心」(2006)まで一貫していて、スナップショットをプリントワークによって「個別」と「瞬間」から「普遍」と「永遠」へと昇華させてしまう「金子調」とでもいうべきその作品に、「写真」の力、「写真」の魅力を堪能したひとときでした。

 それとはまた別な形で写真の魅力を示していただいたのが「フォトグラムとコラージュ」(2003)、と「掌の宇宙」(2003)からの作品でした。作品については取り扱いギャラリーである「DAZZLE」http://gallery-dazzle.com/index.html のHPでも見ていただけるかと思いますが、暗室の中で作家のイマジネーションから生み出される小宇宙の広大無辺さを思わせられました。私としては、ネガキャリアに水滴を挟んで露光することによって生み出される「ペネトグラム」(金子さんの造語だそうです)が、巫女であると共に「錬金術師」(錬銀術師?)でもある金子さんの魅力に溢れていて、購入意欲を掻き立てられたことでした。性質上一点もの(!)のフォトグラムとしては申しわけない位の価格ですので、とにかくこれは早い者勝ちです。

 最後に、プリンターとしてのお仕事(その目の眩むほどの中身については「ラボテイク」のHPの金子さんのページhttp://www.labtake.jp/printer_kaneko.html をご覧ください)に忙殺されてやむなく休止中だった写真家としての活動を、最近ようやく再開されたことをお聞きし、「伊勢神宮」と題されたシリーズの一端を拝見できたのはまことに眼福でした。これもまた、写っているのはまぎれもない「伊勢神宮」でありながら、まったく伊勢神宮には見えない、というよりもこの世のものには見えない(!)という「金子調」全開の作品で、「伊勢神宮」だからということではありませんが、ますます「写真家=シャーマン」説に頷くことしきりでした。


フォトグラムにコラージュ

作品は、しばらくは「ときの忘れもの」に置いていただけることのことでしたので、ぜひ直接手に取って頂き、金子マジックに酔っていただきたいと思うことしきりです
(はらしげる)



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