ときの忘れもの ギャラリー 版画
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写真を買おう!! ときの忘れものフォトビューイング
第4回フォトビューイング 口上(つづきのつづきのつづき)  原茂
2011年12月26日
 私が風間さんの作品を最初に拝見したのも、あの安友志乃師匠の『撮る人へ』 (窓社)でした。掲載されていた「北炭真谷地炭鉱選炭施設」を一見、なんて綺麗な写真なんだろうと言葉を失ったのを覚えています。写っているものは見るか らに質実剛健機能一点張のゴツいコンクリート打ちっ放しの砦というかトーチカというか、なんかそういうものなのに、背景に流れる白い雲の下、実に静かで穏 やかで、まるで古代の神殿か何かのような神聖さを感じさせる実に不思議な写真でした。

 風間健介という名前が脳裏に焼き付いた頃、これもまた伝説の写真雑誌「TIDE」の第3号に、夕張のシリーズから「星啼の街」が掲載されているのを発 見。夜景を長時間露光し星が流れる下に、うち捨てられた廃墟があたかもカテドラルのように荘厳にたたずむ一枚に「参って」しまいました。そして、そこに記 されていた「プリント販売いたします」との一文にふらふらと「注文」をしてしまったのが風間さんとのお付き合いの始まりでした。

 当時(今もですが)、文字通り「直販」「手売り」でプリントを販売されていた風間さんは本当にビンボー(スミマセン)で、ある時は、軍艦島を撮りに行きたいがお金がないのでプリント買ってくださいとのメールをいただいて、先物買いで軍艦島のプリントを購入させていただだいたこともありました。

 写真家は写真を売って生活するもの、写真家にとって写真は商品ではなく作品、という、ある意味あたりまえでありながら現実的にはあまりに困難な生き方を 貫こうとされていた風間さんの作品は、重厚でありながら重苦しさを感じさせない、軽やかさに満たされていながら軽薄さとは無縁な、「ずっしりと軽い」、 しっとりとした密度のある写真でした。

 いわゆるドキュメンタリー写真でも、まして風景写真でもない、そのものズバリの「写真」、真の意味でのシリアスフォトグラフィーである風間さんの写真 は、写真に「わかりやすさ」を求め、「なんとか」写真、「かんとか」写真と肩書きがつかないと落ち着かない今の日本の写真界で評価されるには時間がかかる だろうなと思いながら、しかし時間はかかってもかならず評価されるに違いないと確信していました。

 実際、風間さんのHPの「略歴」を拝見すると、その作品は頻繁にというわけではなくても、コンスタントにカメラ雑誌にも掲載されてきましたし、(近作の 「夏夜」が「アサヒカメラ」2009年10月号に、「フォトピープル」が「日本カメラ」2010年6月号に掲載されていますから、ご覧になった方も多いと 思います)、2004年には、新宿ペンタックスフォーラムで「夕張」のシリーズから「風を映した街」の大規模な展示が行われました。

 この時、夕張から出てこられた風間さんと初めてお目にかかることができました。第一印象は「え、この人がこの写真を」という実に失礼なものでしたが、話 を聞くうちに、「ああ、この人だからこそこの写真なのだ」という思いが湧いてきたことです。ご一緒に新宿西口の居酒屋でホッケの塩焼きを口にしながら、ア ジェに初めてあったアボットもきっとこんな気持ちだったのではないかと想像したことを思い起こします。

 そして、2005年に写真集『夕張』を発表され、2006年に「日本写真協会新人賞」、「写真の会賞」、「地方出版文化功労賞奨励賞」を立て続けに受賞 されます。特に、一部では(そして私もそう思っている人間の一人ですが)「木村伊兵衛賞を取るより難しい」と言われる「写真の会賞」を、かの傑作、瀬戸正 人さんの『picnic』を抑えて受賞されたことは、風間さんのお仕事にようやく写真界の評価が追いついてきたと胸のすくような思いをしたことです。

 その後、風間さんは東京に居を移され、新しいシリーズを展開されています。今回は、代表作『夕張』を中心にご紹介することになるかと思いますが、これか らますます風間さんのお仕事全体http://kazama2.sakura.ne.jp/sakuhin2.top.html  http://kazama2.sakura.ne.jp/sakuhin3.html の評価が進んでいくと思っていますし、またそうでなければと考え ています。
 この機会に、風間さんの作品をぜひ手に取って頂き、コレクションに加えていただければと思っております。現代のアジェ(!)を飢えさせてはならないと思うことしきりです。
(はら しげる)

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第4回写真を買おう!! ときの忘れものフォトビューイングはゲストに風間健介さんを迎えて、12月17日に開催されました。
今回は、11名の方にご参加いただき、風間さんのご希望で着席でのビューイングとなりました。ホストの原さんから風間さんの作品の魅力についてお話いただき、続いて風間さんからまず「夕張」シリーズの作品を見せていただきました。


夕張に住んでの撮影は、技術的なこと以外にもいろいろとご苦労があったようです。出稼ぎで生活費を稼いで夕張の家に戻るといつも家の中が荒されていて、む なしい思いをしなければならなかったことや、熊に注意しながらの撮影、凍てつく夜の暗闇の中での撮影など、様々なエピソードを独特の語り口で、ユーモアを 交えながらお話しいただきました。

左)風間健介「作品1(仮)」
右)風間健介「作品2(仮)」

風間健介「作品3(仮)」

他にも、夜の石神井公園を撮った「夜想曲」シリーズや井の頭公園の「風を映した街」シリーズ、東京の風景を裏焼きした「東京裏がえし」シリーズなど多彩な作品も解説とともに見せていただきました。
(三浦次郎)




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