ときの忘れもの ギャラリー 版画
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写真を買おう!! ときの忘れものフォトビューイング
第7回フォトビューイング 口上 原茂
2011年8月10日
 「第7回 写真を買おう!! ときの忘れものフォトビューイング」には、写真家の中藤毅彦さんをお招きいたします。
 自称「小」コレクターの私などがご紹介するまでもなく、中藤毅彦さんと言えば、ストリートフォトグラフィーの旗手にしてモノクロームプリントの名手。アルフレッド・スティーグリッツから始まり、ウォーカー・エバンス、ロバート・フランク、リー・フリードランダーと続くストレートフォトグラフィーの王道を歩む、世界中どこに出しても恥ずかしくない現代日本を代表する写真家のお一人で、当然のことながら私も大ファンです。

 それならなぜ今までフォトビューイングに呼ばなかったのかと言われれば、それは私が中藤さんのプリントを一枚も持っていない(泣)ためで、これについては申し開きも立ちません。ビューイングの7回目にして、「原さんがお持ちのコレクションだけでなく、これからコレクションする予定(!)の写真家さんでもいいですよ」とのお許しが出て、中藤さんに依頼のメールをお送りすることができたような次第です(汗)。

 もっともこれには「ときの忘れもの」さんの責任も大きくて(責任転嫁)、私が中藤さんのプリントに最接近した2006年9月の中藤毅彦写真展「Street Rumbler Shanghai/Russia」Gallery Niepce + LOTUS ROOT GALLERY が、「ときの忘れもの」が写真に進出するきっかけとなった伝説の「Eros&Khaos, X氏写真コレクション」展とかち合ってしまい、苦悶の果てに中藤毅彦「上海俯瞰夜景」ではなく、イリナ・イオネスコ「EVA No.2」を購入してしまったのが、私が今まで中藤毅彦作品の「魂のコレクター」に甘んじてきた理由の一つだからである。「エヴァ」を購入したことはまったく後悔していないが(立派!)、あのとき借金してでもロール紙の「上海俯瞰夜景」を手に入れなかったのは一世一代の不覚である(号泣)。

 とはいってもこれには中藤さんの責任も大きくて(責任転嫁×2)、買おうか買うまいかハムレットの如く輾転反側していた私に優しすぎる言葉をかけてくださったのが在廊しておられたご本人で、その言葉に一人で納得しほっとしてしまいその足で外苑前のとあるギャラリーまでふらふらと来てしまったハンバート・ハンバート氏は「9歳から14歳までの範囲で、その何倍もの年上の魅せられた旅人に対してのみ、人間ではなくニンフの本性を現すような乙女」にころりと魂を奪われて魂ばかりか預金通帳の残高まで奪われてしまったのだった(放心)。
 
 ちなみに当時、「PhotoPre」(現在は「JapanPHOTO」http://the-za.somard.co.jp/j_photo/index.html)にアップさせて頂いていた「コレクターのギャラリーめぐり 原茂日記」では、この展示について次のようなことを書いておりました。現在はHP上で読めなくなってしまっているので、その「あらすじ」をご紹介して皆々様には前車の轍を踏まぬよう御注進させて頂く次第です。ちゃんちゃん。

(あらすじ)
 9月6日(水)、四谷のロータスルートとニエプスへ。「Gallery Niepce + LOTUS ROOT GALLERY 共同企画中藤毅彦写真展「Street Rumbler Shanghai/Russia」。まずはHPを見て「参って」しまった「上海空撮」(?)からということでロータスルート。

 壁を覆い尽くす「上海俯瞰夜景」の前で固る。ロール紙のピン張りなのだが、まるでそこに窓が開いたよう。自分が超高層ビルの窓から下界を覗いているような、というより、上海上空に「どこでもドア」が開いた感じ。しばらく写真の前でぼおっとしてしまう。銀塩のつぶつぶがまるで黒い羅紗の上に撒かれたダイヤモンド。といってもそんなもの実際には見たこともないし見る機会があるとあるとも思えないのだがもしそんな時があったらそのときには「まるで中藤さんのプリントのよう」と口走ってしまうような気がする。

 欲しいと思うがサイズがサイズだけに二の足を踏む。価格的には「大 ロール紙 RCペーパー ゼラチンシルバープリント(限定各1点 プリントのみ)」が10万円以下(当時)。「美術館は何してる!」と叫びたいが蔵も倉庫も持っていない当方としては指を銜えているしかない。ちなみに小は「小 小全紙 バライタ ゼラチンシルバープリント(プリント+額、マット付き)」で5万円しない(もちろん当時)。こちらも大バーゲン。ただあの巨大ロールプリントを見てしまうと小全紙ではちょっと悔しい。ピン張りの方が絶対にカッコいいのだからどこかであの「上海空撮」(?)をポスターにしてくれないだろうか。きっと売れると思うんだけど、などと勝手なことを考えながら次はニエプス。

 ニエプスでは椅子に座る少年の横長のロールプリントに目を奪われる。コンクリートの床とトタン(?)の壁と柔らかに差し込む光とが譬えようもなく美しい。頬ずりしたらビロードとシルクと洗いざらしのコットンの肌触りが楽しめるのではないかと思うほどである。その微妙で繊細なプリントに唸るほかない。

 これもサイズと価格は変わりなし。在廊されていた中藤さんに聞くと、ロールプリントの方は現物一枚きりだけど、小全紙のものはいつでも焼くし他のサイズでと言われれば要望には応じますとのこと。それではどうしても今日中に決めなくてもいいということだなと一人で納得しほっとする。あーあ。そんなだから一枚も作品を持っていない「中藤ファン」などという情けない人間ができあがってしまうのだ。反省。

 以上あらすじでした。
今回は初期作品から近作まで、小全紙のプリントを40〜50点ほどお持ちいただき、希望に応じて四つ切りのプリントを3万5千円という「驚きのプライス」で焼いていただけることになりました。(もちろん小全紙サイズのものもお求めいただけます。)まだプリントをお持ちでない「中藤ファン」の皆さま、この機会にぜひ「魂のコレクター」から「リアル・コレクター」へと一歩を踏み出して下さいますように。

「まず自分が買いなさい!」「はい、仰せの通りです。」 どっとはらい。
(はら しげる)

中藤毅彦 Takehiko NAKAFUJI
1970年東京生まれ。写真家。
早稲田大学第一文学部中退 東京ビジュアルアーツ写真学科卒業。
2000年より5年間東京ビジュアルアーツ非常勤講師。
モノクロームの都市スナップショットを中心に作品を発表し続けている。
国内の他、近年は東欧、ロシア、キューバなど旧社会主義諸国を中心に世界各地を取材。
作家活動とともに、四谷三丁目にてギャラリー・ニエプスを運営。



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