廃物を利用して機械のように動く彫刻を制作し、キネティック・アート(動く美術作品)の代表的作家であるジャン・ティンゲリーは、1971年にニキ・ド・サンファルと結婚した。
夫妻での共同制作も多い。
ニキ&ティンゲリー
ファウンテン・ライフセイバー』(ドイツ、デュイスブルク)。
廃物を組み立てて作ったティンゲリーの黒い立体作品の上に、ニキの鮮やかな作品が立つ


今回の「ニキ・ド・サンファル版画と松本路子写真展 The Witches Tea Party~ニキ・ド・サンファルとの宴」にも松本路子さんが撮影した夫妻の肖像や、夫妻の共同制作になる噴水を背景にしたニキの写真が出品されています。
ニキとティンゲリー
松本路子「Niki de Saint Phall & Jean Tinguely, Paris, 1991
1991年(2003年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:31.8×21.4cm
シートサイズ:35.4×27.8cm
Ed.50  サインあり

ニキ噴水
松本路子「Niki de Saint Phalle, Paris, 1985
1985年(2003年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:21.7×32.0cm
シートサイズ:27.8×35.4cm
Ed.50  サインあり


亭主がパリに初めて行ったのは1988年頃だったと思いますが、ポンピドゥ・センターではティンゲリーの巨大な作品が展示されていました。
当時、破産後の借金返済を生き甲斐にフランス人のボスの会社につとめ、パリとの間を往復していました。フランス語どころか英語もしゃべれない亭主がまあよくもフランス人相手に仕事をできたものです。
ちょうどエッフェル塔が100周年を迎えるのにあわせて、群馬県立近代美術館、東京ステーション・ギャラリーなどを巡回した『エッフェル塔 100年のメッセージ【建築・ファッション・絵画】』展の企画、図録編集に追われていました。ポンピドゥ・センターはじめフランスの美術館と出品交渉を重ね、エッフェル塔にはフリーパスをもらい何度も通いました。

この展覧会のために、ジャン・ティンゲリー、エドゥアルド・アロヨ、ヴァレーリオ・アダミ、フェルナンデス・アルマン、セザールの5人の現代作家に「エッフェル塔へのオマージュ」作品をリトグラフで制作してもらったのも、今となっては懐かしい思い出です。
ティンゲリー
ジャン・ティンゲリー「エッフェル塔へのオマージュ」
1989年 リトグラフ
56×76cm Ed.150
サインあり

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ジャン・ティンゲリー Jean Tinguely(1925年~1991年) スイスの画家、彫刻家。
廃物を利用して機械のように動く彫刻を制作、キネティック・アートの代表的な作家である。ダダイスムの影響を濃く受け、第二次世界大戦後のフランスで誕生した美術運動、ヌーヴォー・レアリスムのメンバーでもあった。
1950年代半ば以降はパリで活動し、イヴ・クラインやニキ・ド・サンファルらの美術家たちと知り合う。1960年にはヌーヴォー・レアリスムの結成に関わり、ニューヨーク近代美術館で開催された展覧会では不器用に動いて音を立て最後は自ら炎上して崩壊する巨大な機械『ニューヨーク賛歌』を出展した。1971年にニキ・ド・サンファルと結婚。1977年にはバーゼルに『噴水の劇場』(ティンゲリーの噴水)を制作。1982年にはポンピドゥー・センターに隣接するストラヴィンスキー広場に、『自動人形の噴水』をニキ・ド・サンファルと共同制作した。
1984年高輪美術館(後のセゾン現代美術館)から『地獄の首都 No.1』を制作依頼され、来日している。没後1996年にはバーゼルにマリオ・ボッタの設計で「ティンゲリー美術館」が開館した。

◆ときの忘れものは、2010年5月11日[火]―5月21日[土]まで「ニキ・ド・サンファル版画と松本路子写真展 The Witches Tea Party~ニキ・ド・サンファルとの宴」を開催しています。※会期中無休
松本路子写真展DM
ニキ・ド・サンファル生誕80周年を記念して、松本路子撮影のニキ・ド・サンファルのポートレート写真約20点と、松本路子氏コレクションのニキ・ド・サンファルの版画6点をご紹介します。