尾形一郎のエッセイ第2回
「興味・視点」  尾形一郎

 メキシコにしても、日本にしてもそうなのだが、世界の辺境の地に西欧文明がやってくると、その辺境にもともとあった文化と西欧近代の衝突が起こる。私たちは、その衝突が起きたときに出来た奇妙な建築やプロダクトに興味をもっている。そういう奇妙なものや形に、何かかけがえのないものが宿されているような気がしているからだ。
 世界の辺境には近代社会が排除してしまった価値が残されている、みたいな部分はレヴィストロースに通じるかもしれないが、むしろ自分たち自身が、日本というユーラシア大陸の端の住民であることが重要だと思っている。日本はメキシコより西洋化が遅かったから、近代文明にとってたいへんな辺境だともいえる。東京も昔からの土着的な感性と、西洋から輸入した近代的な思考がぶつかってできた不可思議なもので溢れかえっている。だから日本から世界の他の地域の辺境を眺めて、これはどういうことなのだろうか、どういう価値があるのだろうか、と考えたいのだ。
 中心へ向かわないこと、辺境であり続けることを善しとしているので、結論みたいなことは永久に出せないし、世界に中心とか正統とかが無いことを示したいとも言える。西欧人とか中国人のような中心にいる思考の人たちや、中心に興味の向いているタイプの日本人とは視点が逆さまになっていることもあるだろう。しかし、そういうことを発見することも創作の楽しみなのだ。(おがたいちろう)


ogata_22_oaxaca_4-c「オアハカ4-C」
1995年(1997年プリント)
クリスタルプリント
94.0×74.0cm
Ed.1
サインあり

ogata_23_tonanzintla_3-c「トナンツィントラ3-C」
1994年(1997年プリント)
クリスタルプリント
94.0×74.0cm
Ed.1
サインあり

ogata_24_tepotzotlan_5-c「テポツォトラン5-C」
1994年(1997年プリント)
クリスタルプリント
94.0×74.0cm
Ed.1
サインあり

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*尾形一郎のエッセイ第1回はコチラ

◆ときの忘れものは、2010年6月1日[火]―6月12日[土]まで「ウルトラバロック 尾形一郎 尾形優 写真展」を開催しています。※会期中無休
ウルトラバロック案内状600
キリスト教とメキシコの土着の文化が混じりあって生まれた「ウルトラバロック」、その小宇宙を捉えた写真作品をご紹介します。
尾形一郎さん・尾形優さん在廊日時は以下の予定です。
6月 4日(金) 16:00~18:00
5日(土) 15:00~19:00
11日(金) 16:00~18:00

●本日6月5日(土)17時からのギャラリートークは定員に達したため、予約は締め切りました。
本日6月5日18時より、作家と金子隆一さん(東京都写真美術館専門調査員)を囲みパーティを開催します。どなたでも参加できますが、18時までは上記の予約者以外は入場できません。18時過ぎに、ご来場ください。