昨年のちょうど今頃、福井で駒井哲郎展が開催され、亭主も呼ばれてギャラリー・トークをしたのですが、主催した福井のNPO法人・E&Cギャラリーから立派な年間報告書が送られてきました。

福井で現代美術の発信基地としてオープンした「E&Cギャラリー」は、福井大学の先生や学生たちが中心になって設立されたノンプロフィットギャラリーです。
つまり商業画廊ではなく非営利のギャラリーです。
人、モノ、金ばかりか情報さえも東京に一極集中する中で、地方都市の画廊はどこも青息吐息です。
そういう中で、売買に関与しないとはいえ、新たな美術発信の場が設けられたことは、美術文化の片隅で棲息する私たちにとっても嬉しいニュースでした。

E&Cギャラリー年間報告書2009 表紙
『E&Cギャラリー年間報告書2009』表紙


E&Cギャラリー年間報告書2009 P6-P7
同報告書6-7ページ
「コレクション」という名の自己表現
/2009年5月23日~6月21日

E&Cギャラリー年間報告書2009 P8-P9
同報告書8-9ページ
駒井哲郎版画展
/2009年6月27日~7月20日

巻頭の主催者あいさつをそのまま引用させていただきます。

ごあいさつ
 E&Cギャラリーがその活動を具体的な形で始めて、凡そ1年が経ちました。
その間、多くの方々のご協力とご支援をいただきなんとか運営を続けることができました。改めて御礼を申し上げます。この小冊子は、この1年において、ギャラリーが企画した9つの展覧会と3つの個展の内容を中心に、ギャラリーが運営を委託されている『えきまえKOOCAN』における活動を含めて、皆様にその概要を知っていただく為に制作されたものです。全ての展覧会を通して感じることは、私たちの予想を超えて充実した内容を維持できたという思いです。最初に引き受けていただいた宇佐美さんをはじめとして、物故作家を含めた錚々たる作家の展覧会を続けていくことができたことは、ギャラリーにとって、とても大きな意味を持つものでありました。また、回数は少なかったのですが、若い作家の新鮮で瑞々しい表現には大きな可能性が秘められていて、次の展開への期待を抱かせるものでありました。
 ただ、一見順調に推移している様に思われるギャラリーの運営ですが、実際は、そう容易なものではないということもお話しておかねばなりません。特に運営の為の資金については、大きな不安があり、ギャラリーの体力をどのように強化していくかは急務の課題だと思います。またもう1点は、ギャラリーの企画の中にどれだけ若い作家を招くことができるかということです。これは、単純に私たちの努力でどうなると言うものでもないのですが、若い、力のある作家を見出し応援することが、私たちに求められていると考えています。そしてできるだけここに、福井につながっている作家を見出すことができればと願ってもいます。それがEdge(周縁)とCenter(中心)という意味を探っていくうえで大きなヒントを私たちに与えてくれることを想像もしています。
 私たちの活動は、蟻の歩みのようにたゆみなく続けていくことがとても大事なことですし、そうでなければ充分な成果を期待することができないものです。このことは言葉で言うほど容易なことではありませんが、しかし、その努力を怠ってなにが私たちに残されるでしょうか。私たちの持っている『文化』というものが"想像する力"というものによって、私たちに繋がっているということは、とりもなおさず"想像する力"の枯渇が社会全体に大きな影響を与えることは明らかなことだと思います。『文化』を大事に守り、育んでいくということは、それを自身の実感に重ね合わせるということを意味します。理解が体験として心に刻み込まれることが必要になるでしょう。また、私たちはこのとても大事なことを、将来、世界を支えるべき子供たちに正しく伝える責任を負っていることを忘れてはいけません。子供たちに"見ること"、"作ること"の真の喜びを感じてほしいし、それが私たちの世界に常にある続けていくということを知っていてほしいと思います。
 ギャラリーは、これからも展覧会の運営を中心として、多彩な活動を進めていく予定です。小さな事件が小さな波を起こし、それが繋がって少しずつ大きな輪を作り上げていくことが、私たちの願いです。
 皆様に、これからも格段のご協力とご支援をお願いするところでもあります。

 E&Cギャラリー代表 宮崎光二   理事一同

 私たちのギャラリーの運営には、福井大学美術科の学生の参加が欠かせない要素です。ポスターやチラシの制作、搬入、搬出の手伝いなど彼ら、彼女らの力なくして運営は成り立ちません。また、ここは学生にとっては貴重な学びの場でもあります。ここで得ることができた知識や経験が、社会のなかで大きな意味を持つことを願っています。彼ら、彼女らの不断の努力にこの場を借りてお礼を言いたいと思います。
         E&Cギャラリー代表 宮崎光二
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売買に関与しないことで、ある意味、意欲的な選択が可能となります。
現代美術の作家たちの発表の場として定着し、そこでコレクターたちの交流がはかられ、学生たちが美術の現場に携わることにより、より豊かな美術文化がはぐくまれることを心より祈る次第です。

ときの忘れものの駒井哲郎コレクションからいくつかご紹介します。
駒井哲郎「みづゑ」
駒井哲郎「みづゑの為のオリジナル版画
1967年 リトグラフ 
39.1×25.3cm 限定85部 
※都美回顧展図録レゾネNo.397(東京都美術館1980年)

komai_mati
駒井哲郎「
1973年 銅版 23.5×21.0cm
Ed.250 サインあり
※レゾネNo.298(美術出版社)

駒井哲郎「顔」
駒井哲郎「
1973年 銅版 23.5×21.0cm
限定250部 サインあり 
※レゾネNo.294(美術出版社)

駒井哲郎岩礁
駒井哲郎「岩礁」1972 銅版
23.5×21.0cm  Ed.35
サインあり
*レゾネNo.289(美術出版社)

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◆福井のお蕎麦を青山で!
亭主がいつもお世話になっているコレクター地帯、最近では恐竜の町として有名な福井県勝山市の市長さんたちが上京し、かつやまフェア南青山ふくい291で開催されています(今日まで)。
おろしそばをふるまうべくソバ打ちの名人たちも上京したそうですから、ぜひ冷たいおろし蕎麦を堪能してください。