ときの忘れもののホームページへのアクセスがおかげさまでつい先日、累計40万件を超えました。
近年の私どもと顧客との出会いの多くがネットがきっかけです。特に海外のお客様とのやり取りはネット抜きには考えられません。
昨日もホームページを見た現代美術の有名なコレクターがニューヨークから来廊されました。
「1930年代~1940年代の日本の写真作品を集めたい」とのことで、私どもが資料としてお見せした美術館のカタログなどは既にほとんどを所持されていて、その猛勉強振りには驚かされました。英語でのやり取りの中で「シンコーシャシン(新興写真)」などと言われるとこちらが唖然としてしまいます。
私どもに来たのは、もちろん瑛九が目当てで、残っていたフォトデッサンを買ってゆかれました。一昔前までは「瑛九は売るほどあります」と言っていたのですから(つまり、それほど売れなかった)、ありがたいことです。
いよいよ瑛九も国際的な舞台で評価されるに至ったことを喜んでいいのか、それとも弱小資本の私たちが市場での評価に追い付けなくなるのを心配すべきなのか、複雑な思いです。

開催中の「マン・レイと宮脇愛子展」も段々会期が残り少なくなりました。
マン・レイとジュリエットと宮脇愛子
1962年 パリのアンドレ・シャエール画廊での宮脇愛子個展会場で、
マン・レイ、ジュリエット夫人と宮脇愛子。

宮脇愛子は1959年から、マン・レイの亡くなる1976年まで家族同様の親交を続けた。

 昨年(一九六二年)の六月、パリに仕事場ができたとはいうものの、友だちもすくなく、心細い毎日を送っていた私のところへ、往年のダダイスト、ハンス・リヒターが訪ねてきた。
 ニューヨークから飛行機でとんできた七十歳をこえるリヒターは、「歳だから疲れがひどい」を幾度もくりかえしていたが、それでも大変元気そうな様子で、「パリに来たら、マン・レイとまず食事をするのが、ながいあいだの習慣になっている。一緒に来ないかい?とさそってくれて。それが私にとって、マン・レイのアトリエへの再訪となった。
 リヒターに連れられて、サン・シュルピス寺院の裏手、小さなフェルー通りに沿ってゆくと、ダーク・グリーンの大きなガレージが現われた。この大きなガレージが、マン・レイのアトリエである。ベルを押すと、すぐ私たちの前に、例のお気に入りの赤い上っぱりのような仕事着をきたマン・レイが現われた。ちんまりとして、かわいらしい感じ。背の高いリヒターの肩ぐらいしかない。「君は、いい歳をして、まったく、よく歩きまわるね」と、リヒターを上目で見ながら、さっそく皮肉めいた口調ではじめる。

 二、三日でスイスのアナコーナーに帰らなければばらないリヒターは、「マン・レイは、昔から好ききらいのはげしい人間だが、どうもお前を気に入ったらしいから、せいぜい世話になりなさい。ジュリエットもとてもいい人だから、困ることがあったらんでも頼みなさい」と言った。
 そのころから、ちょうど、ヴァカンスの季節となり、パリの人びとが姿を消していったこともあって、マン・レイ夫妻はわりあい頻繁に、私を食事にさそってくれた。
 ストーブの上で、ごとごとと煮えている土鍋のスープ、レモンとカラシであえた青いサラダ、鶏の丸焼き、私が好きだと知って、きまってつくってくれた「フォンテンブロー・ア・ラ・クレーム」のデザート。あの古ぼけたアトリエに入るたびに、私はいつもほっとした。

宮脇愛子『はじめもなく終りもない―ある彫刻家の軌跡』(1991年、岩波書店)より抜粋

磯崎新撮影/マン・レイと宮脇愛子
1972年 マン・レイと宮脇愛子(磯崎新撮影)

1960年代の宮脇愛子の油彩作品をご紹介しましょう。
AikoMIYAWAKI_oil宮脇愛子「Work
1962年 ミクストメディア
作品サイズ:24.0×33.5cm
額装サイズ:38.0×47.3cm
サインあり

AikoMIYAWAKI_ECHO_ORANGE宮脇愛子「ECHO ORANGE
1964年 ミクストメディア
88.5×121.0cm サインあり

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◆ときの忘れものは、9月28日(火)~10月16日(土)「マン・レイと宮脇愛子展」を開催しています(会期中無休)。
案内状 編集版_600
10月16日(土)17時からの巌谷國士さんのギャラリー・トークは既に定員に達しました。
トーク終了後の18時からクロージングパーティを開催します。こちらは予約無しで参加できますので、18時過ぎにご来場ください

マン・レイの折本仕立ての「回転扉(Pain Peint)」にインスパイアーされ、宮脇愛子がマン・レイへのオマージュとして制作した新作エディション、シルクスクリーン入り小冊子『Hommage a Man Ray マン・レイへのオマージュ』(DVD付き、限定25部)の予約申し込みを受け付けています。

マン・レイへのオマージュパンフ
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