私の駒井哲郎コレクション・その3~作品との出会い M.S.
 <S氏コレクション 駒井哲郎PART II展>より


昨年と今年、コレクション展をさせて頂いているSです。
2.《鏡》《審判》
又、二十数年前のことで、申し訳ないが、少し時間があったのである画廊に今、どんな作品があるのか問いあわせてみた。送られてきた在庫表の中にこの2点があった。
以前から、欲しかった作品ではあるが、ともにエディションの少ない(エディション14)ものなので、普通に画廊を回ってもなかなか、めぐり会えない作品である。
この出会いはうれしかったが、実際のコンディションをみるまでは手離しで喜んでしまう訳には行かず、喜びをかみしめながら週末を待った覚えがある。
駒井哲郎「審判」駒井哲郎「鏡」
左)「審判」
右)「鏡」

週末、行ってみると、2点を壁に立てかけて見せてくれた。担当者のTさんは、このあと画廊主催の大きな展覧会が予定されており、そのために集めたもので、今、これを売ってしまうとなかなかこの辺の作品はすぐには補充が効かないのだと言って少し困った顔をしていた(そういうことで集めたものなのでコンディションは、最高であった)。
そのあと、画廊の人たちとお茶を飲みながら雑談をしていたが、たまたま入ってきた他のお客様が、立てかけてある作品をのぞき込んで長い時間、じっとして動かない。急に欲しいなどと言われても困るので早々に買うと決めて、やっと落ちついておいしいお茶が飲めた。この年はこの2点だけで資金を使いはたし、他に何も買えなかったと記憶している。
《審判》は今回PARTIIのDMとして使わせて頂いたのですが、駒井さんの一般的に知られた作品でなく、このDMでPARTIIをみに来てくれる人が増えたら良いなという気持ちがありました。《審判》と言う難しいタイトルがついていますが、個人的にはタイトルを忘れて、この作品のおもしろさはスピードのある軽やかな線と重い黒の固まりが絶妙のバランスで画面の中に収まっているところだと思っています。
《鏡》については、都の現代美術館や、埼玉県立美術館のもの、駒井家のものなど今まで6点程みる機会がありましたが、それぞれちがった(特に鏡の中央の水滴部分など)味わいがあって、とてもおもしろく感じています。
特に今回、銀座・資生堂ギャラリーで見せて頂いた福原コレクションの《鏡》は他の穏やかなものに比べ、少し、荒々しいような新鮮な驚きのある《鏡》でした。
これから、もし銀座の資生堂ギャラリーに行かれるのであれば、ぜひ、《鏡》を見てきて頂きたい。私はこの《鏡》が大好きです。
このように、コレクション当時を少し思い出して見ましたが、何点かの作品には、出会いは一回しかなく、少ない機会を生かせたものだけが残りました。少しはコレクターとして、運を生かせたのかも知れません。(おわり)

*画廊亭主敬白
Sさんの3回にわたる述懐はいかがでしたでしょうか。
画商から見て「優れたコレクター」の条件には決断力や眼力、執着力(継続。飽きずに集め続ける執念)などがあります。もちろん資金力も大事ですが、どうも世の大コレクターという方たちに会っていると、お金の問題ではないのですね。
いくらお金を積んでも優れたコレクションにはならない。
オーラを発するコレクションとは、結局コレクターの思いの強さ、集める(編集する)ことで作家さえ気づかなかった未知の美を掘り起こす「第二の創造」なのだと、S氏コレクション、そして銀座の福原コレクションを見て思う次第です。
それにしても欠かせないのが「運」です。お二人とも実に強運の持ち主であります。

◆ときの忘れものは、10月26日(火)~11月6日(土)「S氏コレクション 駒井哲郎PART II展」を開催しています(会期中無休)。
駒井哲郎展DM
昨秋の第一回展では、同じ版から刷られた同じ作品を敢えて複数コレクションするという「コレクションの異端」ぶりで観る人を驚かせたS氏コレクションの二回目は「生命あるものへ」の視点を凝縮した30点を展観します。

画廊では駒井哲郎関連書籍、カタログも販売しています。
『没後15年 銅版画の詩人 駒井哲郎回顧展』図録
『福原コレクション 駒井哲郎作品展/未だ果てぬ夢のかたち-』図録
『ときの忘れものアーカイブス vol.4/S氏コレクション駒井哲郎 PART I 展』

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