「エドワード・スタイケン写真展」出品写真のご紹介(1)

15日から開催中の「エドワード・スタイケン写真展」に出品している作品をご紹介してまいります。
今回の出品作品は、「JUXTAPOSITIONS(1986)」「The Blue Sky(1987)」という各12点からなる二つのポートフォリオに収められているもので、Joanna Steichen(スタイケン夫人)、ジョージ・タイス(写真家・プリンター)、ウィリアム・カッツ(グラフィック・デザイナー)の三人によってイメージが選ばれ、ジョージ・タイスがプリントしました。「プリントしました」と簡単に書きましたが、限定100部のほかにプルーフが30部、計130部で24作品ですから単純計算で3,120枚のプリントを仕上げなければならなかったわけです。たぶん、この何倍かの数をプリントし、その中から良いものを選んだはずです。また、作品によって使用している印画紙を変えています。その基準は不明ですが、そのネガにもっとも合うであろう印画紙を使用したのだと思います。印画紙が次々と製造中止になり、銀の含有量も少なくなった現在ではもう不可能な企画といえるでしょう。そして、このとき使用したネガからは再びプリントを作成しないと奥付に書いてあります。

前置きが長くなりましたが、では、画廊のドアを開けて、まず左側の壁をご覧下さい。
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蓮池と画面の上に数人の足元が写っています。パッと見たところ日本かな?と思わせますが、ニューヨーク州のマウント・キスコという町です。スタイケンは、友人からの依頼で、毎年家族を蓮池の縁に同じ順番に立たせて撮影したそうですが、その1枚なのでしょうか。そう考えると足元にも人格を感じてきて楽しくなります。
5エドワード・スタイケンエドワード・スタイケン Edward STEICHEN
"Lotus Pond, Mount Kisco, New York"
1915年(1986年プリント/Ilford Galerie)
ゼラチンシルバープリント
26.6×33.5cm Ed.100
裏にプリンターと遺族のサインあり

あるお客様がおっしゃるには「スタイケンの雲はすごいんだよ!なかなかこうは撮れないよ!」とのことです。そういわれると、確かに雲のディテールや立体感が秀でているように思えます。ぜひ実際のプリントでご確認いただければと思います。この作品は撮影年が不明です。
3エドワード・スタイケンエドワード・スタイケン Edward STEICHEN
"Clouds"
(1987年プリント/Kodak Ektalure)
ゼラチンシルバープリント
23.7×34.2cm Ed.100
裏にプリンターと遺族のサインあり

植物を愛したスタイケンは、多くの植物写真を遺しました。以下の2点は、かたやフレームからはみ出すほどの巨木を正面からダイナミックに捉えており、もう一方は、樺の樹皮をクローアップで一見抽象画のようにと、違いはありますが、どちらもその細密な画面には引き込まれます。
4エドワード・スタイケンエドワード・スタイケン Edward STEICHEN
"Florida Jungle"
1936年(1986年プリント/Ilford Galerie/Selenium Toned)
ゼラチンシルバープリント
26.4×33.8cm Ed.100
裏にプリンターと遺族のサインあり

11エドワード・スタイケンエドワード・スタイケン Edward STEICHEN
"Walden Pond, Concord, Massachusetts"
c.1934年(1987年プリント/Ilford Galerie)
ゼラチンシルバープリント
34.1×23.2cm Ed.100
裏にプリンターと遺族のサインあり

第二次世界大戦後は、写真家としてよりはキュレーターとしての仕事のほうが顕著になったスタイケンですが、この作品は、今回の出品作品のなかではもっとも新しい1954年に撮影されたものです。ちょうど「ファミリー・オブ・マン」を企画中のときで、一緒に仕事をしていた写真家Wayne Millerがその作業をしているスタイケンを撮っていますが、この作品のDana Millerは、Wayne Millerの子供であったかもしれません。
6エドワード・スタイケンエドワード・スタイケン Edward STEICHEN
"Dana Miller in the Pond, Umpawag, Connecticut"
1954年(1986年プリント/Unicolor Exhibition)
ゼラチンシルバープリント
24.1×19.1cm Ed.100
裏にプリンターと遺族のサインあり

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次回は、右側の壁の作品をご紹介します。

◆本日掲載予定だった井桁裕子さんの連載エッセイ「私の人形制作」はお忙しい井桁さんの都合で少し遅れます。しばらくお待ちください。

◆ときの忘れものは、2010年12月15日(水)~12月25日(土)まで「エドワード・スタイケン写真展」を開催しています(会期中無休)。本日も開廊しています。
スタイケン案内状600
エドワード・スタイケンは、20世紀のアメリカの写真にもっとも大きな影響を与えた写真家であるだけでなく、キュレーターとして数々の写真展を企画し、写真界の発展に多大な貢献をしました。
1986年と1987年に写真家のジョージ・タイスによってオリジナルネガからプリントされた、1920年代か30年代の作品を中心に、ヌード、ファッション、風景、ポートレートなど17点を選び展示いたします。
ぜひこの機会に古典ともいうべきスタイケンの写真作品をコレクションに加えてください。
出品リスト及び価格はホームページに掲載しています。

◆今月のWEB展は、12月16日から2011年1月15日まで「根岸文子展」を開催しています。
根岸さんは昨2009年はVOCA展に選ばれ、今春2010年6月にはマドリッドで個展を開催するなど内外で活躍しています。

◆ときの忘れものは通常は日曜・月曜・祝日は休廊ですが、企画展の開催中は会期中無休です。
年内は12月28日(火)まで営業し、12月29日~2011年1月4日まで冬季休廊いたします。
新年は2011年1月5日(水)より開廊します。