菅野圭介と山口薫/It's a real★本物を買う!
数年前から運営難に陥っていた芦屋市立美術博物館の学芸員4人全員が大幅な人件費削減などに反発し、3月末で退職することが報じられました。
同館は「具体」のコレクションで知られ、ハナヤ勘兵衛の遺族などから寄託されている作品も少なくなく、寄贈・寄託している地域住民らが不安を募らせ、作品の引き揚げの検討を始めたとも伝えられます。
亭主は80~90年代に将来の確たる展望もなく、箱物志向で続々とつくられた地方の美術館の行く末に不安を感じていましたが、まさに美術館受難の時代が到来したようです。
優れた美術作品はそれを愛好した所蔵者の私有物であると同時に、人類共通の遺産でもあります。所有者の代替わりに伴い、それが次の世代にうまく引き継がれるかどうかは、その国の文化レベルにかかわってきます。
それぞれの美術作品が時代の淘汰に耐え、安住の地を見つけられることを切に祈らずにはおられません。
私たち画商のつとめは、優れた美術作品の次の世代への手渡しのお手伝いをすることだと思います。
さて、3月5日(土)、6日(日)に開催する「It's a real★本物を買う!」の出品作品から順次ご紹介していきましょう。
先ず最初にご紹介するのは、昭和の洋画界を代表する二人の画家、菅野圭介と山口薫です。
二人は同世代でともにヨーロッパに学び、独自の画境を拓き、日本の近代美術史に大きな足跡を残しました。

1 菅野圭介 《秋》 c.1949 油彩 49.7x60.2cm Signed
昨2010年4月24日(土)~6月13日(日)に横須賀美術館で「菅野圭介展 色彩は夢を見よ」をご覧になった方も多いでしょう。この「秋」は同回顧展に出品展示されました(同展図録に一ページ大で掲載)。文字通り代表作の一つと言っていいでしょう。
戦前の独立展に彗星の如くあらわれ、独特の色彩感覚で人々を魅了した洋画家・菅野圭介(1909-1963)は、京都帝大を中退し、1935年ヨーロッパに渡り、フランス南東部・グルノーブル在住の画家フランドランに学びました。帰国後の1937年、独立美術協会展に出品した《フランダース古城》(本展出品)によって、一躍脚光を浴びます。単純化された構図と、限られた色彩がふしぎな調和をみせる菅野の作品は、洋画界のあらたな才能として、児島善三郎らの激賞を受けたのです。つづく戦争の時代にも個性的な画風を失わず、1943年には会員に推されました。
戦後、互いの才能を認め合った三岸節子との「別居結婚」を宣言し、世間を驚かせます。ふたりの関係はわずか5年で破局を迎えますが、このころの作品は色彩も線も、より大胆に、躍動的になり、第2の充実期となりました。のちに葉山にアトリエを構え、新たな展開を模索していたさなか、1963年病のため53歳の若さで世を去ります。
菅野の作品は、単純化された構図と、数色に限定された色彩の調和に秀でた個性を持つばかりでなく、東洋的、浪漫的といわれる深い詩情を感じさせます(同館HPより引用)。
一方、秀でた色彩感覚と造形的感性によって「詩魂の画家」と評された山口薫は、数は少ないものの日本の版画史に残る名作を残しています。

30 山口薫 《昼の月と馬》 リトグラフ 37.5x53.5cm Ed.100 Signed
群馬県の榛名山麓の村、箕輪(現箕郷町)に、11人兄弟の末子として生まれた山口薫(1907~1968)は、自然豊かな風土に絵の好きな少年として育ち、亭主の母校でもある高崎中学(現・高崎高校)に学び、1930年東京美術学校を卒業し、3年間フランスに留学します。
帰国後は滞仏時代の友人である村井正誠、矢橋六郎らと新時代洋画展、自由美術家協会展、モダンアート協会展を次々と結成し、そこを拠点に日本におけるモダンアート運動の中心的な存在として作品を発表し続けました。抽象と具象の微妙に溶け合ったモダンな造形の中に叙情と幻想を湛えた心象風景を描いた作品は、サンパウロ・ビエンナーレ展やヴェネツィア・ビエンナーレ展などにも出品され、国内ばかりではなく、海外でも高い評価を獲得します。
1958年、第2回グッゲンハイム賞国内賞、1959年毎日美術賞、1960年芸術選奨文部大臣賞などを次々と受賞。1952年からは東京芸術大学で教鞭をとり、多くの作家を育てますが、1968年死去。
上掲の「昼の月と馬」は、山口薫の得意としたモチーフのひとつで、少ない色数ながら簡潔な造形と抒情に溢れた秀作リトグラフといえるでしょう。
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
◆ときの忘れものでは、3月5日(土)、6日(日)の二日間「It's a real★本物を買う!」を開催し、写真、油彩、水彩、オブジェ、版画など50余点を特別価格にて頒布いたします。

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ぜひこの機会に名品をコレクションしてください。
数年前から運営難に陥っていた芦屋市立美術博物館の学芸員4人全員が大幅な人件費削減などに反発し、3月末で退職することが報じられました。
同館は「具体」のコレクションで知られ、ハナヤ勘兵衛の遺族などから寄託されている作品も少なくなく、寄贈・寄託している地域住民らが不安を募らせ、作品の引き揚げの検討を始めたとも伝えられます。
亭主は80~90年代に将来の確たる展望もなく、箱物志向で続々とつくられた地方の美術館の行く末に不安を感じていましたが、まさに美術館受難の時代が到来したようです。
優れた美術作品はそれを愛好した所蔵者の私有物であると同時に、人類共通の遺産でもあります。所有者の代替わりに伴い、それが次の世代にうまく引き継がれるかどうかは、その国の文化レベルにかかわってきます。
それぞれの美術作品が時代の淘汰に耐え、安住の地を見つけられることを切に祈らずにはおられません。
私たち画商のつとめは、優れた美術作品の次の世代への手渡しのお手伝いをすることだと思います。
さて、3月5日(土)、6日(日)に開催する「It's a real★本物を買う!」の出品作品から順次ご紹介していきましょう。
先ず最初にご紹介するのは、昭和の洋画界を代表する二人の画家、菅野圭介と山口薫です。
二人は同世代でともにヨーロッパに学び、独自の画境を拓き、日本の近代美術史に大きな足跡を残しました。

1 菅野圭介 《秋》 c.1949 油彩 49.7x60.2cm Signed
昨2010年4月24日(土)~6月13日(日)に横須賀美術館で「菅野圭介展 色彩は夢を見よ」をご覧になった方も多いでしょう。この「秋」は同回顧展に出品展示されました(同展図録に一ページ大で掲載)。文字通り代表作の一つと言っていいでしょう。
戦前の独立展に彗星の如くあらわれ、独特の色彩感覚で人々を魅了した洋画家・菅野圭介(1909-1963)は、京都帝大を中退し、1935年ヨーロッパに渡り、フランス南東部・グルノーブル在住の画家フランドランに学びました。帰国後の1937年、独立美術協会展に出品した《フランダース古城》(本展出品)によって、一躍脚光を浴びます。単純化された構図と、限られた色彩がふしぎな調和をみせる菅野の作品は、洋画界のあらたな才能として、児島善三郎らの激賞を受けたのです。つづく戦争の時代にも個性的な画風を失わず、1943年には会員に推されました。
戦後、互いの才能を認め合った三岸節子との「別居結婚」を宣言し、世間を驚かせます。ふたりの関係はわずか5年で破局を迎えますが、このころの作品は色彩も線も、より大胆に、躍動的になり、第2の充実期となりました。のちに葉山にアトリエを構え、新たな展開を模索していたさなか、1963年病のため53歳の若さで世を去ります。
菅野の作品は、単純化された構図と、数色に限定された色彩の調和に秀でた個性を持つばかりでなく、東洋的、浪漫的といわれる深い詩情を感じさせます(同館HPより引用)。
一方、秀でた色彩感覚と造形的感性によって「詩魂の画家」と評された山口薫は、数は少ないものの日本の版画史に残る名作を残しています。

30 山口薫 《昼の月と馬》 リトグラフ 37.5x53.5cm Ed.100 Signed
群馬県の榛名山麓の村、箕輪(現箕郷町)に、11人兄弟の末子として生まれた山口薫(1907~1968)は、自然豊かな風土に絵の好きな少年として育ち、亭主の母校でもある高崎中学(現・高崎高校)に学び、1930年東京美術学校を卒業し、3年間フランスに留学します。
帰国後は滞仏時代の友人である村井正誠、矢橋六郎らと新時代洋画展、自由美術家協会展、モダンアート協会展を次々と結成し、そこを拠点に日本におけるモダンアート運動の中心的な存在として作品を発表し続けました。抽象と具象の微妙に溶け合ったモダンな造形の中に叙情と幻想を湛えた心象風景を描いた作品は、サンパウロ・ビエンナーレ展やヴェネツィア・ビエンナーレ展などにも出品され、国内ばかりではなく、海外でも高い評価を獲得します。
1958年、第2回グッゲンハイム賞国内賞、1959年毎日美術賞、1960年芸術選奨文部大臣賞などを次々と受賞。1952年からは東京芸術大学で教鞭をとり、多くの作家を育てますが、1968年死去。
上掲の「昼の月と馬」は、山口薫の得意としたモチーフのひとつで、少ない色数ながら簡潔な造形と抒情に溢れた秀作リトグラフといえるでしょう。
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