本日も12時より開廊、「X氏写真コレクション展II」を開催しています。
昨日は日曜とあって新潟や京都など遠方からのお客様もあり、皆さん議論しつつ熱心に見ていかれるので浅学菲才の亭主にとっては中身の濃い一日でした。

京都からいらしたKさんから小林美香さんのエッセイ<写真のバックストーリー>は私のような素人でもわかりやすく書かれていて愛読しています」とお褒めの言葉をいただきました。
まだ2回目を掲載したばかりですが、アメリカで多くの写真に触れ、古今東西の文献を渉猟した小林さんのエッセイはきっと多くの愛読者を獲得するでしょう。次回第3回は明日25日に掲載しますので、お楽しみに。

先日、編集仕事でお世話になっているM先生が来廊されたときのこと、手書きを通してきた方が遂に陥落、パソコンを使いだしたということを書きましたが、ときの忘れもののお客様とのやり取りもほとんどがメールになってきました。
手紙や電話でのやりとりもなくはないのですが、画像やデータも簡単に遅れるようになったので量的には圧倒的にメールです。
皆さんへの企画のご案内はいままメールとDM葉書の二本建てでお送りしてきましたが、上述の事情に加え、撮影費、デザイン料、印刷費、切手代等々で家賃並みの金額を毎月捻出するのは厳しくなってきました。
開廊以来、北澤敏彦さん(ディスハウス)の素晴らしいデザインによる案内状を作ってきましたが、次回「小野隆生1976~2010展」を最後に、案内状の製作をやめることにしました。
とは言っても、作家の新作個展など紙の案内状が必要な場合はこれまで通り作成しますが、部数は半減させます。
どうか悪しからずご了承ください。
ご来廊の折には、ぜひ芳名簿にメールアドレスをご記帳ください。

開催中の展覧会出品作品の中からジョージ・タイスの「アーミッシュの二人の少年」をご紹介します。
ジョージ・タイス
ジョージ・タイス
「TWO AMISH BOYS, LANCASTER, PA, 1962」
1962年撮影(1988年プリント)
ゼラチンシルバープリント
24.0x19.0cm  サインあり

この写真を見てハリソン・フォード主演の映画『刑事ジョン・ブック/目撃者』を連想する人も多いのではないでしょうか。映画ではハリソン・フォード演じる刑事が、偶然殺人事件を目撃したアーミッシュの子供を守るため、アーミッシュの家庭に身を寄せるうちにその母親と恋に落ちるという物語でした。
AMISH アーミッシュとは、アメリカのペンシルベニア州・中西部やカナダ・オンタリオ州などに居住するドイツ系移民のキリスト教と共同体に忠実である厳格な規則の宗教集団で、移民当時の生活様式を保持し、文明の利器などを使わずに農耕や牧畜によって自給自足生活をしていることで知られています。
新しい家を建てるときには親戚・隣近所が集まって取り組む姿は、映画でも重要なシーンでしたね。自動車は使わず馬車、商用電源は使用せず(もちろん原発も)風車、水車による自家発電程度、服装もいたって質素、タイスの写真に写る少年たちの帽子もアーミッシュ独特の服装です。

ジョージ・タイスは巨匠エドワード・スタイケンのポートフォリオのプリンターをつとめたことでも知られるように、自身も大判カメラを用いてアメリカの都市や風景を撮影し、モノクロームの精緻なプリント作品を制作し、高く評価されています。
今回、X氏のコレクションにタイスの写真があるので嬉しくなり、慌てて探したのですが、日本ではあまり写真集が出ていないようですね。知り合いの写真画廊さんにも伺ったのですが、日本語での資料や実物作品は見つかりませんでした。
画廊には、『Hometowns: An American Pilgrimage : James Dean's Fairmount, Indiana, Ronald Reagan's Dixon, Illinois, Mark Twain's Hannibal, Missouri』(New York Graphic Society)を置いてありますので、どうぞご覧になってください。
ジェームス・ディーン、ロナルド・レーガン、マーク・トゥエインの故郷の町(ホームタウン)を撮った写真集です。建国以来僅か200年余りの歴史しか持たないアメリカの町並はどこも似たようにも見えますが、しかしそれぞれの固有の思い出、記憶のこめられた懐かしい故郷なのでしょう。
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ジョージ・A・タイス George A. TICE
写真家。1938年ニュージャージー州に生まれる。
14歳からカメラクラブに参加し写真を撮り始める。1959年、当時ニューヨーク近代美術館の写真部門でディレクターを務めていたエドワード・スタイケンは、タイスの才能をいち早く認め、タイスによる航空母艦ワスプ爆発の写真を美術館のコレクションに選ぶ。タイス20歳のときである。
国内外で数多くの展覧会を開催。1972年に個展を開いた後、作品はニューヨーク近代美術館・シカゴ美術館・メトロポリタン美術館などに収蔵されている。活動初期から、芸術形態として写真集の可能性を認識し、多くの写真集を出版している。
◆ときの忘れものは、2011年10月21日(金)~10月29日(土)「X氏写真コレクション展II」を開催しています(会期中無休)。
x氏写真コレクション展DM600
リチャード・アヴェドン、エドゥアール・ブーバ、五味彬、細江英公、イリナ・イオネスコ、ユーサフ・カーシュ、ウーゴ・ムラス、ハーブ・リッツ、ジョック・スタージス、ジョージ・タイス、上田義彦、ジョエル=ピーター・ウィトキン、エドワード・ウェストン、吉川富三、フランセス・マーレイのゼラチン・シルバー・プリント作品を出品します。