X氏写真コレクション展II」から、昨日はウィトキンのぎょっとする作品をご紹介しましたが、Xさんの凄いところはそれとは対極的な叙情的作品もコレクションしているところです。
いったいこの人の眼はどうなっているんでしょう。
エドゥアール・ブーバの作品をご紹介します。
パリのセーヌ河畔で抱きあうカップル、静かなさざなみの表情、パリのなんと言うことはない風景を切り取った抒情豊かなブーバの写真からは、「カメラの詩人」と評された通り、しっとりとした情感が漂ってきます。
boubat_01_paris
エドゥアール・ブーバ
「パリ風景」
c.1960年
ゼラチンシルバープリント
36.0x24.4cm
*ツァイトフォトサロン(石原悦郎)のシール添付

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1995年に新宿の小田急美術館で「エドゥアール・ブーバ展」が開催されていますが、亭主は見ていません、こんなこと(写真画廊)になるのだったら見ておけばよかったと、ちょっと悔しい。
今回、画廊のテーブルにブーバの第一作品集『海の抒情』を置いてありますが、それがフランスではなく日本(平凡社)で出版されたことはさすが写真集大国ニッポンの面目躍如としていますね。
ブーバ「海の抒情」エドゥアール・ブーバ
『Edouard Boubat:
ODE MARITIME 海の抒情 』
テキスト:ベルナール・ジョルジュ
翻訳:林達夫
序文:伊奈信男
装幀:原弘  
平凡社 1957年
48ページ 247×182mm

平凡社世界写真家シリーズの1冊として刊行されたブーバのこの写真集は、海辺の町、ヴァカンスを楽しむ家族、漁師たち・・・ポルトガルの海岸でルポルタージュを目的として撮影されたカラーとモノクロの写真44点が収録されています。
ブーバ「ポルトガル」1956頃
ブーバの写真を見て思い出したことがあります。
亭主がフランスと日本の間をしばしば往来していた1987~1989年頃、パリで何人かの写真家に紹介されました。
その一人がXavier Lambours(グザビエ・ランブール、あのザビエル神父と同じ名である)さんで、彼が日本の著名人を撮影するために来日したときは磯崎新・宮脇愛子ご夫妻などを紹介して差し上げた。
その時に撮影した写真は『JAPON Gaijin story 』として1996年に出版されています。表紙は笠智衆さんです。そのときのお手伝いの御礼で亭主もわざわざパリのチュルリー公園まで出かけてポートレートを撮ってもらいました。
それはともかく、パリ滞在時に何度かパリ市立美術館に呼ばれてたくさんの写真を見せてもらい、またそれらを日本の美術館で展覧会してくれないかと依頼されました。まさか将来写真を扱うなんて夢にも思っていなかったので、それらの話もあまり熱心に聞かなかった(反省!)。
よく覚えていないのですが、その美術館はシャイヨー宮の近くにあったような気がする、というのはその美術館はその後なくなってしまったから。そんなに大きな美術館ではなかったが、そこで館長さんだが学芸員さんだかに、アンリ・カルティエ=ブレッソン、 ロベール・ドアノー、そしてエドゥアール・ブーバなどパリの情景を撮った写真を見せてもらった記憶があります。
ブーバは名声の割りになぜか日本ではほとんど知られておらず、作品の実物に触れられる機会も少ないようです。
この機会にぜひコレクションに加えてください。

ブーバをはじめ今回の出品作品はゼラチン・シルバー・プリント(銀塩写真)です。
200年にも満たない写真の歴史ですが、人類が創ってきた最も新しい表現分野なのにもかかわらず既に「銀塩写真」は廃れ行く運命にあります。カメラ、フィルム、印画紙、すべてがやがて無くなっていくでしょう。
アンセル・アダムスの提唱したゾーンシステムを実践している中島秀雄先生のエッセイをまとめましたのでお読みください。

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エドゥアール・ブーバ Edouard BOUBAT
写真家。1923年パリのモンマルトルで生まれた生粋の巴里っ子。ドアノーと同じ工芸学校エコール・エスティエンヌでグラビア製版の技術を学んだ。
1946年から写真を撮り始め、後にthe agency Raphoで働く。パリで生まれ、パリで暮らし、戦後のパリを撮り続けた。1951年ラ・ヒューヌ画廊での4人展にブラッサイ、ドアノー、イジスとともに選ばれ、雑誌『レアルテ』のアート・ディレクターの目にとまる。同誌の仕事で世界各国を飛び回り、ルポルタージュの写真家としても名声を確立する。
「彼は写真をつくりあげるのではない。彼は世界のなかをめぐり歩き、観察し、人びとと共に生き、これはよいと感じた時に、シャッターを切る。」(ベルナール・ジョルジュ)
アンリ・カルティエ=ブレッソン、 ロベール・ドアノーらとともに20世紀を代表する フランスの写真家の一人として数えられている。 1999年、歿。

◆ときの忘れものは、2011年10月21日(金)~10月29日(土)「X氏写真コレクション展II」を開催しています(会期中無休)。
x氏写真コレクション展DM600
リチャード・アヴェドン、エドゥアール・ブーバ、五味彬、細江英公、イリナ・イオネスコ、ユーサフ・カーシュ、ウーゴ・ムラス、ハーブ・リッツ、ジョック・スタージス、ジョージ・タイス、上田義彦、ジョエル=ピーター・ウィトキン、エドワード・ウェストン、吉川富三、フランセス・マーレイのゼラチン・シルバー・プリント作品を出品します。