写真家で東京芸大先端芸術表現科の教授をつとめる佐藤時啓さんのサイトを見ていたら、Tokyo Geidai Post Photography Research Projectというのをやっておられるのを知った。
その趣意書が今の写真がおかれている状況を反映していて、とても興味深く読みました。
以下、引用です。
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 このたび芸大写真センターおよび、佐藤時啓研究室におきまして、『Tokyo Geidai Post Photography Research Project』を、開始することになりました。
 写真は、現代における最も重要なメディウムの一つとして定着しています。しかしながら、この10有余年ほどのデジタル化の嵐の中で、議論のいとまも無いままに、いつの間にかその環境が大きく変ってしまいました。新たなメディアである写真や映像表現は、身体と表現の間にあるメカニズムそのものが科学技術と不可分であるために、新たな機材やシステムの登場によりコンベンショナルな環境は失われ、どんどんアップデートして行きます。そして、レンズを通じた光が感光材料に焼き付けられる事と、電気信号に置き換えられて記録される事には、写真そのものの本質的変化があり、そしてそれは何なのか、という疑問について広く問題を共有したいという願いを抱きました。写真は、photographyという本質から、何かに変化していくのでしょうか?それは何なのでしょうか? それとも変わらないのでしょうか?
  歴史的な転換点とも言える現在、明確な視座はどこからも示されていません。“写真”が変り続ける現在、何を指針とするべきなのかを明らかにしなければならないでしょう。先ずは、写真芸術に先鋭的に関わられている皆様に、アンケートをお願いし、問題点の一端を明らかに出来たらと考えました。何とぞ、本アンケートにご協力願います。
             TGPRP 代表   佐藤 時啓
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<写真は、photographyという本質から、何かに変化していくのでしょうか?それは何なのでしょうか? それとも変わらないのでしょうか?>
という問いかけは画商にとっても大きな問題です。
やっとアート市場に写真が参入できたと思ったら(位置を確定するには先ず写真の定義が必要です)、やがてその表現が「写真」というくくりでは御しきれない激変というか、際限のない拡張を始めてしまったということでしょうか。

銀塩写真の魅力Ⅲ/裸婦は美しい」も会期が残り少なくなってきましたが、出品作品の中からウェイン・メイザーをご紹介します。
メイザーは1981年創立のアメリカのアパレルブランド『GUESS』のファッション・キャンペーンで注目され、以後主にファッション写真の分野で活躍しています。
暴力的でさえある大胆且つぞくっとさせるセクシュアルな緊張感を持った表現方法が特徴で、今回の出品作品にもそれが良く出ています。
ウェイン・メイザー
ウェイン・メイザー Wayne MASER
Woman spitting beer, 1990
1990年
ゼラチンシルバープリント
50.6x40.4cm
サインあり

■ウェイン・メイザー WAYNE MASER
写真家。1946年アメリカ・ペンシルベニア州に生まれる。
フィラデルフィア・カレッジ・オブ・アート卒業。『GUESS(ゲス)』のファッション・キャンペーン写真で世間の注目を集める。その後ファッション界の巨匠ヴェルサーチ、カルバン・クライン、ドナ・キャランなどのキャンペーン広告を次々と手掛け、彼のファッション・イメージが売上げ向上に大きく貢献する。
メイザーの写真は時に暴力的でさえあり、大胆且つセクシュアルな緊張感を持った表現方法はコマーシャルフォト界のトレンドに影響を与えた。

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◆ときの忘れものは、2012年1月27日[金]―2月4日[土]「銀塩写真の魅力Ⅲ/裸婦は美しい」を開催しています。
魔方陣
20世紀の銀塩写真を中心とするアナログ写真は、デジタルカメラの進化により、いまや消え行く運命にあります。
本展では「裸婦」をテーマに、中山岩太、ベッティナ・ランス、福田勝治、細江英公、大坂寛、植田正治、五味彬、服部冬樹、ジョック・スタージス、井村一巴、カリン・シェケシー、ヤン・ソーデック、カート・マーカス、ウェイン・メイザーの美しいモノクロームプリントを展示しています。