先ほど帰宅して、急ぎこのブログを書いています。
東京都現代美術館で昨夕、靉嘔展のオープニングがありました。
社長が靉嘔先生に初めて出会ったのは跡見学園女子短大1年生のとき、恩師久保貞次郎先生に連れられて行った南画廊のオープニング会場でした。
それから40数年が経ち、昨夜は社長にとって忘れられない日になりました。
オープニングの嬉しい出来事とは・・・、近日中にご報告します。

毎月10日と25日の二回、小林美香さんのエッセイ「写真のバックストーリー」を連載していますが、その都度小林さんがツイッターで発信してくださるので(フォロワー1457人!)、それを読んだ方が来廊されたり、取り上げられた写真への問合せも多い。
先日も「ときの忘れもの掲示板」に、以下のような投稿がありました。
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突然ですみませんが教えてください。一度貴画廊の写真展を拝見しました。パリのキッスなど綺羅星の名品に出会えることができました。こんな巨匠たちの写真作品をいつか所有してみたいと思いました。そんな出品者の一人WEEGEEの作品を譲るとい話がNYの日本人の友人を通してありました。メールで送られたWEEGEE作品は、1940年代のアメリカンドリームを感じさせるような男性の肖像でした。サイズは10センチ四方の小品、価格は$500の提示でした。小品なのにずいぶん高いなと思いました。Ebayなどのオークションでは、$99で同サイズの作品が出品されていました。これは素人で米国人にカモにされていると思い友人に話すとその米国人コレクターが「この作品は1940年代のWEEGEEのビンテージだ、しかも写真の裏にはWEEGEEのバックスタンプもある、WEEGEEの複写写真やバックスタンプ無し作品はたくさん出回っているが、米国内て゛もビンテージなんぞ目にしないぞ。友人が欲しがっているといわれたので$500の提示したが、$800ぐらいしてもおかしくない。WEEGEEの評価もまだまだこれからだ。いやならやめとけ。」といわれたそうで、けんもほろほろ。
東京近美でも10センチ四方のケルテスやマンレイの10センチ四方の小品の展示も見かけますし、それよりなにより60年前のWEEGEEの「ヴィンテージ」(保証すると言われました。)という言葉に挽かれ、この縁を大切にしようと早速手に入れました。ブックマット額装し飾っています。ただWEEGEEの資料は日本では皆無なんですね。国内のギャラリーもほとんど不明。素人の浅ましさでこんな価格で買ってしまってよかったのか、もっと調べれば‥など考えめぐらしておりました。日本ではときも忘れものでしか取り扱っていないのでしょう。価格なんて気にするな、作品がすきならどうでもいいことだと言われるのを承知でお尋ねします。良い買い物だったのか、勉強不足の銭失いだったのか。すみません。

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こういう話を実際に聞くと(読むと)亭主は嬉しくなる。
コレクションというものはかくありたい。
もしかしたら間違った買い物しちゃったんじゃあないか、と思い煩うことから真のコレクションは始まるのではないでしょうか。
不安や疑念をふりはらうために、自分で調べ出す。売った画商より買った客の方が詳しくなる。
身銭を切った者の真剣さこそが優れたコレクションを形成する。
WEEGEEについては、小林美香さんが写真のバックストーリー第7回で取り上げてくれました。
Weegee[Easter Sunday in Harlem]
ウィージー WEEGEE
Easter Sunday in Harlem
ハーレムの復活祭の日曜日

1940年撮影(Printed later)
ゼラチン・シルバー・プリント
33.4×26.8cm
裏面にスタンプあり

ウィージースタンプサイン
作品の裏に捺されたスタンプ


さて、先週から開催してきた「銀塩写真の魅力Ⅲ/裸婦は美しい」は本日が最終日です。
19時まで開いていますので、ぜひお出かけください。

最後にご紹介するのは、服部冬樹です。
「90 Minutes JESSICA」連作は7点の中の1点です。
3点は顔の見えないトルソ的な作品、他の4点はこの作品のように頭に手を添えたポーズの連作になっています。
服部冬樹
服部冬樹 Fuyuki HATTORI
90 Minutes JESSICA I ジェシカ
1991年
Cibachrome
シートサイズ:50.4×40.3cm
Ed.3/3
右下・裏にサインあり
*レゾネNo.272(共同文化社「服部冬樹作品集」)

服部作品は、モノクロームで撮ったものにさまざまな手を加えて、最終的にチバクロームのカラー作品となります。女性のヌードに「静物」とタイトルを付けた作品があることからも明らかなように、服部は、肉体をオブジェとして扱っています。ここでも、ポーズをとるモデルは石のような冷たい色であり、あたかもはるか昔に時間を止められてしまったかのようにも見えます。

■服部冬樹
1955年、北海道札幌市に生まれる。1978年、日本大学芸術学部写真学科卒業。大学時代にチェコスロヴァキアの写真家ヨゼフ・スデックの静物写真から影響を受け、花や花瓶を題材として制作を行っていたが、その後ヌード作品のシリーズを手がける。「快楽やエロティシズムを漂わせる肉体」という別の対象に移行しても、人体を「静物」として捉えるアプローチは、一貫している。在学中の77年に初の個展を開催(日本大学芸術学部図書館ギャラリー)。80年代からは主としてツァイト・フォト・サロンなどで発表活動を続ける。服部は、タゲレオタイプからチバクロームまで写真史上のさまざまな技法を再現し、作品としての写真が注目されている現在にあって、写真の美的側面だけでなく、その歴史そのものを現在に凝縮することで、写真とは何かという問いかけを提出している。
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◆「銀塩写真の魅力Ⅲ/裸婦は美しい」は本日が最終日です、19時まで開催しています。
魔方陣
20世紀の銀塩写真を中心とするアナログ写真は、デジタルカメラの進化により、いまや消え行く運命にあります。
本展では「裸婦」をテーマに、中山岩太、ベッティナ・ランス、福田勝治、細江英公、大坂寛、植田正治、五味彬、服部冬樹、ジョック・スタージス、井村一巴、カリン・シェケシー、ヤン・ソーデック、カート・マーカス、ウェイン・メイザーの美しいモノクロームプリントを展示しています。