光嶋裕介のエッセイ 第8回
第八便:『継続することの先にあるもの』(VIII/VIII)
いささか唐突ですが、
僕は大学受験を免れてのんびりと高校3年間を過ごしました。
バスケ部で汗を流し、ギターを弾いたり、本を読んだりしながら、
美術の先生のご好意で美術部にも混ざって陶芸や銅版画もやらせてもらった。
当時は平凡な毎日を当たり前のように過ごしていたが、
今になって思うと眩しいくらいの青春だったように思う。
自分の好きなことを好きなだけやって、
楽しい時間を共有する仲間がたくさんできた。
そして、
早稲田大学理工学部建築学科に入学した。
新入生オリエンテーションでのことだ。
大学の教授陣がみな勢揃いして一言ずつ学生に向かった挨拶していった。
ある先生は、アントニオ・ガウディーについて語り、
またある先生は、建築における空間についてお話しされた。
そんな中、心に刺さった言葉を話されたのが
後に研究室に所属することになる石山修武先生だった。
僕にとって突然の師との出逢いであった。
石山さんは、
「あなた達の中で将来独立して建築家になって仕事をしたいと
強く思っている人がいれば、年賀状が500枚届くような人間になりなさい」
というような内容のお話しをされた。
18歳の僕はこの言葉の真意を全く理解していなかったが、
何だか強く惹かれ、胸にとどめていた大切な言葉である。
それ以来ずっと人と人の関係を大事に育んできた。
顔の見える強靭な関係性を築いていくためには、
誠意を持って対話を重ね、
いつも笑顔で明るくいるように心掛けている。
イメージとしては、
畑に種を植えて、毎日丹念に水をやって育てていくように
日々楽しみながら豊かな人間関係をつくっていくと、
いつか500枚の年賀状が届くような人間になれるのではないかと信じている。
僕にとって建築を学び始めてからのことを振り返ってみると
空間がどうのこうの、デザインがどうこうというよりかは、
こうした人間と人間の関係性の方が強く思い出される。いわばご縁である。
建築家という職業にとって大切なものは
そういう人間関係の方なのかもしれない。
だからこそ、
毎日の仕事の積み重ねが新鮮でみずみずしく、
やりがいのあるものとなっている。
当たり前のことを当たり前のようにくり返す、
そうした反復の先にこそ、
まだ見ぬ豊かな風景が見えるようになるのではないか。
実は銅版画を彫っているのも、
それと同じ考えの下、
継続することを力に変えて、
これからもライフワークとして続けていきたいと思っている。
(こうしまゆうすけ)
※いよいよ来週から僕にとって人生初めての銅版画展がときの忘れもので始まります。これもひとえに綿貫さんをはじめ、みなさまとのご縁のおかげだと思っています。本当にありがとうございます。これからも精進していきますので、どうぞ宜しくお願いします。ぜひ画廊でお逢いできることを心より楽しみにしています。

光嶋裕介
"Landscape at Night NO.011"
2010年
エッチング、凸版刷り
イメージサイズ:12.0x30.0cm
シートサイズ :27.0x39.5cm
Ed.8+20 (I/VIII~VIII/VIII+1/20~20/20)
サインあり

光嶋裕介
"Landscape at Night NO.011 bis"
2011年
エッチング、手彩色
イメージサイズ:12.0x30.0cm
シートサイズ :27.0x39.5cm
Ed.1 サインあり
*上掲の作品を含む『光嶋裕介銅版画集―Landscape at Night』の概要が決まりました。
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
◆ときの忘れものは、2012年5月29日[火]―6月9日[土]「光嶋裕介銅版画展―Landscape at Night」を開催します(会期中無休)。
第八便:『継続することの先にあるもの』(VIII/VIII)
いささか唐突ですが、
僕は大学受験を免れてのんびりと高校3年間を過ごしました。
バスケ部で汗を流し、ギターを弾いたり、本を読んだりしながら、
美術の先生のご好意で美術部にも混ざって陶芸や銅版画もやらせてもらった。
当時は平凡な毎日を当たり前のように過ごしていたが、
今になって思うと眩しいくらいの青春だったように思う。
自分の好きなことを好きなだけやって、
楽しい時間を共有する仲間がたくさんできた。
そして、
早稲田大学理工学部建築学科に入学した。
新入生オリエンテーションでのことだ。
大学の教授陣がみな勢揃いして一言ずつ学生に向かった挨拶していった。
ある先生は、アントニオ・ガウディーについて語り、
またある先生は、建築における空間についてお話しされた。
そんな中、心に刺さった言葉を話されたのが
後に研究室に所属することになる石山修武先生だった。
僕にとって突然の師との出逢いであった。
石山さんは、
「あなた達の中で将来独立して建築家になって仕事をしたいと
強く思っている人がいれば、年賀状が500枚届くような人間になりなさい」
というような内容のお話しをされた。
18歳の僕はこの言葉の真意を全く理解していなかったが、
何だか強く惹かれ、胸にとどめていた大切な言葉である。
それ以来ずっと人と人の関係を大事に育んできた。
顔の見える強靭な関係性を築いていくためには、
誠意を持って対話を重ね、
いつも笑顔で明るくいるように心掛けている。
イメージとしては、
畑に種を植えて、毎日丹念に水をやって育てていくように
日々楽しみながら豊かな人間関係をつくっていくと、
いつか500枚の年賀状が届くような人間になれるのではないかと信じている。
僕にとって建築を学び始めてからのことを振り返ってみると
空間がどうのこうの、デザインがどうこうというよりかは、
こうした人間と人間の関係性の方が強く思い出される。いわばご縁である。
建築家という職業にとって大切なものは
そういう人間関係の方なのかもしれない。
だからこそ、
毎日の仕事の積み重ねが新鮮でみずみずしく、
やりがいのあるものとなっている。
当たり前のことを当たり前のようにくり返す、
そうした反復の先にこそ、
まだ見ぬ豊かな風景が見えるようになるのではないか。
実は銅版画を彫っているのも、
それと同じ考えの下、
継続することを力に変えて、
これからもライフワークとして続けていきたいと思っている。
(こうしまゆうすけ)
※いよいよ来週から僕にとって人生初めての銅版画展がときの忘れもので始まります。これもひとえに綿貫さんをはじめ、みなさまとのご縁のおかげだと思っています。本当にありがとうございます。これからも精進していきますので、どうぞ宜しくお願いします。ぜひ画廊でお逢いできることを心より楽しみにしています。

光嶋裕介
"Landscape at Night NO.011"
2010年
エッチング、凸版刷り
イメージサイズ:12.0x30.0cm
シートサイズ :27.0x39.5cm
Ed.8+20 (I/VIII~VIII/VIII+1/20~20/20)
サインあり

光嶋裕介
"Landscape at Night NO.011 bis"
2011年
エッチング、手彩色
イメージサイズ:12.0x30.0cm
シートサイズ :27.0x39.5cm
Ed.1 サインあり
*上掲の作品を含む『光嶋裕介銅版画集―Landscape at Night』の概要が決まりました。
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◆ときの忘れものは、2012年5月29日[火]―6月9日[土]「光嶋裕介銅版画展―Landscape at Night」を開催します(会期中無休)。

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