◆銀塩写真の魅力 IV展は本日が最終日ですが、日本を代表する細江英公の「Casa Mila 8」と「薔薇刑 #32」をご紹介します。

細江英公の『薔薇刑』『鎌鼬』『抱擁』『おとこと女』などの写真集は今や稀覯本です。
瑛九の周辺に集まった画家たちの中では最年少だった細江ですが、2003年には英国王立写真協会創立百五十周年記念特別賞を受賞、2010年には文化功労者として顕彰されるなど、国内外において高い評価を獲得しています。功なり名を遂げても一ケ所に安住することなく、時代の先端をカメラを通して見つめ、謙虚で若い才能を愛する姿勢は一貫しています。

細江英公細江英公
「Casa Mila 8」
1977年
ヴィンテージゼラチンシルバープリント
36.0x54.7cm
サインあり

1964年、細江はバルセロナでガウディ建築との衝撃的な出会いを体験しますが、そのときはあまりの衝撃に写真を撮ることはできず、その13年後の1977年になって、初めて撮影を行います。その撮影から戻ると、すぐにプリントして展覧会を開催し、それからも数度に亘る撮影を行ない「ガウディへの讃歌」として、写真集や展覧会で発表しました。ご紹介するのは、その1977年にプリントされたヴィンテージです。

細江英公2細江英公
「薔薇刑 #32」
1961年(2013年プリント)
ゼラチンシルバープリント
50.5x60.5cm
サインあり

〈薔薇刑〉は1961年に三島由紀夫の自邸で撮影され、写真集としては1963年発行の杉浦康平デザインによる初版『薔薇刑』、横尾忠則装丁の1971年に発行された『新輯版 薔薇刑』、1984年発行の粟津潔装丁版『薔薇刑 新版』と三つの版が出版されるくらいの人気と評価を得ている名作です。
特にこの三島の顔をアップで捉えた「薔薇刑 #32」は、戦後の日本写真史を語る上で外すことのできない一点です。

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから

細江英公 Eikoh HOSOE(1933-)
写真家。清里フォトアートミュージアム館長。1933年山形県生まれ。本名・敏廣。18歳のときに[富士フォトコンテスト学生の部]で最高賞を受賞し、写真家を志す。52年東京写真短期大学(現東京工芸大学)入学。デモクラート美術家協会の瑛九と出会い強い影響を受ける。54年卒業。56年小西六ギャラリーで初個展。63年三島由紀夫をモデルに撮った[薔薇刑]で評価を確立し、70年[鎌鼬(かまいたち)]で芸術選奨文部大臣賞受賞。

◆ときの忘れものは、2013年2月8日[金]―2月16日[土]「銀塩写真の魅力 IV展」を開催しています。
魔方陣
銀塩写真のモノクロームプリントの持つ豊かな表現力と創造性をご覧いただくシリーズも4回目を迎えました。
本展では植田正治細江英公五味彬大竹昭子、佐藤理、北井一夫村越としやエドワード・スタイケンロベール・ドアノーアンリ・カルティエ=ブレッソンロバート・メープルソープウィン・バロックジョック・スタージスらのモノクローム作品約20点をご覧いただきます。