今春、岩波書店から『磯崎新建築論集』(全8巻)の刊行が始まりました。
各巻の表紙にはときの忘れものからエディションしている(ただし未完)連刊画文集『百二十の見えない都市』に収録予定の銅版画が使われています。
既に予約購読されているパトロンの皆様には誠に申し訳ないのですが、実物のエディションより先にイメージが公開されている次第です。
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『磯崎新建築論集』第5巻
「わ」の所在ー列島に交錯する他者の視線
2013年7月26日刊行

さらに各巻に挿入される月報にもときの忘れもののエディション「栖十二」から磯崎先生の銅版画が毎号挿絵として使われています。
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月報5
井上章一「テラーニにみちびかれ」
杉本博司「利休切腹の建築的素因」

上掲月報5の右ページに掲載されたのは、
磯崎新『栖十二』第4信より銅版画
「挿画12(A)」アンドレア・パッラディオ<ラ・マルコンテンタ(ヴィッラ・フォースカリ)>

月報の杉本博司さんの「利休切腹の建築的素因」という文章の中に、原美術館に隣接する磯崎新設計の茶室「有時庵」のことが出てくるのですが、

私はこの「有時庵」のプランとパース図を見た覚えがある。それは八〇年代のニューヨーク、レオ・カステリ画廊での、新進気鋭の建築家達のプランを現代美術画廊が展示した画期的な展覧会だった。茅葺の丸屋根を持ったその姿は、私には堀口捨己の処女作「紫烟荘」の隠喩に見えたことを覚えている。

という一節があります。

レオ・カステリの展覧会は私たちにとっても画期的なもので、建築家のドローイングや版画を取り扱う私たちには大きな刺激と自信になりました。
レオ・キャステリからの依頼は、「Folly」のドローイング(及び版画)を展示して設計とセットで売るというアイデアでした。
磯崎先生にこのプランをもとに版画をつくることを提案するとすかさず、「だったら木版画で行こう」となり、完成したのが「Folly-Soan」シリーズ3点でした。
伝統的な浮世絵版画の制作システムを使った木版画で、彫と摺りは版画家として活躍する三塩英春先生に依頼しました。
《FOLLY-草庵 1》は雨のシーンですが、草庵に降り注ぐ雨のイメージは、磯崎先生の好きな安藤広重の「東海道五十三次之内 庄野」を彷彿とさせます。内観はモンドリアン空間です。
このプランはNYでは実現しなかったけれど、後に品川の有時庵として建築されました。
ArataIsozaki[FOLLY1]
磯崎新
FOLLY-草庵 1
1984年 木版
イメージ54.0×74.0cm(シート57.0×76.0cm)
Ed.50 サインあり

ArataIsozaki[FOLLY2]
磯崎新《FOLLY-草庵 2
1984年 木版
イメージ30.0×37.2cm(シート57.0×76.0cm)
Ed.50 サインあり

ArataIsozaki[FOLLY3]
磯崎新《FOLLY-草庵 3
1984年 木版
イメージ46.5×19.5cm(シート57.0×76.0cm)
Ed.50 サインあり

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