KIAF2013に参加して
野口琢郎

箔画作家の野口琢郎です。昨年同様、今年もKIAF2013にときの忘れものさんのブースから出展させて頂きました。期間中はソウルに滞在し、ほぼ毎日会場でお客様を出迎えさせていただきました。海外のアートフェアへの出展は昨年が初めてであり、日本国内のアートフェアにはない規模の大きさや、世界中から集まったレベルの高い作品の多さに、ただただ圧倒された部分がありました。しかし、二度目の今回はもう少し冷静に感じる部分が多かったように思います。言葉にする事は難しいですが、簡単に感想を述べさせていただきます。

恐らくすべてのブースは観てはいませんが、まずフェア全体の作品を観て、全体の迫力は昨年よりも弱くなったように感じました。立体作品が少なかったのも理由の一つかと思いますが、平面作品でも圧倒されるような大作も少なかったように思います。とはいえ、草間彌生さんやシャガールなど、名だたる作家の方々と同じ場に作品を展示できた事は大きな刺激となりました。また、一年に一度の自分の力試しの場として、現在の自分自身を少し俯瞰して見る事ができたため、今後進化すべき所が改めて見えた事は収穫でした。さらに、日本国内のフェアの何倍もある規模や集客力、入場料の安さ、地元の老若男女が気軽に来場していることなどは羨ましく思いました。


今回、僕の出展作品は今年制作した《Landscape#28》(50号F)、《Akane》(65.2×140cm)、《kotodama》(10号M)の3点でした。予想はしていたものの、実際KIAFの会場に展示すると50号程度では小さく感じました。もっと大作を用意できれば良かったと思う反面、昨年より質の高い3点を揃える事ができ、立ち止まって観て頂ける事も多かったため、記憶に残る存在感は示せたように思います。
また、《Akane》と《kotodama》の2点はご購入頂く事ができました。《Akane》は購入して頂いたお客様の希望で会期中にソウル市内のご自宅へ納品、設置もしました。可能であれば会期の最後まで展示し、できるだけ多くの方に作品を観て頂きたい気持ちはありましたが、購入して頂いた作品がどんな場所に飾って頂けるのかを自分の目で観る機会は少ないので、良い経験となりました。


フェア会場内は一応撮影禁止ですが、大多数のお客様が容赦なくスマホやカメラで撮影していました。僕も記録の為に一眼レフで撮りました。ギャラリーによっては撮影を注意する所もあったようですが、個人的には作品の撮影は大歓迎で、過去にも個展などでお断りした事はありません。このネット時代、画像が拡散すればそれだけ自分の事を知って頂けるので、逆に僕は有難い事だと思っています。

会場での待機中や閉場後の夕食では綿貫さんご夫妻や、スタッフの方々、他のギャラリーの方々とお話する時間も多く、そのような時間もとても有意義なものでした。
ある夜は、ときの忘れもののスタッフの秋葉さん・新澤さんと、時間が許す限りではありましたが、ソウルの街を散策し、晩ご飯をご一緒させていただきました。
秋葉シスイさんはスタッフとして働きながら画家をされているので、作家同士での会話は刺激になり、制作を通して感じる事など共感できる事も多く、貴重な時間となりました。来る日も来る日もただ一人、自分と向き合い作品制作をしていると、自信に満ち制作が捗る時もあれば、自信など吹っ飛び、制作は行き詰まり、自分はこれでいいのかなどと考えてしまう時もあります。しかし、KIAFなどアートフェアに出展すると、一度に何百人という多くの作家と同列に自分の作品も並ぶので、自分の作品もいつもより少し客観視できます。会場には理屈無しに素晴らしいもの、何故かイマイチなもの、抽象に具象、立体や映像、本当に色々な作品があり、美術作家をしていても、美術というものは何でもありだなとか、何が良いかとか、よく解らないものだと思うもので、秋葉さんの言葉を借りると、「そんな中にあると、美術に何が正解で、不正解かなんて無いって思うので、自分は自分、ただ描きたいものを描けばいいのだと再認識できます」その通りだと思いました。作品を生み出す時は、何か人と比較する必要など無く、素直に作りたいものを作れば良いと思っていますが、世に出す物としての作品を客観視する事は、進化を加速させると思います。アートフェアは画廊にとっては作品を売る場所であり、お客様にとっては観て、購入する場所。そして作家にとっては知名度を上げる場所であると同時に、自らをより知る事のできる場所であると思うので、この世界で本気で勝負をするのであれば、作家は現場に来るべきだと僕は思いました。
また、別の夜には他の画廊のオーナーさんやスタッフの方々もご一緒に、綿貫さん夫妻のお部屋で遅くまで色々なお話をしました。
大阪の画廊のオーナーさんからは、普段作家はあまり知る機会の無いような画廊、画商業の実態や裏側のお話も聴かせて頂き、その中には作家としてはショッキングなお話もありました。僕は「えーっ!」っという言葉を連発していましたが、大変勉強になり、作家として生きていくのだという覚悟をしている者として、改めて気合いが入るお話でした。
最後の夜、綿貫さんに「来年のKIAFは野口君をメインに出そう」と言って頂き、来年もソウルに来るのは確定しました。来年は11月頃に青山のときの忘れもののスペースでも個展を開催させて頂くので、また濃い日々になりそうです。早めに準備を始めようと思います。
また、来年は他の国のアートフェアにも行ける可能性も…という話も出ていたため、そうなれば嬉しく思います。
最後になりましたが、今回もKIAFに出展させて頂き、何から何までサポートして頂いた、ときの忘れものの皆様に心より感謝致します。
来年のKIAF、そして個展では進化した姿をお見せできるよう日々最善を尽くしますので、今後ともどうぞよろしくお願い致します。
(のぐちたくろう)

野口琢郎
《Landscape#28》
2013年
箔画(木パネル、漆、金・銀・プラチナ箔、石炭、樹脂、アクリル絵具)
116.7×90.9cm
singed
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野口琢郎

箔画作家の野口琢郎です。昨年同様、今年もKIAF2013にときの忘れものさんのブースから出展させて頂きました。期間中はソウルに滞在し、ほぼ毎日会場でお客様を出迎えさせていただきました。海外のアートフェアへの出展は昨年が初めてであり、日本国内のアートフェアにはない規模の大きさや、世界中から集まったレベルの高い作品の多さに、ただただ圧倒された部分がありました。しかし、二度目の今回はもう少し冷静に感じる部分が多かったように思います。言葉にする事は難しいですが、簡単に感想を述べさせていただきます。

恐らくすべてのブースは観てはいませんが、まずフェア全体の作品を観て、全体の迫力は昨年よりも弱くなったように感じました。立体作品が少なかったのも理由の一つかと思いますが、平面作品でも圧倒されるような大作も少なかったように思います。とはいえ、草間彌生さんやシャガールなど、名だたる作家の方々と同じ場に作品を展示できた事は大きな刺激となりました。また、一年に一度の自分の力試しの場として、現在の自分自身を少し俯瞰して見る事ができたため、今後進化すべき所が改めて見えた事は収穫でした。さらに、日本国内のフェアの何倍もある規模や集客力、入場料の安さ、地元の老若男女が気軽に来場していることなどは羨ましく思いました。


今回、僕の出展作品は今年制作した《Landscape#28》(50号F)、《Akane》(65.2×140cm)、《kotodama》(10号M)の3点でした。予想はしていたものの、実際KIAFの会場に展示すると50号程度では小さく感じました。もっと大作を用意できれば良かったと思う反面、昨年より質の高い3点を揃える事ができ、立ち止まって観て頂ける事も多かったため、記憶に残る存在感は示せたように思います。
また、《Akane》と《kotodama》の2点はご購入頂く事ができました。《Akane》は購入して頂いたお客様の希望で会期中にソウル市内のご自宅へ納品、設置もしました。可能であれば会期の最後まで展示し、できるだけ多くの方に作品を観て頂きたい気持ちはありましたが、購入して頂いた作品がどんな場所に飾って頂けるのかを自分の目で観る機会は少ないので、良い経験となりました。


フェア会場内は一応撮影禁止ですが、大多数のお客様が容赦なくスマホやカメラで撮影していました。僕も記録の為に一眼レフで撮りました。ギャラリーによっては撮影を注意する所もあったようですが、個人的には作品の撮影は大歓迎で、過去にも個展などでお断りした事はありません。このネット時代、画像が拡散すればそれだけ自分の事を知って頂けるので、逆に僕は有難い事だと思っています。

会場での待機中や閉場後の夕食では綿貫さんご夫妻や、スタッフの方々、他のギャラリーの方々とお話する時間も多く、そのような時間もとても有意義なものでした。
ある夜は、ときの忘れもののスタッフの秋葉さん・新澤さんと、時間が許す限りではありましたが、ソウルの街を散策し、晩ご飯をご一緒させていただきました。
秋葉シスイさんはスタッフとして働きながら画家をされているので、作家同士での会話は刺激になり、制作を通して感じる事など共感できる事も多く、貴重な時間となりました。来る日も来る日もただ一人、自分と向き合い作品制作をしていると、自信に満ち制作が捗る時もあれば、自信など吹っ飛び、制作は行き詰まり、自分はこれでいいのかなどと考えてしまう時もあります。しかし、KIAFなどアートフェアに出展すると、一度に何百人という多くの作家と同列に自分の作品も並ぶので、自分の作品もいつもより少し客観視できます。会場には理屈無しに素晴らしいもの、何故かイマイチなもの、抽象に具象、立体や映像、本当に色々な作品があり、美術作家をしていても、美術というものは何でもありだなとか、何が良いかとか、よく解らないものだと思うもので、秋葉さんの言葉を借りると、「そんな中にあると、美術に何が正解で、不正解かなんて無いって思うので、自分は自分、ただ描きたいものを描けばいいのだと再認識できます」その通りだと思いました。作品を生み出す時は、何か人と比較する必要など無く、素直に作りたいものを作れば良いと思っていますが、世に出す物としての作品を客観視する事は、進化を加速させると思います。アートフェアは画廊にとっては作品を売る場所であり、お客様にとっては観て、購入する場所。そして作家にとっては知名度を上げる場所であると同時に、自らをより知る事のできる場所であると思うので、この世界で本気で勝負をするのであれば、作家は現場に来るべきだと僕は思いました。
また、別の夜には他の画廊のオーナーさんやスタッフの方々もご一緒に、綿貫さん夫妻のお部屋で遅くまで色々なお話をしました。
大阪の画廊のオーナーさんからは、普段作家はあまり知る機会の無いような画廊、画商業の実態や裏側のお話も聴かせて頂き、その中には作家としてはショッキングなお話もありました。僕は「えーっ!」っという言葉を連発していましたが、大変勉強になり、作家として生きていくのだという覚悟をしている者として、改めて気合いが入るお話でした。
最後の夜、綿貫さんに「来年のKIAFは野口君をメインに出そう」と言って頂き、来年もソウルに来るのは確定しました。来年は11月頃に青山のときの忘れもののスペースでも個展を開催させて頂くので、また濃い日々になりそうです。早めに準備を始めようと思います。
また、来年は他の国のアートフェアにも行ける可能性も…という話も出ていたため、そうなれば嬉しく思います。
最後になりましたが、今回もKIAFに出展させて頂き、何から何までサポートして頂いた、ときの忘れものの皆様に心より感謝致します。
来年のKIAF、そして個展では進化した姿をお見せできるよう日々最善を尽くしますので、今後ともどうぞよろしくお願い致します。
(のぐちたくろう)

野口琢郎
《Landscape#28》
2013年
箔画(木パネル、漆、金・銀・プラチナ箔、石炭、樹脂、アクリル絵具)
116.7×90.9cm
singed
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