わたしの作品はいつでも政治的だった。それは芸術家になる道を選ぶことが、中国では政治的だからだ。

美術品になぜこれほど高い値がつくのか、その訳を知るひとはほとんどいない。わたしにもわからない。

芸術ではつねに、内面の状況と表現する技術の間に横たわる障害を克服することが課題となる。

なけなしの自負心さえ手放す、恥知らずな連中はたしかにいる。そういう作品が目につくし、そのたびに恥ずかしくおもう。中国では美術は装飾の一種、わがままのように扱われている。そういうものはいかにも美術のようなふりをする。美術のようにも見える。美術として売られている。でも、そんなものは屑にすぎない。

芸術は目的ではなく、手がかりだ

アイ・ウェイウェイ(艾未未)

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先日、ボブ・ウィロビー展のレセプションにいらした畏友・木下哲夫さんが「最近の仕事です」といって『アイ・ウェイウェイ主義』という本を贈ってくださった。
アイ・ウェイウェイ主義アイ・ウェイウェイ著
木下哲夫翻訳
『アイ・ウェイウェイ主義』
2013年 ブックエンド 発行
135ページ
18.9x10.9cm
1,575円

翻訳というのが、実は英語や仏語に堪能ということが大事なのではなく、「きちんとした日本語」が使えるかで決まるということを教えてくれたのが木下さんです。
美術界でその名もとどろく名翻訳者の木下さんのトークイベントがあります。

『アイ・ウェイウェイ主義』(ブックエンド)発売記念
木下哲夫×丹羽良徳
トークイベント「アーティストの言葉、アーティストの行動」

日時:2013年12月12日(木)20:00~22:00 (19:30開場)
会場:本屋B&B
   世田谷区北沢2-12-4 第2マツヤビル2F
司会:小林英治

中国の現代美術界を代表するアーティスト、アイ・ウェイウェイ(艾未未)。北京オリンピック国立競技場「鳥の巣」の共同設計や、2009年に森美術館で開催された日本初の展覧会「アイ・ウェイウェイ 何に因って?」(現在北米巡回中)で広く知られるようになった彼は、アート作品で注目を浴びる一方、四川大地震で起きた校舎倒壊と5千人以上の学童の死について市民と共に独自調査をしたり、政府や警察当局の批判や中国社会に関する発言を世界へ向けて積極的に発信し、活動家としての顔も知られる。
それら様々な海外メディアや公式サイト、ツイッターなどでのアイ・ウェイウェイ本人の発言を集めた箴言集『アイ・ウェイウェイ主義』(ブックエンド)は、昨年4月の彼の中国当局による逮捕・拘束を受けて、アメリカで緊急出版されたもの。その日本版の発売を記念して、これまでも数多くの美術やアーティストに関わる書籍の翻訳をてがける訳者の木下哲夫さんと、不可能性と交換を主軸とした行為や企てを路上などの公共空間で試みることで社会や歴史へ介入する作品を制作するアーティストの丹羽良徳さんをお迎えし、アーティストと私たちの生きる社会との関わりについて考える、トークイベントを開催します。(本屋B&BのHPより)

木下哲夫(きのした・てつお)
1950年生まれ。翻訳家。京都大学経済学部卒。訳書に、S・N・バーマン『画商デュヴィーンの優雅な商売』(筑摩書房、1990)T・シュヴァリエ『真珠の耳飾りの少女』(白水社、2000)A・ベイリー『フェルメール デルフトの眺望』(白水社、2002)、C・トムキンズ『マルセル・デュシャン』(みすず書房、2003)、D・ホックニー『秘密の知識』(青幻舎、2006)、ジョナス・メカス『ジョナス・メカス--ノート、対話、映画』(せりか書房、2012)など、美術書を中心に多数の翻訳を手がける。