スタッフSの海外ネットサーフィン No.7
「RISE」展

Canterbury Museum ~ Christchurch, New Zealand


連載10回に届かずにして取り扱う場所の候補に余裕がなくなってきたスタッフSこと新澤です。
師走で皆様お忙しいこの時期、わざわざ自分の記事など見ている暇がある方は果たしていらっしゃるのか…。

今回話のダシにさせていただくのはキウイフルーツとオールブラックスの国、ニュージーランドです。
別に住んでいたことがあるわけではないのですが、自分が行ったことのある場所ということで見逃していただけるとありがたいです、ハイ。
で、こちらには20年以上前のクリスマスに、家族と父の友人の家族で旅行で訪れました。北半球と南半球では季節が逆転しているというのはよく聞きますが、これを額面どおりに受け取った我々は「日本基準で標準的な」夏服だけ用意して現地入りしたワケです。が、悲しいかな、南極の入り口などと呼ばれるクライストチャーチの夏が日本のそれと同じワケがなく、午後七時、そこには木枯らしに震えるTシャツ短パンの東洋人の集団があったのでした。今となっては笑い話の一つですが、あの時の寒さは身に沁みましたねぇ…

今回紹介するのはそんな東洋人の楽観を凍てつかせてくださったクライストチャーチの主要観光名所の一つ、カンタベリー博物館(Canterbury Museum)です。1867年開館のネオ・ゴシック建築の建物で、博物館の名の通り、主に扱っているのはカンタベリー地区の開拓の歴史、マオリ文化、ヨーロッパからの移民の歴史など。他には南極への出入り口でもあるクライストチャーチの歴史、南極探検に関する資料、調査標本の展示も行っており、かつてニュージーランドに生息した巨鳥モアや国鳥キウイなど希少鳥類の剥製展示もされています。
Canterbury Museum

このように博物館らしい展示を行っているカンタブリー博物館で今月20日から来年の3月23日まで開催されている、ちょっと毛色の違う企画が「RISE」展です。

20131226_rise1

上記のイメージからも分かる通り、スプレー塗料を使ったグラフィティに代表される、ストリートアートを主題にしたこの企画、既にあるものを見せるだけではなく、現在も世界中で活躍中のストリートアーティスト達にリアルタイムでクライストチャーチの町並みをキャンバスに、新たに作品を作り出してもらおうという中々に意欲的なイベントです。ストリートアートというと、漫画じみていたり、おふざけに比率が多く傾いていたりという印象がありますが、公式サイトの参加作家の作品を見ると食わず嫌いは勿体無いと思わせる作品ばかりです。

20131226_rise2Rone
オーストラリア、メルボルン出身。壁面全体を使って描かれる女性の顔が特徴で、作家の公式ページで紹介されている作品も多くが女性の顔のアップがモチーフになっています。
作家公式ページ

20131226_rise3Roa
ベルギー出身。その特徴はグレースケールで描く、その地域に関連する動物作品。左の画像のように、建築物の構造も構図に取り入れた作品は、近隣の住民からも高い評価を得ているそうです。イギリスでは、彼の作品を消そうとした役所に近隣住民からの抗議が殺到したこともあるとか。
作家公式ページ

20131226_rise4Vans the Omega
オーストラリア、アデレード出身。ストリートアーティストとして20年以上に渡って活動を続けており、2000年以降は常に世界各地を回り活動中。特筆すべきはスプレー缶を用いた描写の正確さで、フリーハンドだとは思えない精度の真円や直線で作品を描き出しています。
作家公式ページ

20131226_rise5Anthony Lister
オーストラリア、ブリスベン出身。2001年にクイーンズランド美術大学を卒業後、ニューヨークに渡り、そこでニュージーランド屈指の作家であるマックス・ギンブレット(Max Gimblett)に学んだ経歴を持ちます。作品の特徴は壁画、絵画、立体を問わず、全ての作品にどこかしら薄汚れた、綺麗なだけではない部分が存在すること。
作家公式ページ

20131226_rise6BMD
ニュージーランド、タラナキ出身のコンビで、現在はウェリントンを拠点としています。作品は壁画が大半ですが、その作品は一面だけに留まらず、複数の面を用いることで立体的な作品を作り出しています。詳しくは作家公式ページの"RECENT"をご覧ください。
作家公式ページ

20131226_rise7BEASTMAN
オーストラリア、シドニー出身。アステカ文化とステンドグラスが融合したかのような、「目」とそれを取り巻く生物的なパターンが作品の特徴。地元オーストラリアに留まらず、イギリス、アメリカ、ドイツ、香港などワールドワイドに活動中。
作家公式ページ

綿貫さんに最初に話を振られて半年、毎回ワタワタし通しでしたが、どうにか半年連載を続けることが出来ました。
来年もときの忘れものでは扱わないような、趣味に走った展覧会をご紹介できれば思います。

それではお付き合い下さった皆様、どうぞよいお年を。

(しんざわ ゆう)

Canterbury Museum公式サイト:http://www.canterburymuseum.com
展覧会詳細ページ:"RISE"

●冬季休廊のお知らせ
ときの忘れものは12月29日(日)~2014年1月6日(月)まで冬季休廊いたします。