スタッフSの海外ネットサーフィン No.9
「Sensing Spaces: Architecture Reimagined」

Royal Academy of Arts


東京にまさかの二回の降雪で、都心部はともかく周辺地区は未だインフラが深刻なダメージを負っている中、皆様いかがお過ごしでしょうか。スタッフSこと新澤です。
自分は雪に困ったのは降った当日とその翌日程度でしたが、代わりに風邪でダウンしてしまい、近所の方々が雪かきに精を出す中、寝床でウンウン唸っていました。

そんな前置きとはまったく関係なく、今回紹介するのはイギリス、ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツです。ロンドンの中心部、ピカデリーにある国立芸術学校。名前こそ王立芸術院と訳されますが、実際に王室や政府から支援を受けているわけではありません。かつてはバーリントンという貴族の邸宅だった建物を利用して1769年に開校、学術機関ながら、主な収入源の一つとして、ナショナル・ギャラリーやテート・ギャラリーなどに匹敵する質の高さの美術展を開催していることで有名です。2004年からは企画展だけでなく、常設展も開催しています。

Royal Academy of Arts

ちなみに自分のロイヤル・アカデミー・オブ・アーツに関する思い出はあまり良いものではありません。自分が初めてロイヤル・アカデミー・オブ・アーツに行ったのは、1997年の"SENSATION"展でした。学校の課題で見に行ったのですが、この"SENSATION"展というのが当時の英国美術界に物議を醸していたヤング・ブリティッシュ・アーティスト達によるものであり、中でも大きく取り扱われていたのがダミアン・ハーストだったからです。正中線から真っ二つにされた豚の標本などなら目を背けることが出来る分まだマシというもので、出口に至る唯一の通路の端から端まで輪切りにされた二等の牛を互い違いに展示しなくてもいいじゃないかと(つまり出口に向かうには、輪切りのモツの間を通らなければいけない)、当時はかなり真剣に作家とキュレーターを恨みました。これとは別に、この展覧会でもう一つ自分の記憶に強く根付いているのがマーカス・ハーヴェイの「マイラ」です。実の所、自分はこの作品の実物をみたことはありません。作品の内容はイングランド北部の連続男児誘拐殺人事件の主犯であるマイラ・ヒンドリーの肖像を描いたものですが、かなりの大きさの作品で、遠目にも良く見える作品です。で、近くによって見てみると、肖像を構成しているのは幼い子供の手形という、シニカルさで知られる英国人にしてもちょっと笑えない一品です。実際この作品はオープニングの時点で互いに無関係の人間に二回襲撃され、即日撤去されたという経歴があります。世界中から注目を集めるという点においてはこれ以上ない成果を出したといえる展覧会でしたが、自分と周りにしてみると、「こんな事してまで注目されたいとか必死すぎるだろ…」と、不快感を通り越して呆れていました。

そのような悪しき記憶は横に置いておいて、このロイヤル・アカデミー・オブ・アーツで現在開催中なのが「Sensing Spaces: Architecture Reimagined」。
期間は1月25日から4月6日まで。一般入場は£14.00から。

Sensing Spaces: Architecture Reimagined

"Seven architectural practices from six countries and four continents. 23,000 square feet. 72 days. One monumental exhibition."
「72日間、23,000平方フィートに展開する4つの大陸、6つの国からの7つの建築術の実践。これは1つの記念碑的展覧会だ」

(公式ホームページより)


Sensing Spaces: Architecture Reimagined

壁に作品が展示されているわけではなく、展覧会会場そのものが、そして来場者自身を作品の一部として捉えた、スケールの大きさでは中々お目にかからない展覧会です。構造体の見た目、質感、ライティング、色に香りに至るまで、あらゆるファクターを用いて、来場者に新たな視点を提供し、建築が何を感じさせるのか、人生にどう影響するのかを考えることに導きます。

Sensing Spaces: Architecture Reimagined

You are as much a part of this exhibition as the work itself – invited to touch, climb, walk, talk, sit, contemplate - reimagine the world around you.
貴方は作品同様にこの展覧会の一部です ― 触り、登り、歩き、話し、座り、考え ― 貴方の周りの世界を再想像してください。

(公式ホームページより)


(しんざわ ゆう)
Royal Academy of Arts公式サイト:http://www.royalacademy.org.uk/
“Sensing Spaces: Architecture Reimagined”:http://www.royalacademy.org.uk/exhibitions/sensingspaces/