スタッフSのアートフェア東京2014レポート3 ~作品紹介編2~


スタッフSこと新澤が送るアートフェア東京2014レポートの第三回にして最終回は、昨日に続いてフェア出展作品のご紹介です。お時間のある方はお付き合いくだされば幸いです。
nca nichido contemporary art(東京)
ヴィック・ムニーズ Vik Muniz
"Outlet (Fabrica, iron mine)"
2005
ゼラチンシルバープリント
大地に描かれた巨大な電源プラグのアイコン。昨今ではCGを使えば簡単に出来上がる画像ですが、こちらはなんと100%アナログ、廃坑となった鉱床を重機で掘り起こして形を作り、それを上空から撮影しています。制作当時は衛星写真で確認できたというのですからいやはや…現代版ナスカの地上絵ですね。
ヴィック・ムニーズ Vik Muniz
"Cloud Cloud, 59th Bridge"
2002
ゼラチンシルバープリント
空の上に描かれた雲のアイコン。流石に土を掘るように空間に跡を残せるわけではないし、チョークか何かをプリントの表面に走らせたものだろうと想像していたのですが、甘かったです。なんと飛行機を飛ばして、飛行機雲でこの形を中空に描かせたというのですから驚きです。
藝大若手アーティスト
繭山桃子
《あけ/Dawn》
紙本、岩絵具、金箔、金泥、墨、染料
パッと見昔ながらの浮世絵かと思いきや、寄って見ると随分モダンな風景が抽象的に描かれており、しかし画風も相まって古くも見え…と個人的に不思議な感覚を味合わせてくれる作品です。何となく70年代SF短編集の表紙に似合いそう、などと思いました。
秀友画廊(東京)
はがいちよう
《我が青春の地池袋》
ミクスドメディア
今回の新澤イチオシ作品。昔ながらの都会の日本民家のジオラマですが、とにかく作りこみがスゴイです。お値段もスゴイですが、この細かさならそれも納得できるというもの。
裏側から見ると、室内も異様なレベルで再現されています。漫画の原稿が机の上にありますが、手塚治虫や赤塚不二夫が作業していても違和感がないです。
新生堂(東京)
祝迫芳郎
《BAN-KEN ~チワワ・豹柄~》
ミクスドメディア
物々しい衣装を着込み、見るものに物騒な銃器を構えるも、持ち前の可愛らしさ故に欠片も危険に見えない番犬達のシリーズ作品です。ですが、長く見ていると可愛らしくも堂々と銃を向けるその姿に一種の狂気を秘めているように思えてくるのは自分の考えすぎでしょうか。
祝迫芳郎
《BAN-KEN ~パグ・警察犬~》
ミクスドメディア
祝迫芳郎
《BAN-KEN ~トイプードル・バズーカ~》
ミクスドメディア
祝迫芳郎
《BAN-KEN ~シーズー・警察犬~》
ミクスドメディア
万画廊
大森暁生
"Eagle's hearts"
2014
檜、漆、金箔、彩色、鉄
兜をかぶった小さなヒヨコ、しかしその内側には荒鷲の心が…といった作品。漫画的手法ですが、三次元でそれを表現されると思わず「ほぅ」と見入ってしまいます。しかし何故に角突き兜なのか…
GALLERY エクリュの森(静岡)
明田一久
《僕はスパイなんダー -I'm a Spy-der-》
2014
黒御影石、真鍮
昨年のART NAGOYA 2013レポートでもご紹介した作家様の新作です。相変わらずの造形のラブリーさもさることながら、今回はタイトルに思わずニヤリ。こういうセンス、大好きです。
小宮山書店(東京)
ジョン・ハザウェイ
《反重力商店街 Anti-gravity Shopping Street》
2006
ジークレー(インクをダイレクトに版画紙やキャンバスに吹き付ける、コンピュータ技術を使った版画技法)
大きさを除けば良くある漫画イラストなのですが、作者の背景を聞くと途端に興味深くなった作品です。まずジョン・ハザウェイと聞くといかにも西洋人っぽいのですが、日本人です。で、次にUFOを作りたいがために東大に入学したそうです。この時点で「ん?」となります。
そこから何がどう転んで絵画活動に勤しむ様になったのかは分かりませんでしたが、ものすごく妙な方向に努力を惜しまない人だという印象を受けました。というのも、紹介している作品はPCの画像編集ソフトの大御所「Photoshop」で作られているそうですが、なんとこの作品、データ上に4000枚ものレイヤーがあるのだとか。で、Photoshopに4000ものレイヤーを処理する機能はありません。普通ならここでレイヤーの数を減らすなどという人間側の妥協で対処をするものですが、この人の場合は、理系知識を駆使してプログラムが4000のレイヤーを扱えるように改変したというのですからなんともはや…世の中にはスゴイ人がいるものです。
他にも気になる作品は数多くあったのですが、残念ながら撮影許可、或いはブログ掲載許可が下りませんでした、無念です。
以上で今回のフェアレポートは終了でございます。
相変わらず、というか最近居直ってますますチョイスが偏ってきましたが、楽しんでいただけましたでしょうか?
それでは、今月末のスタッフSの海外ネットサーフィンでまたお会いしましょう。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
(しんざわ ゆう)
*画廊亭主敬白
瑛九、瀧口修造、細江英公、井桁裕子、秋葉シスイというラインナップで臨んだ「アートフェア東京2014」は昨日17時、盛況のうちに終了いたしました。
先ずは、ご来場いただいた皆さん、大枚はたいて作品をお買いあげ下さったお客様には、心より御礼を申し上げます。
Hさん、Aさん、AYさんはじめ差し入れのお菓子もたくさんいただき、立ちっ放しのスタッフのエネルギー源になりました。
事務局の皆さん、ご苦労さまでした。
ともに出展した画廊の皆さん、お疲れさまでした、お世話になりました!
いつものことながら150もの画廊が競い合うアートフェア、優勝劣敗は世の常とはいえ、やはり売れないのは辛い。笑っても顔がひきつる、ということも多々ありましたが、おかげさまで今回は何とかスタッフ全員笑顔で搬出作業を終えることができました。
私どもの出展を知らずに来場されたUさんが「えー!どうしたの。ときの忘れものがアートフェア東京に出展するなんてありえない!」と叫んだように、今回の出展を意外に思われた方も多いようでした。
NICAFに出展して以来、実に11年ぶりの有楽町でしたが、配置されたブースのまん前が西村画廊さん、右隣が名古屋画廊さん、左隣が双ギャラリーさんという名だたる老舗画廊、それぞれのオーナーは著書もある論客のベテラン画商です。いやブースの配置図を見たとき「どうしよう」と思いました。

中途半端なものでは負けてしまう、ときの忘れものとしてアピールするには瑛九しかない、それも超のつく名作を。最晩年の点描大作「林」は立派にブースナンバー:L13の旗艦を努めてくれたようです。
亭主は、青山をほとんど出たことがない、銀座や有楽町など年に数回しか足を向けることはない。
それが連続4日間、5万人もの来場者に向き合うはめになりましたが、「もしかしたら、現代版画センターのワタヌキさん?」と声をかけられることがしばしば、まるで40年ぶりの同窓会の趣でありました。
いただいた名刺の束の整理が明日からの仕事です。
またこれも予想外だったのは、見知らぬ若い画商さんたちがわざわざ私どものブースまでいらして「ブログをいつも読んで、勉強させていただいています」と、口々におっしゃったことです。
いや知らなんだ、こんなロートルの書くことを、常連のお客様ばかりではなく、普段付き合いのない若い画商さんまでも読んでくださっていたなんて、ありがたいことです。
ときの忘れものには「秋葉シスイ、不敗伝説」というのがあります。
今回井桁裕子さんとともに、ときの忘れものの若きエースとして出品参加した秋葉さんは、2007年のフタバ画廊での初個展以来、出品したグループ展、アートフェアなど全ての展覧会で作品が売れています。売れなかったことはただの一度もない。
今回もオープニングで早々に常連のIさんから売約が入り、伝説はさらに輝きを増しました。
二日目にいらした海外からの女性は、あきらめ切れなくて(好きな方が売れてしまっていたので)他にないかと翌日道に迷いながら青山の画廊まで訪ねてこられました。
まだまだ書きたいこともありますが、このページはスタッフSの担当。好評の新澤節の邪魔をしちゃあいけませんね。
重ねて、ご来場の皆さんに御礼を申し上げる次第です。ありがとうございました。
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●本日のウォーホル語録
「幻想の愛は現実の愛よりはるかに良い。それをしないことはとてもエキサイティングだ。最も強烈な魅惑は、決して出会うことのない2人の間に存在する。
―アンディ・ウォーホル」
ときの忘れものでは4月19日~5月6日の会期で「わが友ウォーホル」展を開催しますが、それに向けて、1988年に全国を巡回した『ポップ・アートの神話 アンディ・ウォーホル展』図録から“ウォーホル語録”をご紹介して行きます。
『ポップ・アートの神話 アンディ・ウォーホル展』図録
1988年
30.0x30.0cm
56ページ
図版:114点収録
価格:3,150円(税込)※送料別途250円
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スタッフSこと新澤が送るアートフェア東京2014レポートの第三回にして最終回は、昨日に続いてフェア出展作品のご紹介です。お時間のある方はお付き合いくだされば幸いです。
nca nichido contemporary art(東京)

"Outlet (Fabrica, iron mine)"
2005
ゼラチンシルバープリント
大地に描かれた巨大な電源プラグのアイコン。昨今ではCGを使えば簡単に出来上がる画像ですが、こちらはなんと100%アナログ、廃坑となった鉱床を重機で掘り起こして形を作り、それを上空から撮影しています。制作当時は衛星写真で確認できたというのですからいやはや…現代版ナスカの地上絵ですね。

"Cloud Cloud, 59th Bridge"
2002
ゼラチンシルバープリント
空の上に描かれた雲のアイコン。流石に土を掘るように空間に跡を残せるわけではないし、チョークか何かをプリントの表面に走らせたものだろうと想像していたのですが、甘かったです。なんと飛行機を飛ばして、飛行機雲でこの形を中空に描かせたというのですから驚きです。
藝大若手アーティスト

《あけ/Dawn》
紙本、岩絵具、金箔、金泥、墨、染料
パッと見昔ながらの浮世絵かと思いきや、寄って見ると随分モダンな風景が抽象的に描かれており、しかし画風も相まって古くも見え…と個人的に不思議な感覚を味合わせてくれる作品です。何となく70年代SF短編集の表紙に似合いそう、などと思いました。
秀友画廊(東京)

《我が青春の地池袋》
ミクスドメディア
今回の新澤イチオシ作品。昔ながらの都会の日本民家のジオラマですが、とにかく作りこみがスゴイです。お値段もスゴイですが、この細かさならそれも納得できるというもの。

新生堂(東京)

《BAN-KEN ~チワワ・豹柄~》
ミクスドメディア
物々しい衣装を着込み、見るものに物騒な銃器を構えるも、持ち前の可愛らしさ故に欠片も危険に見えない番犬達のシリーズ作品です。ですが、長く見ていると可愛らしくも堂々と銃を向けるその姿に一種の狂気を秘めているように思えてくるのは自分の考えすぎでしょうか。

《BAN-KEN ~パグ・警察犬~》
ミクスドメディア

《BAN-KEN ~トイプードル・バズーカ~》
ミクスドメディア

《BAN-KEN ~シーズー・警察犬~》
ミクスドメディア
万画廊

"Eagle's hearts"
2014
檜、漆、金箔、彩色、鉄
兜をかぶった小さなヒヨコ、しかしその内側には荒鷲の心が…といった作品。漫画的手法ですが、三次元でそれを表現されると思わず「ほぅ」と見入ってしまいます。しかし何故に角突き兜なのか…
GALLERY エクリュの森(静岡)

《僕はスパイなんダー -I'm a Spy-der-》
2014
黒御影石、真鍮
昨年のART NAGOYA 2013レポートでもご紹介した作家様の新作です。相変わらずの造形のラブリーさもさることながら、今回はタイトルに思わずニヤリ。こういうセンス、大好きです。
小宮山書店(東京)

《反重力商店街 Anti-gravity Shopping Street》
2006
ジークレー(インクをダイレクトに版画紙やキャンバスに吹き付ける、コンピュータ技術を使った版画技法)
大きさを除けば良くある漫画イラストなのですが、作者の背景を聞くと途端に興味深くなった作品です。まずジョン・ハザウェイと聞くといかにも西洋人っぽいのですが、日本人です。で、次にUFOを作りたいがために東大に入学したそうです。この時点で「ん?」となります。

他にも気になる作品は数多くあったのですが、残念ながら撮影許可、或いはブログ掲載許可が下りませんでした、無念です。
以上で今回のフェアレポートは終了でございます。
相変わらず、というか最近居直ってますますチョイスが偏ってきましたが、楽しんでいただけましたでしょうか?
それでは、今月末のスタッフSの海外ネットサーフィンでまたお会いしましょう。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
(しんざわ ゆう)
*画廊亭主敬白
瑛九、瀧口修造、細江英公、井桁裕子、秋葉シスイというラインナップで臨んだ「アートフェア東京2014」は昨日17時、盛況のうちに終了いたしました。
先ずは、ご来場いただいた皆さん、大枚はたいて作品をお買いあげ下さったお客様には、心より御礼を申し上げます。
Hさん、Aさん、AYさんはじめ差し入れのお菓子もたくさんいただき、立ちっ放しのスタッフのエネルギー源になりました。
事務局の皆さん、ご苦労さまでした。
ともに出展した画廊の皆さん、お疲れさまでした、お世話になりました!
いつものことながら150もの画廊が競い合うアートフェア、優勝劣敗は世の常とはいえ、やはり売れないのは辛い。笑っても顔がひきつる、ということも多々ありましたが、おかげさまで今回は何とかスタッフ全員笑顔で搬出作業を終えることができました。
私どもの出展を知らずに来場されたUさんが「えー!どうしたの。ときの忘れものがアートフェア東京に出展するなんてありえない!」と叫んだように、今回の出展を意外に思われた方も多いようでした。
NICAFに出展して以来、実に11年ぶりの有楽町でしたが、配置されたブースのまん前が西村画廊さん、右隣が名古屋画廊さん、左隣が双ギャラリーさんという名だたる老舗画廊、それぞれのオーナーは著書もある論客のベテラン画商です。いやブースの配置図を見たとき「どうしよう」と思いました。

中途半端なものでは負けてしまう、ときの忘れものとしてアピールするには瑛九しかない、それも超のつく名作を。最晩年の点描大作「林」は立派にブースナンバー:L13の旗艦を努めてくれたようです。
亭主は、青山をほとんど出たことがない、銀座や有楽町など年に数回しか足を向けることはない。
それが連続4日間、5万人もの来場者に向き合うはめになりましたが、「もしかしたら、現代版画センターのワタヌキさん?」と声をかけられることがしばしば、まるで40年ぶりの同窓会の趣でありました。
いただいた名刺の束の整理が明日からの仕事です。
またこれも予想外だったのは、見知らぬ若い画商さんたちがわざわざ私どものブースまでいらして「ブログをいつも読んで、勉強させていただいています」と、口々におっしゃったことです。
いや知らなんだ、こんなロートルの書くことを、常連のお客様ばかりではなく、普段付き合いのない若い画商さんまでも読んでくださっていたなんて、ありがたいことです。
ときの忘れものには「秋葉シスイ、不敗伝説」というのがあります。
今回井桁裕子さんとともに、ときの忘れものの若きエースとして出品参加した秋葉さんは、2007年のフタバ画廊での初個展以来、出品したグループ展、アートフェアなど全ての展覧会で作品が売れています。売れなかったことはただの一度もない。
今回もオープニングで早々に常連のIさんから売約が入り、伝説はさらに輝きを増しました。
二日目にいらした海外からの女性は、あきらめ切れなくて(好きな方が売れてしまっていたので)他にないかと翌日道に迷いながら青山の画廊まで訪ねてこられました。
まだまだ書きたいこともありますが、このページはスタッフSの担当。好評の新澤節の邪魔をしちゃあいけませんね。
重ねて、ご来場の皆さんに御礼を申し上げる次第です。ありがとうございました。
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●本日のウォーホル語録
「幻想の愛は現実の愛よりはるかに良い。それをしないことはとてもエキサイティングだ。最も強烈な魅惑は、決して出会うことのない2人の間に存在する。
―アンディ・ウォーホル」
ときの忘れものでは4月19日~5月6日の会期で「わが友ウォーホル」展を開催しますが、それに向けて、1988年に全国を巡回した『ポップ・アートの神話 アンディ・ウォーホル展』図録から“ウォーホル語録”をご紹介して行きます。

1988年
30.0x30.0cm
56ページ
図版:114点収録
価格:3,150円(税込)※送料別途250円
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