昨夜の「葉栗剛展」のギャラリートーク、レセプションにはたくさんの方々においでいただき、ありがとうございました。その様子は近々、レポート担当の新澤からご報告させますのでお楽しみに。
本日(日)も明日(月)も画廊は開いていますので、ぜひお出かけください。
作家も在廊しています。

亭主が画商になって以来40年、追いかけてきた作家は、瑛九を筆頭に、オノサト・トシノブ駒井哲郎戸張孤雁恩地孝四郎をはじめとする創作版画、などなどですが、「追いかけ」ることが可能だったのはそれを購入してくださるお客様がいたからです。
いくら画商がこれぞとほれ込んでも、それを買って下さる客がいなければ仕事にはならない。
以前、世紀の大発掘と威張って紹介した駒井哲郎の木版画がありました。
「駒井哲郎を追いかけて」第27回28回でその顛末は紹介しました。

あのとき、駒井先生が河田清史著『象とさるとバラモンとーインドの昔話―』の挿絵として制作したものに、別の飾り縁を加えて単独作品として完成させたものを入手したわけですが、こういうものを作ったのなら、他にもまだあるのではないかと亭主は推測していました。
先日、亭主のブログを読んだある方が「私も駒井先生のものだと言われて30年前に木版を入手したが、いまひとつ確信が持てなかった。ところが綿貫さんのブログを読んで、やはり駒井先生のものだったかと得心しました」といって、下に掲げた木版画をもっていらっしゃいました。
間違いなく、駒井先生の挿画シリーズの飾り縁と同じスタイルの木版です。コンディションもよく、手彩色もされています。
20140422木版画v2
駒井哲郎
『ラーマーヤナ』より
「ラーバナの立腹」

木版画+手彩色
イメージサイズ:28.0×20.2cm
シートサイズ :34.5×27.2cm

驚きました。推測していたものがあちらから飛び込んできたのですから。
最初は本の挿絵として制作したものに、別の飾り縁を加えて単独作品として完成させたものがこれで3点見つかったことになります。

もとの挿絵のことも直ぐに亭主の駒井文庫をひっくりかえして判明しました。
20140422木版画書籍掲載版
河田清史・著
『ラーマーヤナ(上)
●インド古典物語』
1971年
第三文明社

20140422木版画書籍掲載版2
同書P.135
駒井哲郎
「ラーバナの立腹」扉絵

レグルス文庫の河田清史著『ラーマーヤナ(インド古典物語)』(上下二巻 1971年)は、駒井資料として私がずいぶん前に入手していたのですが、実は前書きともいうべき3~6ページの「この大切な物語りについて」という文章の重要な一節を見落としていたことに今回気づきました。

<この本が、はじめて刊行されたのは、戦時中でした。そして二十二年前にも再版されました。こんどが三度目であります。この長いあいだ、駒井哲郎画伯は挿絵の版木をだいじにしまっておいてくれました。幸いなことです>。(以下略)
同書5~6ページ

二十二年前というのは、福村書店から昭和25年に刊行された『印度古典童話ラーマーヤナ』のことだと調べがついたのでさっそく古本屋さんでゲット!
名称未設定-10
河田清史・著
『印度古典童話集
ラーマーヤナ』
1950年
福村書店

名称未設定-14
同署P.107
駒井哲郎
「ラーバナの立腹」扉絵

しかし最初の版<戦時中>の刊行物については、いまのところ不明で、国会図書館で探すしかないでしょうね。
なんとしても確認したいと考えているのですが、もし最初(戦時中)の版にも駒井先生の挿絵が入っているとすれば、今まで不詳だった駒井先生の戦時中の制作活動が解明されるきっかけになるでしょう。

まだまだ「駒井哲郎を追いかけて」の旅は続きそうです。