JR九州のPRプリーズが瑛九を特集していましたのでお送り致します。
瑛九展も25回になり驚きです。栃木県美でも久保コレクションの記事が日経に出ていました。
いつまでも永遠の作家ですね。
健康に気をつけていつまでも。

(Kさんからの書簡より)
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現代版画センター時代の同僚で故郷の九州に帰り画廊をやっているKさんが雑誌『プリーズ』を送ってくれました。
4ページにわたり瑛九を特集しており、久保貞次郎先生のことも紹介されています。

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瑛九が主導して結成したデモクラート美術家協会はそもそもは関西が発祥です。このことは意外に知られていません。
「デモクラート」とはエスペラント語で「民主主義者」の意味。
同会は森啓、早川良雄、泉茂、瑛九らによって1951年大阪で結成されました。
翌年3月東京在住の加藤正らの尽力で「東京デモクラート展」が開催され、以後大阪と東京そして瑛九の郷里宮崎を拠点にさまざまな活動を展開していきます。詳しくは別の機会に譲りますが、多くの才能ある作家が集まり、1957年の第1回東京国際版画ビエンナーレにはデモクラートの会員から多くの入選者が出て、泉茂が新人賞を受賞します。
このことが一つのきっかけとなり、「デモクラート」が一つの権威になることをおそれた瑛九は、同会の解散を決めます。1957年6月靉嘔の起草した「解散宣言」によって7年間の活動を終えたのでした。
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◆久保貞次郎のエッセイ~泉茂(1957年執筆)

新鮮な石版画家 泉茂

久保貞次郎

 泉茂は油絵でまずその率直さを示して、われわれに力強い刺激を与えた。つぎに銅版画で独得なデリケートなセンスをもって、親しみやすい数多くの作品をつくった。ところが、かれはこんどはリトグラフィーに手をつけた。ぼくは、かれの技術に対する熱狂ぶりを知っているので、ひそかに期待をいだいていた。最近、ぼくの手もとにおくられてきた十数点の石版画は、はたせるかな、ぼくの期待を裏切らなかった。いや、それ以上、かれの石版は、日本の石版画の分野に新鮮な空気をふきこんだというべきである。かれの単色のリトグラフィーは、細密描写でカードのようなものをかいて、そのこまかな部分まで省略していない。ヨーロッパでも、こんなに細密描写による石版画は珍しい。それでいて芸術的香りがただよっている。多色のリトでは、ますますこの画家の個性が発揮されている。こまかな部分の色わけが、印刷のずもれ(ママ)なくキチンと刷られているのには驚く。しかも豊かな感情があふれ、泉茂独得の市民的親しみ深さが画面ににじみでている。石版を駆使してこんなにも個性を発揮できるのは、この画家が独創的だからである。この泉茂のリトグラフィーは、石版の伝統的観念に束縛されていないからすばらしい。かれは、まさに日本の石版画界に反逆の旗をうちたてた。その旗はあざやかに空にひるがえり、未来に希望をいだくひとびとは、遠くからその旗を指すことができる。この泉茂のリトグラフィーを支持するひとびとは、芸術を心から愛するひとびとである。諸君はみずからが新しい芸術の道をきりひらくのに協力しつつあることを誇るべきである。
くぼ さだじろう
(一九五七年 泉茂リトグラフィー集)
『久保貞次郎 美術の世界2 瑛九と仲間たち』(叢文社、1985年)より転載

第25回 瑛九展 瑛九と久保貞次郎」出品作品を順次ご紹介します。
泉茂出品No.35)
泉茂
「(作品)」
銅版
23.8x18.2cm
Signed

izumi_02_work出品No.36)
泉茂
「作品」
リトグラフ
47.5x64.0cm
Ed.100 Signed

izumi_04_work出品No.37)
泉茂
「作品」
アクリル
14.0x18.3cm
Signed

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07左から桂ゆき、泉茂、靉嘔

瑛九関係の文献資料コチラをご参照ください。
画廊では久保先生の著書を会期中のみの特別価格で頒布しています。

◆ときの忘れものは2014年6月11日[水]―6月28日[土]「第25回 瑛九展 瑛九と久保貞次郎」を開催しています(*会期中無休)。
DM
大コレクター久保貞次郎は瑛九の良き理解者であり、瑛九は久保の良き助言者でした。
遺された久保コレクションを中心に、瑛九と時代を共にし、久保が支持した作家たちー北川民次、オノサト・トシノブ、桂ゆき、磯辺行久、靉嘔、瀧口修造、駒井哲郎、細江英公、泉茂、池田満寿夫らの油彩、水彩、オブジェ、写真、フォトデッサン、版画などを出品します。
また5月17日に死去した木村利三郎の作品を追悼の心をこめて特別展示します。