「難波田龍起の愛した作家たち」展には、生前難波田先生のアトリエに飾られていた作品を出品しています。
少し前まではボーナス時期の「セール」やテーマをもった「オークション」を年に一二度開催していたのですが、ここ数年は他の企画に追われたこともあってお休みでした。
珍しい作品などを破格の値段で買える機会を楽しみにしている方も多く、今回久しぶりの入札による売りたてとなりました。
入札締切りは明後日7月26日(土)17時必着です。
いまのところ画廊に来られて入札されていく方が圧倒的で、以前と違いメールやファックスでの入札が少ない。締切りぎりぎりに送られてくるのかもと思ったりしているのですが、ふと気づいたのは、今回は一般にはあまり名前の知られていない作家やときの忘れものが扱ったことのない作家が多く、それもタブローが多い。
いわゆる名作版画や画集や雑誌、カタログなどで見慣れた作品の場合、実物をご覧にならなくても(特に地方在住の方)気軽に入札できたのに、今回は勝手が違うのかも知れません。
「成り行き」に関しても、いったいいくらくらい入れたらいいのか戸惑っていらっしゃる方も多く、想定外でした(反省)。
まだ締切りまで三日ありますので、不明な点は遠慮なくお問い合わせください。

出品作品の中から今までときの忘れものでは扱ったことのない3人、菅創吉小山田二郎菅野陽の作品をご紹介しましょう。

画家には珍しく早稲田に学び、その後も美術学校でのアカデミックなエリートたちとは異なる道を歩んだ難波田先生ですが、菅、小山田の二人は若い頃から画家を志しますが家庭の事情や親の反対にあって、紆余曲折を経ながら独自の画境を切り開いた作家です。
菅野陽は東京美術学校で日本画を学び、その後銅版画に転じた異色の作家で、初期洋風版画を研究者としても著名です。亭主も若い頃、お目にかかり秋田蘭画などについてご教示を受けました。

16出品No.16)
菅創吉
「無題」
油彩
39.1x19.3cm
Signed

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■菅創吉 Sokichi SUGA(1905-1982)
1905年兵庫県に生まれる。本名、彼末巳之助(かのすえみのすけ)。
美術学校進学を志すが家庭の事情から叶わず、姫路で日本画家秋吉蘇月に師事する。20歳のときに上京。独学で創作活動を重ね、1933年の満洲鉄道広報部入社を機に単身中国に渡り、広報業務の一方で制作と発表を続ける。戦後再び上京し、毎日新聞嘱託の画家として活動する。
1963年58歳のときに渡米し、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨークで制作と発表を重ね、東洋性とユーモアのある作品で高い評価を得る。1972年に帰国後も精力的に活動していたが、1982年の池田20世紀美術館における回顧展会期中に亡くなった。
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11出品No.11)
小山田二郎
「夜」
1983年 水彩
37.0x27.0cm
Signed

12出品No.12)
小山田二郎
「夏の花」
1986年 水彩
29.0x38.0cm
Signed

■小山田二郎 Jiro OYAMADA(1914-1991)
1914年中国安東県に生まれる。1919年遠縁の日本画家・小堀鞆音から透明水彩を学び始める。画家を夢見るが父の強い反対にあい、1934年帝国美術学校図案科(現・武蔵野美術大学)に入学。1935年父に内緒で西洋画科へ転入するが、翌年それを父に知られたことで援助を絶たれ、中退を余儀無くされる。1945年空襲で千駄ヶ谷のアパートが全焼、描き貯めた全作品を失う。1959年に詩人で美術評論家である瀧口修造の推薦で油彩大作展(東京画廊)を開催。1960年代には府中市にアトリエを構え、失踪までの10年間を過ごす。
空想の世界に生きる異形のものたちや自己の内面を描くその世界は、迫力を持ちながら時にユーモアをも含んでいる。
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17出品No.17)
菅野陽
「バベルの塔」
1961年
リフトグランドエッチング、アクアチント
35.5x29.5cm
Ed.2/50  Signed

18出品No.18)
菅野陽
「まり」
1964年
銅版
41.5x41.0cm
Ed.6/50  Signed

19出品No.19)
菅野陽
「伴奏」
1964年
銅版
42.5x57.0cm
Ed.6/50  Signed

20出品No.20)
菅野陽
「見える見える」
銅版
36.0x30.0cm
A.P.  Signed

■菅野陽 Yo SUGANO(1919-1995)
1919年台湾に生まれる。本名、陽太郎。東京美術学校で日本画を学ぶ。始め前衛美術協会展などに油彩画を発表していたが、戦後銅版画に転じる。1955年日本版画協会展に出品し翌年同会会員になる。東京国際版画ビエンナーレ展などで日本を代表する銅版画家として活躍する。エッチング、アクアチント、サルファチントなどの腐食技法を駆使した繊細且つ大胆な作風で知られる。銅版画技法書の著者もあり、また初期洋風版画を研究し、1958年には『江戸の銅版画』を刊行するなど研究者としても著名である。

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◆ときの忘れものは「難波田龍起の愛した作家たち」展を開催しています。
会期=2014年7月16日[水]―7月26日[土] 
12:00-19:00 ※会期中無休
252_Nambata難波田龍起先生(1905~1997)が生前コレクションし、アトリエに飾っていた50点の作品を入札方式で頒布します。