ウイリアムスバーグ市で「吉田遠志展 “Tree to Mountain”」

吉田隆志


米国バージニア州にあるウイリアム&マリー・カレッジのマスカレール美術館が主催する「Visual Culture of East Asia」で私の父の「吉田遠志展“Tree to Mountain”」が開催されています(2015年2月8日まで)。
オープニング・レセプションでは、200人程の前でギャラリー・トークまでさせていただきました。

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展覧会は北村洋教授のキュレーティングのもと素晴らしい展覧会に仕上げられていました。
摺り順を見せた版木の展示に加え、会場中央では日本の伝統的な版画や創作版画と呼ばれる版画家が自分自身で制作する木版画について、また福井県に代表される鳥の子の紙漉きなどを紹介するビデオを上映しました。
そして吉田遠志の刀の使い方を捉えた私の写真、更に吉田が晩年特に力を入れていた野生動物の絵本の展示までと、素晴らしい内容になったと思います。

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そもそも本展が実現するに至ったのは、吉田遠志の代表作であるアフリカ・シリーズの木版画「バオバブの木と犀」を寄贈された大学側が著作権の使用許諾を求めて来た事がきっかけです。これを縁にウイリアム&マリー・カレッジと吉田家との交流は始まりました。
展覧会が完成するまでの間、何度も連絡を取りながら展示の組み立てについてやり取りをし、その中で吉田遠志の制作の様子を捉えた写真や、一枚の木版画を完成させる過程の説明、実物の桜の板から彫った版木も会場で展示したいなど、幾つものリクエストがありました。

0x24吉田遠志
「銀閣」
1951年
37.0x24.0cm


0x38吉田遠志
「ハバナの古い町」
1954年
25.0x38.0cm


0x49吉田遠志
「三分咲き」
1970年
30.0x49.0cm


5cm吉田遠志
「バオバブの木と犀」
1979年
74.7x61.5cm


0x24吉田遠志
「サンフランシスコ」
1985年
37.0x24.0cm


8吉田遠志
「ある日の東アフリカNo.3」
1991年
26.8x59.8cm


大学には各種版画の制作が出来るプリントメーキングの工房もあり、学生や子供たちのための版画制作体験が出来るワークショップまで開催されたそうです。講師は美術学部のBrian Kreydatus講師で、「子供たちや学生にとって、プリントを創作する貴重な機会となり、イベントは大成功でした。」との感想もいただきました。

11月14日には、日本の新版画をアメリカで初めて紹介したキュレイターKen Brown教授(南カリフォルニア大学)の講演があり、父・吉田遠志と祖父・吉田博の芸術について比較を交えて話されたそうで、今回の展覧会にとても役立つコンテクストを与えて下さりました。

美術展の方はその後も好評で、学生をはじめ一般人からコレクターまで、さまざまな方に観ていただいているようです。
「吉田家の美術の話を聞いて刺激を受けたコレクターからも作品購入希望のメールが届いています。」と、展覧会担当の北村教授からご報告を受けました。
私は、今後も美術館を始め大学のお役に立つことが有れば、という気持ちを大きく致しました。
(よしだ たかし)

吉田遠志 Tooshi YOSHIDA(1911-1995)
1911年東京に生まれる。父・吉田博に木版画を学び、後に銅版、リトグラフなども併用して制作する。1930年父とともにインド、ピルマ、マレーシアなど東南アジアを写生旅行。太平洋画会展や日本版画協会展に出品し、各地の国際版画展でも活躍。
1952年ニューヨークのジャパン・ソサエティーの協力を得て、アメリカ各地で講演、伝統的木版画の技法紹介、展覧会などを行ったのち、欧州へ渡る。1973年東アフリカを訪れ、以後動物をモティーフとする版画を主に制作。後にインド、オーストラリア、南極などへも旅行して各地の野生動物を描く。1980年長野県北安曇郡美麻村の小中学校の旧校舎を利用して「美麻文化センター」を創設し、木版画、ガラス細工、陶器などの技術指導の場とする。1982年から始めた「動物絵本シリーズ」で絵本にっぽん賞などを受賞。1995年、歿。