植田実
「丸の内赤煉瓦街」

出品番号41.
植田実
「丸の内赤煉瓦街」
1961年撮影
動画(8mmフィルムをDVDに変換)
再生時間:4分25秒
まだ小学生にもなっていない頃、母に連れられて見知らぬ街に行きました。 電車を降り歩くにつれて街は黙りこむ。壁が堅固になる。その壁のなかから突 然、父が現れた。おどろきとショックがいまでもあざやかな瞬間でした。両親 は表通りでちょっと立ちばなしをし、父はまた壁のなかに消えました。私たち の住まいから途方もなく遠いところにひとりでいた父。大人になることの恐怖 が襲ってきました。そこは父の勤め先である丸の内赤煉瓦街の一画で、三菱系 の会社だったのです。
20年後、兄が参加していた建築設計事務所も偶々同じ赤煉瓦街の、こちらは 5、6人分の机でいっぱいになるくらいの小さな、路地に面した一部屋で、若い 建築家たちの活気が外にも伝わってきました。赤煉瓦街とひとまとめに言って も建物の顔はそれぞれで、そこに遥かな静けさが霧のように立ちこめていまし た。
私のはじめての仕事先は八重洲の出版社で、昼休みのあいだに丸の内に行っ て戻ってこられる距離です。先輩の編集者が貸してくれた8ミリの撮影機でと りあえず1巻、わずか3分間を撮ったのだけど肝心の映写機がなく、ようやく その映像を見たのは10年もあとのこと。カメラも持たなかったので写真を撮る 習慣もずっと先になってからです。
撮りっ放しで編集もしていない、わが生涯でただ1本の8ミリ映像のフィル ム・ケースには1961年1月29日の日付、おそらくはこの日に撮影した。社会人 になって1年足らずでした。
(うえだまこと)
◆ときの忘れものは2015年1月9日[金]―1月23日[金]「植田実写真展―都市のインク 端島複合体、同潤会アパートメント」を開催しています(*会期中無休)。

2003年度の日本建築学会文化賞を受賞するなど、建築評論、編集者として長年活躍し続ける植田実が、長年撮りためてきた写真作品を初めて公開したのは2010年のときの忘れものでの「植田実写真展―空地の絵葉書」でした。70歳を超えての初個展でした。
二度目の個展となる本展では〈端島複合体〉〈同潤会アパートメント〉の写真と、61年に8mmフィルムで撮影した《丸の内赤煉瓦街》の映像をご覧いただきます。
●イベントのご案内
本日1月9日(金)18時より植田実さんを囲んでオープニングを開催します。
1月16日(金)19時より植田実さんと降旗千賀子さん(目黒区美術館学芸員)を迎えてギャラリートークを開催します。
既に定員に達しましたので、受付は終了しました。
※要予約/参加費1,000円
※開始時間の変更
DMにはギャラリートークの開始時間を「18時」と記載しておりましたが、「19時」に変更になりました。お間違いのないようお願いいたします。
「丸の内赤煉瓦街」

出品番号41.
植田実
「丸の内赤煉瓦街」
1961年撮影
動画(8mmフィルムをDVDに変換)
再生時間:4分25秒
まだ小学生にもなっていない頃、母に連れられて見知らぬ街に行きました。 電車を降り歩くにつれて街は黙りこむ。壁が堅固になる。その壁のなかから突 然、父が現れた。おどろきとショックがいまでもあざやかな瞬間でした。両親 は表通りでちょっと立ちばなしをし、父はまた壁のなかに消えました。私たち の住まいから途方もなく遠いところにひとりでいた父。大人になることの恐怖 が襲ってきました。そこは父の勤め先である丸の内赤煉瓦街の一画で、三菱系 の会社だったのです。
20年後、兄が参加していた建築設計事務所も偶々同じ赤煉瓦街の、こちらは 5、6人分の机でいっぱいになるくらいの小さな、路地に面した一部屋で、若い 建築家たちの活気が外にも伝わってきました。赤煉瓦街とひとまとめに言って も建物の顔はそれぞれで、そこに遥かな静けさが霧のように立ちこめていまし た。
私のはじめての仕事先は八重洲の出版社で、昼休みのあいだに丸の内に行っ て戻ってこられる距離です。先輩の編集者が貸してくれた8ミリの撮影機でと りあえず1巻、わずか3分間を撮ったのだけど肝心の映写機がなく、ようやく その映像を見たのは10年もあとのこと。カメラも持たなかったので写真を撮る 習慣もずっと先になってからです。
撮りっ放しで編集もしていない、わが生涯でただ1本の8ミリ映像のフィル ム・ケースには1961年1月29日の日付、おそらくはこの日に撮影した。社会人 になって1年足らずでした。
(うえだまこと)
◆ときの忘れものは2015年1月9日[金]―1月23日[金]「植田実写真展―都市のインク 端島複合体、同潤会アパートメント」を開催しています(*会期中無休)。

2003年度の日本建築学会文化賞を受賞するなど、建築評論、編集者として長年活躍し続ける植田実が、長年撮りためてきた写真作品を初めて公開したのは2010年のときの忘れものでの「植田実写真展―空地の絵葉書」でした。70歳を超えての初個展でした。
二度目の個展となる本展では〈端島複合体〉〈同潤会アパートメント〉の写真と、61年に8mmフィルムで撮影した《丸の内赤煉瓦街》の映像をご覧いただきます。
●イベントのご案内
本日1月9日(金)18時より植田実さんを囲んでオープニングを開催します。
1月16日(金)19時より植田実さんと降旗千賀子さん(目黒区美術館学芸員)を迎えてギャラリートークを開催します。
既に定員に達しましたので、受付は終了しました。
※要予約/参加費1,000円
※開始時間の変更
DMにはギャラリートークの開始時間を「18時」と記載しておりましたが、「19時」に変更になりました。お間違いのないようお願いいたします。
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