野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」 第6回

個展を終えて

新年あけましておめでとうございます。
昨年12月16日からの12日間、ときの忘れものさんで開催させて頂いた個展は、お陰様をもちまして無事に終える事ができ、年末年始は久しぶりにゆっくりと過ごす事ができました。
年末の慌ただしい中ご来場頂いた皆様に心より感謝致します、本当にありがとうございました。

20141216_180115オープニングにて


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今回の個展会期中もずっと東京に滞在し、全日在廊し、自らの作品に囲まれた空間でお越し頂いたお客様とお話させて頂き、とても充実した、有り難い日々でした。
ただ、いつもの事ですが、毎日ギャラリーで自分の作品を見続けていると、制作している時よりも少し客観視できるようになるもので、もっとこうすればよかったと反省すべき所は多くありました。

もちろん、今の自分の精一杯の作品を展示できたとは思っていますし、
二年前にときの忘れものさんで個展を開催させて頂いた時より確実に作品は進化し、クオリティも、作品の持つ力も強くする事ができたと思っております。
制作全般でも、今回出展した大作の「Landscape#32」はシリーズ中最大で、今までで最も制作時間のかかった作品だったので、
その制作にあたって今までで最も自分を追い込む事ができた事は、今後の為に良い経験となりました。

DSC_2034展示風景


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でもやはり、まだまだできた、、できるはずだと、
もっと自由に、もっとシンプルにもっと美しく、もっと力のある作品ができるはずだと、毎日在廊する中でモヤモヤしたものが増幅していきました。

ではどうしたらイイのか、具体的にどう進化させれば良いのかはまだ漠然と、脳の奥地の霧の中ですが、
そこに何かあるという事は感じるので、また日々もがく内に、霧の奥が見える時は来ると信じて、追い求めようと思います。

あと、自分の場合、何も無くても日々コンスタントに制作するというより、追い込まれた時こそ最大限の集中力を発揮でき、新しいものを生み出せる方なので、
昨年も約2ヶ月おきに頂いた展示スケジュールから逆算して、しっかりこなせる範囲でのギリギリのスケジュールの中で制作をしていましたが、
今回の個展に出した作品が、限られた時間の中での今の自分の精一杯だったとしても、その精一杯が、できる事を全てやり尽くした今の自分の本当の精一杯だったのか…というと疑問が残り、
もっと時間をかけて制作していれば、一点一点さらにクオリティを上げられたのでは…と感じてしまう所はありました。

とはいえ、一点一点の作品を制作していた時は時間切れで完成させていた訳では無く、毎回これで100%だと感じる事はできていましたし、
作品は完成した瞬間から過去のもの、時間をかけて制作しようがしまいが、結局時間が経てば反省点が見えるのは同じ事かと思うので、終わった今だからこそ感じる事なのかもしれませんが…

その時その時の最善を尽くし、これで良いと制作を終えてから少し客観視できるまで時間を置いて、まだ良くできる所が見えればやる、それくらいの時間の余裕も必要なのかと思います。

兎にも角にも、30代最後の締めとなる個展を通して学ぶ事は多くありました。
また、ときの忘れものの皆様には今回も何から何までお世話になり、心より感謝しております。

この一年も地道に制作に励み、もっと強く美しく進化した作品を制作していきますので、皆様どうぞよろしくお願い申し上げます。

DSC_2136会期中開かれた忘年会にて


のぐち たくろう

●今日のお勧め作品は、野口琢郎です。
noguchi_33_thought野口琢郎
「I thought」
2014年
箔画(木パネル、漆、金・銀・プラチナ箔、石炭、樹脂、透明アクリル絵具)
65.2x50.0cm
サインあり


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野口琢郎 Takuro NOGUCHI(1975-)
1975年京都府生まれ。1997年京都造形芸術大学洋画科卒業。2000年長崎市にて写真家・東松照明の助手に就く。2001年京都西陣の生家に戻り、家業である箔屋野口の五代目を継ぐため修行に入る。その後も精力的に創作活動を続け、2004年の初個展以来毎年個展を開催している。12月にはときの忘れもので新作個展を開催します。

◆ときの忘れもののブログは下記の皆さんのエッセイを連載しています。
 ・大竹昭子のエッセイ「迷走写真館 一枚の写真に目を凝らす」は毎月1日の更新です。
 ・frgmの皆さんによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。
 ・石原輝雄のエッセイ「マン・レイへの写真日記」は毎月5日の更新です。
 ・笹沼俊樹のエッセイ「現代美術コレクターの独り言」は毎月8日の更新です。
 ・芳賀言太郎のエッセイ「El Camino(エル・カミーノ) 僕が歩いた1600km」は毎月11日の更新です。
 ・土渕信彦のエッセイ「瀧口修造とマルセル・デュシャン」は毎月13日の更新です。
 ・野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。
 ・井桁裕子のエッセイ「私の人形制作」は毎月20日の更新です。
 ・小林美香のエッセイ「母さん目線の写真史」は毎月25日の更新です。
 ・「スタッフSの海外ネットサーフィン」は毎月26日の更新です。
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 ・ときの忘れものでは2014年からシリーズ企画「瀧口修造展」を開催し、関係する記事やテキストを「瀧口修造の世界」として紹介します。土渕信彦のエッセイ「瀧口修造とマルセル・デュシャン」、「瀧口修造の箱舟」と合わせてお読みください。
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