生前はほとんど作品(主に油彩)を売ることがなかったと言われる岡本太郎、ファンにとっては版画が岡本作品を所有できる数少ないチャンスでした。
晩年はテレビに出たりでタレントのような扱いをされていましたが、没後20年近く経ったいまでは、著書の復刊が相次ぎ、岡本太郎の真の革新性、日本の現代美術に果たした大きな役割が再評価されています。
何より凄いのは「若い世代」のファンが増えたことでしょう。
物故作家を扱う画廊や、私たちの画廊のように長年一緒に仕事させていただいた作家が鬼籍に入った場合、何が一番たいへんかというと、次の世代のコレクターが出現するかどうかです。
作家というのはどんな大作家でも亡くなると必ず市場価格は下がります。あの棟方志功でも横山大観でも亡くなった当初は値下がりしました。
生前の市場価格というのは、作品の力に加えて生身の本人のオーラが強力に作用しますから、価格が押し上げられる。ところが作家が亡くなるとそのオーラが消えるのでいやでも価格は下がるのです。
ほんとうの勝負はそれからで、99%の作家はそのまま価格は下がり続けます。
このたび横須賀美術館で久しぶりに回顧展が始まった海老原喜之助がいい例で、生前はエビハラ天皇とまで言われた大人気作家でしたが、没後の評価の下落ははなはだしく、いまだに反転の兆しすらない。海老原ファンの亭主としては憤懣やるかたない。
そして何年かの後に、僅か零コンマ数%(もっと低いかも)の作家の市場価格が反転します。
それは生前の作家の周囲にいたコレクター層ではなく、次の世代のコレクターが出現したときです。
30年後かも知れないし、50年後、100年後かも知れない。
フェルメールがいい例ですね。
極論すれば生前の作家の評価は作家自身のもの、没後の評価はコレクター次第ということになります。
画商が笛吹けど、買ってくれるコレクターが出現しない限り再評価の波は起こらない。
近年の岡本太郎の復活は若い世代のコレクターの功績でしょう。

岡本太郎
「コンポジション」
1958年 リトグラフ(刷り:利根山光人)
Image size: 30.3x27.3cm
Sheet size: 56.1x37.8cm
E.A.(Ed.100)
Signed
岡本太郎
「メタモルフォーズ」
1960年 リトグラフ
Image size: 24.2x34.8cm
Sheet size: 27.5x55.8cm
E.A.(Ed.100)
Signed
上に紹介したのは、岡本の比較的初期のリトグラフで、エスタンプではなく、岡本自身が版を手がけたオリジナル版画です。
岡本太郎の版画については、実は正確なことはまだわかっていません。
あれだけの作家なのにきちんとしたカタログ・レゾネがないというのは残念ですね。
唯一、おおよその版画作品を網羅したのが、雑誌『版画芸術』152号(2011年6月刊)の岡本太郎特集です。
1955年のタイトル不詳のリトグラフから、1980年ごろ制作の「いこい」(リトグラフ)まで70点が画像とともに収録されています。
版画の技法としては、リトグラフ(石版)、銅版、シルクスクリーン、木版など。
同誌では、最初の版画作品を1955年のリトグラフとしていますが、亭主のおぼろげな記憶によれば岡本のフランス時代に銅版画を挿入した本がパリで出版されたはず。つまり戦前です。
「はず」というのは、随分前になりますが、古書目録で見つけ直ちに注文したのですが、一足先に他の客に買われてしまって、その実物を見ていないからです。
以来、探し続けているのですが未だに遭遇できないでいます。
どなたかご存知だったら教えてください。
■岡本太郎 Taro OKAMOTO(1911-1996)
神奈川県生まれ。1930年から1940年までをフランスで過ごす。 1948年花田清輝らと「夜の会」を結成し前衛美術運動を始め、同年9月に「アヴァンギャルド芸術研究会」を結成。抽象美術運動やシュルレアリスム運動と 直接関わる。戦後、絵画や立体を精力的に制作するだけでなく、旺盛な執筆活動も行なった。1969年壁画《明日の神話》完成(メキシコ)。1970年万国博にて《太陽の塔》を制作する。
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
◆明日15日(日曜)と明後日16日(月曜)は休廊です。
◆ときの忘れものの2月前半の展示は「如月の画廊コレクション」です。

「如月の画廊コレクション」
会期:2015年2月3日(火)~14日(土)
*日曜、月曜、祝日は休廊
出品:斎藤義重、岡本太郎、森下慶三、フォロン、恩地孝四郎、難波田史男、草間彌生、瑛九、舟越桂、その他いろいろ
◆福井県立美術館で開催された『福井の小コレクター運動とアートフル勝山の歩み―中上光雄・陽子コレクションによる―』の図録はときの忘れものが編集を担当しました。
福井の同展はじめ、勝山、金沢をめぐる「現代美術と磯崎建築~北陸の冬を楽しむツアー」を1月24日~25日に開催し、各地から15名が参加されました。参加された皆さんの体験記をお読みください。
石原輝雄さんの体験記
浜田宏司さんの体験記
酒井実通男さんの体験記
◆福井県勝山の磯崎新設計「中上邸イソザキホール」については亭主の回想「台所なんか要りませんから」をお読みください。
晩年はテレビに出たりでタレントのような扱いをされていましたが、没後20年近く経ったいまでは、著書の復刊が相次ぎ、岡本太郎の真の革新性、日本の現代美術に果たした大きな役割が再評価されています。
何より凄いのは「若い世代」のファンが増えたことでしょう。
物故作家を扱う画廊や、私たちの画廊のように長年一緒に仕事させていただいた作家が鬼籍に入った場合、何が一番たいへんかというと、次の世代のコレクターが出現するかどうかです。
作家というのはどんな大作家でも亡くなると必ず市場価格は下がります。あの棟方志功でも横山大観でも亡くなった当初は値下がりしました。
生前の市場価格というのは、作品の力に加えて生身の本人のオーラが強力に作用しますから、価格が押し上げられる。ところが作家が亡くなるとそのオーラが消えるのでいやでも価格は下がるのです。
ほんとうの勝負はそれからで、99%の作家はそのまま価格は下がり続けます。
このたび横須賀美術館で久しぶりに回顧展が始まった海老原喜之助がいい例で、生前はエビハラ天皇とまで言われた大人気作家でしたが、没後の評価の下落ははなはだしく、いまだに反転の兆しすらない。海老原ファンの亭主としては憤懣やるかたない。
そして何年かの後に、僅か零コンマ数%(もっと低いかも)の作家の市場価格が反転します。
それは生前の作家の周囲にいたコレクター層ではなく、次の世代のコレクターが出現したときです。
30年後かも知れないし、50年後、100年後かも知れない。
フェルメールがいい例ですね。
極論すれば生前の作家の評価は作家自身のもの、没後の評価はコレクター次第ということになります。
画商が笛吹けど、買ってくれるコレクターが出現しない限り再評価の波は起こらない。
近年の岡本太郎の復活は若い世代のコレクターの功績でしょう。

岡本太郎
「コンポジション」
1958年 リトグラフ(刷り:利根山光人)
Image size: 30.3x27.3cm
Sheet size: 56.1x37.8cm
E.A.(Ed.100)
Signed

「メタモルフォーズ」
1960年 リトグラフ
Image size: 24.2x34.8cm
Sheet size: 27.5x55.8cm
E.A.(Ed.100)
Signed
上に紹介したのは、岡本の比較的初期のリトグラフで、エスタンプではなく、岡本自身が版を手がけたオリジナル版画です。
岡本太郎の版画については、実は正確なことはまだわかっていません。
あれだけの作家なのにきちんとしたカタログ・レゾネがないというのは残念ですね。
唯一、おおよその版画作品を網羅したのが、雑誌『版画芸術』152号(2011年6月刊)の岡本太郎特集です。
1955年のタイトル不詳のリトグラフから、1980年ごろ制作の「いこい」(リトグラフ)まで70点が画像とともに収録されています。
版画の技法としては、リトグラフ(石版)、銅版、シルクスクリーン、木版など。
同誌では、最初の版画作品を1955年のリトグラフとしていますが、亭主のおぼろげな記憶によれば岡本のフランス時代に銅版画を挿入した本がパリで出版されたはず。つまり戦前です。
「はず」というのは、随分前になりますが、古書目録で見つけ直ちに注文したのですが、一足先に他の客に買われてしまって、その実物を見ていないからです。
以来、探し続けているのですが未だに遭遇できないでいます。
どなたかご存知だったら教えてください。
■岡本太郎 Taro OKAMOTO(1911-1996)
神奈川県生まれ。1930年から1940年までをフランスで過ごす。 1948年花田清輝らと「夜の会」を結成し前衛美術運動を始め、同年9月に「アヴァンギャルド芸術研究会」を結成。抽象美術運動やシュルレアリスム運動と 直接関わる。戦後、絵画や立体を精力的に制作するだけでなく、旺盛な執筆活動も行なった。1969年壁画《明日の神話》完成(メキシコ)。1970年万国博にて《太陽の塔》を制作する。
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
◆明日15日(日曜)と明後日16日(月曜)は休廊です。
◆ときの忘れものの2月前半の展示は「如月の画廊コレクション」です。

「如月の画廊コレクション」
会期:2015年2月3日(火)~14日(土)
*日曜、月曜、祝日は休廊
出品:斎藤義重、岡本太郎、森下慶三、フォロン、恩地孝四郎、難波田史男、草間彌生、瑛九、舟越桂、その他いろいろ
◆福井県立美術館で開催された『福井の小コレクター運動とアートフル勝山の歩み―中上光雄・陽子コレクションによる―』の図録はときの忘れものが編集を担当しました。
福井の同展はじめ、勝山、金沢をめぐる「現代美術と磯崎建築~北陸の冬を楽しむツアー」を1月24日~25日に開催し、各地から15名が参加されました。参加された皆さんの体験記をお読みください。
石原輝雄さんの体験記
浜田宏司さんの体験記
酒井実通男さんの体験記
◆福井県勝山の磯崎新設計「中上邸イソザキホール」については亭主の回想「台所なんか要りませんから」をお読みください。
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