野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」 第7回

思う事

ここ最近テレビでISIL関連のニュースを観ていると、どうしても気持ちが重くなった。
一連のISILの行為は許されるべきものでは無いが、アメリカ主導のISILへの空爆では、ISILの戦闘員約一万人を殺害し、ISILの拡大は停滞していると、それは正当で当たり前の事のように報道される事にも強く違和感を感じた。
もし、いつかISILを壊滅したとしても、今までと同様に殺し合いの螺旋はいつまでも続くだろう、日本でもテロが起きる日は来るかもしれない。
この世界は何処へ向かうのか、戦争の無い平和な世界など不可能な夢なのかと気持ちが重くなった。
でも、やはりいつかと願いたい、どうか殺し合いの無い世界がきますように。

今となっては中東の国に旅にも行きにくくなってしまったが、父は砂漠が好きで昔は毎年のように中東の国々へ旅に行っていた。
私も18年程前にトルコへ行った事がある、イスラムの人達は温和で明るく、日本人に親しみをもって接してくれた、欧米に行くよりもよほど対応は温かかった。
そしてイスラムの建造物や美術は素晴らしい、いつかまたこの目で見る事ができるように、安全に旅をできる世界になって欲しい。

トルコ118年前、トルコにて


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また、今日本国内でイスラム教徒の人達に対する偏見や嫌がらせが多く発生しているらしい、その原因はメディアがISILを当初から「イスラム国」という名で呼び、表記している風評被害が大きい。
私達のように、旅に行き、現地の人達と接した事がある人間は、今回の事で嫌がらせなどしないはず。
だから、無知だったり、旅に行った事も無い人達に間違った刷り込みをしないよう、一部の過激派組織であるISILと、一般的なイスラム教徒の方々は全く違うのだと、メディアは責任をもって伝えて欲しいと思う。

私は2月12日に40歳になりました。歳をとってももう嬉しい年齢ではないですが、40歳を越えると体も変わるというので、元気に作品を作り続けていられるように、今までよりも少し体調管理には注意しようと思います。

そして、人に役割があるのならば、私は美しい作品を作って人の心を癒やしたい、刺激ある作品を通して生きている喜びを感じて欲しい、それがこの世に生きる自分の役割だと思っています。

portrait


のぐち たくろう

野口琢郎 Takuro NOGUCHI(1975-)
1975年京都府生まれ。1997年京都造形芸術大学洋画科卒業。2000年長崎市にて写真家・東松照明の助手に就く。2001年京都西陣の生家に戻り、家業である箔屋野口の五代目を継ぐため修行に入る。その後も精力的に創作活動を続け、2004年の初個展以来毎年個展を開催している。

◆野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。

●今日のお勧め作品は、野口琢郎です。
noguchi_28_hope
野口琢郎
「Quiet hope」
2014年
箔画(木パネル、漆、金・銀箔、石炭、樹脂、透明アクリル絵具)
42.5x91.0cm
サインあり
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