先日、ポール・ゴーギャンの「Nafea Faa Ipoipo(ナファエ・ファア・イポイポ)=いつ結婚するの」(1892年)が絵画史上最高額となる3億ドル(約360億円)で落札されたというニュースをお伝えしましたが、今日はそれよりはるかに小額ではありますが、亭主の愛してやまない創作版画の分野で画期的なセールのニュース。

3月5日(木)~7日(土)の会期で、飯田橋のホテルグランドパレスで開催された「国際稀覯本フェア2015 日本の古書 世界の古書」に足を運んだ本好きの方も多かったのではないでしょうか。亭主はあいにく仕事が重なり、行くことができませんでしたが、神田の山田書店さんが山本鼎の木版画代表作「ブルトンヌ」を出品されました。
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送られてきたカタログに記載されたゼロの数を亭主は何度も目をこすりながら確認し、もしまだ売れないでいたらどうしよう、買ってくれる客はただ一人・・・・ と思案しつつ電話のボタンを押したのでした。
店番のいつもの明るい女性が弾んだ声で「すいません、おかげさまで売れてしまいました」。
ほっとしたのと、山田さん凄いなあという賛嘆の思いで電話を切った次第です。

亭主は美術業界から遠ざかっていたバブル時代の記録には疎いのですが、日本の市場で山本鼎の版画が1000万円をつけて売れたのは初めてではないでしょうか。
創作版画の文字通り記念碑的作品が久しぶりに市場に出て、それを買った日本人がいたことに亭主は嬉しさをかみしめています。

昨秋訪れた上田市立美術館の開館記念「山本鼎のすべて」展について酷評しましたが、あの展示で「ブルトンヌ」がメイン会場から外され、せせこましい一室に押し込まれてみじめな展示をされていたことは未だに腹立たしい。
腹立ち紛れに<ちょっとできる画商さんに聞いてご覧なさい、鼎の版画ならどこでも100万円以上、ものによっては数百万でも買ってくれるでしょう。しかるに鼎の油彩ときたら10万円でも買う画商さんがいるかどうか。>と書きましたが、数百万どころか、山田書店さんは一千万円で売ってしまった。快挙です。

いま欧米では「具体」「もの派」「実験工房」など1950~1970年代の日本の前衛美術を評価する動きが活発です。「具体」の顕彰に尽力されている河﨑晃一さんは「具体(の評価)は地元(芦屋)で三流、東京で二流、世界で一流」と喝破しましたが、「創作版画」「山本鼎」の評価もそうならないことを切に祈ります。

●今日のお勧めは恩地孝四郎です。
因みに亭主の得意としまた敬愛する創作版画のベスト3は、恩地孝四郎、戸張孤雁内間安瑆であります。
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恩地孝四郎 Koshiro ONCHI
白い花
1943年 木版
37.0x26.0cm

onchi_25_bathing
恩地孝四郎 Koshiro ONCHI
水浴
1929年 木版
21.4x14.8cm

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