スタッフSの海外ネットサーフィン No.31
「Aeroport Mille Plateaux」
PLATEAU、Seoul
読者の皆様こんにちわ、急に寒くなったり雨が続いたりするだけならまだしも、方々で川が氾濫したり火山が爆発したりとトンデモ天気が頻発する今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。なんだかんだで結局まだ蒸し暑いなぁと扇風機の前に身を置き続けるスタッフSこと新澤です。
自分が行ったことのある場所の美術館のイベントを紹介する今連載、昨年は開催時期が月末だったために自動的にKIAFとなりましたが、今年のKIAFは10月上旬。これはこれでまたイベントレポートで(今回こそは)お目汚しさせていただきますが、今回はそれに託けて、ソウルにあるギャラリー「PLATEAU」とその企画展を紹介させていただきます。

「台地」という意味の名前が見た目からも納得できるこのギャラリー、元々は「ロダンギャラリー」として、韓国最大の財閥であるサムスンが1999年5月に開館した、世界で8番目のロダン専門ギャラリーでした。どのような紆余曲折があったのかは自分では調べきれませんが、その後ギャラリーは2011年に「PLATEAU」として再スタートを切り、現在は年に4回ほど行われる特別企画展を中心に運営されています。ちなみに現代美術を展示するようになってもロダンの作品も当然残っており、代表作である「地獄門」「カレーの帰還」は常設展示されています。
そんなPLATEAUで7月23日から10月18日まで開催されているのが、今回紹介する「Aeroport Mille Plateaux」。
世界中のあらゆる場所で個展を開催し、数多くのビエンナーレにも出展しているアーティストデュオ、エルムグリーン&ドラッグセットの個展です。1995年から二人で活動しているこのコンビは、日本でも2008年の横浜トリエンナーレでショッピングモールの巨大吹き抜け空間に、プールと飛び込み台の上に立つ精巧な少年の人形を設置した《落っこちたらつかまえて》を展示して話題を呼びました。
このギャラリーの外観を見た時、自分は天井が高くてガラス張りの面積が広い、まるで空港のような空間だと感じたのですが、どうやらそれはこのコンビも感じたことのようで、そこにフランスの哲学者ジル・ドゥルーズ(Gilles Deleuze)と精神科医であると同時に苛烈な運動家でもあったフェリックス・ガタリ(Felix Guattrari)の代表的な著書、『千のプラトー(Mille Plateaux)』から得たインスピレーションを加えた展示の数々が独特な雰囲気を持つ空間を構成しています。
この企画展を開催するために、エルムグリーン&ドラッグセットは細心の注意を払ってチェックインカウンター、セキュリティチェックポイント、待合室と出発ゲート、手荷物受取所や免税店を構築し、ギャラリー空間を完璧に空港に置き換えていますが、この空港自体が作品であると同時に、来場者を現実からエルムグリーン&ドラッグセットの世界に旅立たせる装置にもなっています。
"Modern Moses"
2006
Carrycot, bedding, wax figure, baby clothes, stainless steel cash machine
Carrycot : 71 x 37 x 16cm
cash machine : 94 x 76cm
Exhibition copy (Ed.3 / 1 A.P.)
私たちが複雑すぎるために「当たり前」と意識を向けずにいることを可視化し、またコンビの以前の作品を展示することで、彼らがどのような事に目を向けどのように感じてきたのかを知る。空港という移動経路を通じて、場所だけではなく、時間をも移動する展示の数々。
機会があればどうぞお出かけください。
(しんざわ ゆう)
・PLATEAU公式ページ(英文)
・Aeroport Mille Plateaux 紹介ページ(英文)
「Aeroport Mille Plateaux」
PLATEAU、Seoul
読者の皆様こんにちわ、急に寒くなったり雨が続いたりするだけならまだしも、方々で川が氾濫したり火山が爆発したりとトンデモ天気が頻発する今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。なんだかんだで結局まだ蒸し暑いなぁと扇風機の前に身を置き続けるスタッフSこと新澤です。
自分が行ったことのある場所の美術館のイベントを紹介する今連載、昨年は開催時期が月末だったために自動的にKIAFとなりましたが、今年のKIAFは10月上旬。これはこれでまたイベントレポートで(今回こそは)お目汚しさせていただきますが、今回はそれに託けて、ソウルにあるギャラリー「PLATEAU」とその企画展を紹介させていただきます。

「台地」という意味の名前が見た目からも納得できるこのギャラリー、元々は「ロダンギャラリー」として、韓国最大の財閥であるサムスンが1999年5月に開館した、世界で8番目のロダン専門ギャラリーでした。どのような紆余曲折があったのかは自分では調べきれませんが、その後ギャラリーは2011年に「PLATEAU」として再スタートを切り、現在は年に4回ほど行われる特別企画展を中心に運営されています。ちなみに現代美術を展示するようになってもロダンの作品も当然残っており、代表作である「地獄門」「カレーの帰還」は常設展示されています。

世界中のあらゆる場所で個展を開催し、数多くのビエンナーレにも出展しているアーティストデュオ、エルムグリーン&ドラッグセットの個展です。1995年から二人で活動しているこのコンビは、日本でも2008年の横浜トリエンナーレでショッピングモールの巨大吹き抜け空間に、プールと飛び込み台の上に立つ精巧な少年の人形を設置した《落っこちたらつかまえて》を展示して話題を呼びました。
このギャラリーの外観を見た時、自分は天井が高くてガラス張りの面積が広い、まるで空港のような空間だと感じたのですが、どうやらそれはこのコンビも感じたことのようで、そこにフランスの哲学者ジル・ドゥルーズ(Gilles Deleuze)と精神科医であると同時に苛烈な運動家でもあったフェリックス・ガタリ(Felix Guattrari)の代表的な著書、『千のプラトー(Mille Plateaux)』から得たインスピレーションを加えた展示の数々が独特な雰囲気を持つ空間を構成しています。
この企画展を開催するために、エルムグリーン&ドラッグセットは細心の注意を払ってチェックインカウンター、セキュリティチェックポイント、待合室と出発ゲート、手荷物受取所や免税店を構築し、ギャラリー空間を完璧に空港に置き換えていますが、この空港自体が作品であると同時に、来場者を現実からエルムグリーン&ドラッグセットの世界に旅立たせる装置にもなっています。

2006
Carrycot, bedding, wax figure, baby clothes, stainless steel cash machine
Carrycot : 71 x 37 x 16cm
cash machine : 94 x 76cm
Exhibition copy (Ed.3 / 1 A.P.)
私たちが複雑すぎるために「当たり前」と意識を向けずにいることを可視化し、またコンビの以前の作品を展示することで、彼らがどのような事に目を向けどのように感じてきたのかを知る。空港という移動経路を通じて、場所だけではなく、時間をも移動する展示の数々。
機会があればどうぞお出かけください。
(しんざわ ゆう)
・PLATEAU公式ページ(英文)
・Aeroport Mille Plateaux 紹介ページ(英文)
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