打ちのめされた一日
浜田宏司
「自分って、ほんとうに小さい尺度の物差しでしかARTの世界を見ていなかったんだなぁ」と、打ちのめされるニュース/情報に出会うときが多々あります。
数年前に、中国人のアーティストが村上隆の作品を抜いて、アジアにおける現代美術のオークションレコードを更新したというニュースを目にしたときもその一つ。なんせ、その中国人のアーティスト「曾梵志」の名前を知らなかったのですから・・・・。
いや、名前どころかその作品さえ、見た事もなかったのですから(見ていたとしても、記憶に残っていない)。
昨日、あるブログを読んでいて、またまたどっぷりと打ちのめされた気分に浸ってしまいました。
そのブログとは、「ときの忘れもの」さんが運営しているギャラリーブログで、その中で現代美術のコレクターとして有名な笹沼俊樹さんが定期的に連載されている「現代美術コレクターの独り言」というタイトルのエッセイです。
「アメリカの若きコレクター達から学んだこと」と題した20回目の連載の中に登場する「ジョーン・ミッチェル/ JOAN MITCHELL」という名の現代美術作家が登場するくだりが大変興味深く、またスリリングでもあるのですが・・・ご想像通り私、この作家全く“知らなかったのです”。
ふ〜ん、どんな作家なんだろう?
と画像検索をかけたところ、これまた「全く見た事のない」抽象表現主義のイメージが “どどーん”とモニター上に溢れてきて、二度びっくり。中期から後期にかけての Cy Twombly の作風を連想させるような作品もあるのですが、その多くは(というか、全部)初めて目にする作品ばかりです。


驚いた事はこれだけではないのです。笹沼さんのエッセイの中でこの作家が紹介されるエピソードに、’85年頃にニューヨークの画廊でとあるコレクターが、当時誰も目につけていないジョーン・ミッチェルの初期の作品を購入するというくだりが出てきます。その中に、『このコレクターの特徴は、いつも、他のコレクターが注目してない“力のある作家”に眼をつける点です・・・(中略)・・・・とにかく、眼筋がすごく良い。しかも、そのような作品は安値に放置されてますしね』との画廊のオーナー(?)のコメントがさらに好奇心を加速させます。
ふ〜ん、当時(30年前)安値なら、いま、いくらぐらいになっているんだろう? と、過去のオークションレコードを調べたところ。
$ 5,122,500 USD
※Christie's, New York (May 13, 2015)
Post-War & Contemporary Evening Sale (Sale 3740)
Estimate: $ 5,000,000 - 7,000,000 USD
えっ!!!!!!!!!!?
自分が全く知らないアーティストの作品が六億円以上の金額で取引されている・・・。
そりゃあ、アートの価値がオークションプライスに比例するものではない事は重々承知していますが、客観的な評価基準の一つとして考えると重要な要素です。
抽象表現主義を代表する女流作家と言えば、ヘレン・フランケンサーラー/Helen Frankenthaler ですが、ベンチマークとして、ヘレン・フランケンサーラーのオークションレコードを調べたところ、最高額が$ 2,830,000 USD・・・・・・。
あ〜、自分はなんと小さな世界で生きているのだろう・・・・。
と、打ちのめされた一日でした。
(浜田宏司さんのfacebookより)


*画廊亭主敬白
先週終了した入札の後始末(入金の確認、梱包、発送 etc.,)で画廊は戦場の如き有様。
ご注文、お問い合わせ等への返信が遅れ気味で皆様にはご迷惑をおかけしますが、どうぞお許しください。
上掲の浜田さんの文章に関連して。
夏に「締め切りが名作を生む」という駄文を書いたとき念頭にあったのが浜田さんと深野一朗さんのことでした。
お二人とも現代美術を「からだ」で楽しみ、「ことば」で表現できる稀有な才能を持っている。
論理的思考の苦手な亭主なんざ「あたま」で理解しようと四苦八苦し、説明しようとしても語彙不足で文章にならない。画商としては二流、三流ですね。
何とかお二人に寄稿していただきたいのですが、のらりくらりと逃げられてばかり。というわけで、今回は浜田さんのfacebookから勝手に再録しちゃいました(嘘です、ちゃんとお許しをいただいています)。
ついでに浜田さんの画廊に押しかけ、今度こそ定期連載の約束をとりつけてまいりました。乞うご期待。
残るは深野さん!何とか口説きたいものです。
浜田宏司
「自分って、ほんとうに小さい尺度の物差しでしかARTの世界を見ていなかったんだなぁ」と、打ちのめされるニュース/情報に出会うときが多々あります。
数年前に、中国人のアーティストが村上隆の作品を抜いて、アジアにおける現代美術のオークションレコードを更新したというニュースを目にしたときもその一つ。なんせ、その中国人のアーティスト「曾梵志」の名前を知らなかったのですから・・・・。
いや、名前どころかその作品さえ、見た事もなかったのですから(見ていたとしても、記憶に残っていない)。
昨日、あるブログを読んでいて、またまたどっぷりと打ちのめされた気分に浸ってしまいました。
そのブログとは、「ときの忘れもの」さんが運営しているギャラリーブログで、その中で現代美術のコレクターとして有名な笹沼俊樹さんが定期的に連載されている「現代美術コレクターの独り言」というタイトルのエッセイです。
「アメリカの若きコレクター達から学んだこと」と題した20回目の連載の中に登場する「ジョーン・ミッチェル/ JOAN MITCHELL」という名の現代美術作家が登場するくだりが大変興味深く、またスリリングでもあるのですが・・・ご想像通り私、この作家全く“知らなかったのです”。
ふ〜ん、どんな作家なんだろう?
と画像検索をかけたところ、これまた「全く見た事のない」抽象表現主義のイメージが “どどーん”とモニター上に溢れてきて、二度びっくり。中期から後期にかけての Cy Twombly の作風を連想させるような作品もあるのですが、その多くは(というか、全部)初めて目にする作品ばかりです。


驚いた事はこれだけではないのです。笹沼さんのエッセイの中でこの作家が紹介されるエピソードに、’85年頃にニューヨークの画廊でとあるコレクターが、当時誰も目につけていないジョーン・ミッチェルの初期の作品を購入するというくだりが出てきます。その中に、『このコレクターの特徴は、いつも、他のコレクターが注目してない“力のある作家”に眼をつける点です・・・(中略)・・・・とにかく、眼筋がすごく良い。しかも、そのような作品は安値に放置されてますしね』との画廊のオーナー(?)のコメントがさらに好奇心を加速させます。
ふ〜ん、当時(30年前)安値なら、いま、いくらぐらいになっているんだろう? と、過去のオークションレコードを調べたところ。
$ 5,122,500 USD
※Christie's, New York (May 13, 2015)
Post-War & Contemporary Evening Sale (Sale 3740)
Estimate: $ 5,000,000 - 7,000,000 USD
えっ!!!!!!!!!!?
自分が全く知らないアーティストの作品が六億円以上の金額で取引されている・・・。
そりゃあ、アートの価値がオークションプライスに比例するものではない事は重々承知していますが、客観的な評価基準の一つとして考えると重要な要素です。
抽象表現主義を代表する女流作家と言えば、ヘレン・フランケンサーラー/Helen Frankenthaler ですが、ベンチマークとして、ヘレン・フランケンサーラーのオークションレコードを調べたところ、最高額が$ 2,830,000 USD・・・・・・。
あ〜、自分はなんと小さな世界で生きているのだろう・・・・。
と、打ちのめされた一日でした。
(浜田宏司さんのfacebookより)


*画廊亭主敬白
先週終了した入札の後始末(入金の確認、梱包、発送 etc.,)で画廊は戦場の如き有様。
ご注文、お問い合わせ等への返信が遅れ気味で皆様にはご迷惑をおかけしますが、どうぞお許しください。
上掲の浜田さんの文章に関連して。
夏に「締め切りが名作を生む」という駄文を書いたとき念頭にあったのが浜田さんと深野一朗さんのことでした。
お二人とも現代美術を「からだ」で楽しみ、「ことば」で表現できる稀有な才能を持っている。
論理的思考の苦手な亭主なんざ「あたま」で理解しようと四苦八苦し、説明しようとしても語彙不足で文章にならない。画商としては二流、三流ですね。
何とかお二人に寄稿していただきたいのですが、のらりくらりと逃げられてばかり。というわけで、今回は浜田さんのfacebookから勝手に再録しちゃいました(嘘です、ちゃんとお許しをいただいています)。
ついでに浜田さんの画廊に押しかけ、今度こそ定期連載の約束をとりつけてまいりました。乞うご期待。
残るは深野さん!何とか口説きたいものです。
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