年末年始のお休みに美術館を訪ねた方も多いと思います。
亭主も師走のあわただしい時期だったのですが、社長と神戸の兵庫県立近代美術館に行ってまいりました。
知る人ぞ知る谷中安規のコレクターで、40年来のお客様であるMさんから招待券を送っていただいたので、こりゃあ行かねばと中国からの観光客でごったがえす新幹線に飛び乗りました。
Mさんはこのブログに何度も登場されており、実名でも構わないと思うのですが、美術館のチラシには「蔵出し! M氏コレクション」とあるのでここではM氏で行きましょう。
もう一つ、上に兵庫県立近代美術館と書きましたが、今は兵庫県立美術館なのですね。昔から「ヒョウゴキンビ」と言っていたので今回まで気づきませんでした。
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コンビニみたいな建物ですが、阪神岩屋駅です。


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駅前には金属彫刻のモニュメント。

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歩いて7~8分で兵庫県立美術館に到着。
安藤忠雄先生の設計です。

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20151121谷中安規20151121谷中安規_

「奇想の版画家 谷中安規展 蔵出し! M氏コレクション」
会期:2015年11月21日[土]―2016年3月6日[日]
会場:兵庫県立美術館
   〒651-0073 兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1
時間:10:00~18:00 ※特別展開催中の金・土曜日は夜間開館20:00まで(いずれも入館は閉館の30分前まで)
休館:月曜日(1月11日は開館)、1月12日(火)
20151121谷中安規_裏


20151121谷中安規リーフレット 画像20151121谷中安規リーフレット 字

昭和20年敗戦間近の東京大空襲でアパートを焼け出された安規は、駒込の一角に粗末なバラックを建てて暮らします。翌年の秋、栄養失調のために看取るものもなく50年の生涯を終えましたが、皮肉なことにその頃から、日本の版画家たちは進駐軍、主にアメリカの文民将校たちに作品が飛ぶように売れはじめ、空前の「版画ブーム」がおこります。
安規はその恩恵を受けることはなかった。それが悔しい。
生前は日夏耿之介、佐藤春夫、内田百閒などの文学者に愛され、本の装丁にも見事なセンスを発揮しました。
昨年秋に町田市立国際版画美術館で開催された谷中安規展の折にも述べましたが、1976年のリッカー美術館(銀座にあった頃)での回顧展あたりから、再評価の機運が高まるのですが、なにせ安規は作品数が少ない。これだけ有名になっても画廊レベルでの展覧会が少ないのはそのせいです。

こうした谷中安規の再評価において不可欠な役割を演じたのが長年に渡って谷中の研究と収集に情熱を燃やし続けたM氏のコレクションです。」(同展HPより)>

再評価のためには繰り返し人々に作品を見てもらわなければなりませんが、それには公開可能なまとまったコレクションが必要です。M氏コレクションなくしては美術館レベルでの展覧会は難しいでしょう。そのくらい安規の再評価に果たしたM氏の役割は大きいといわねばなりません。
ということで、今回神戸まで足を運びました。多数の木版画はもちろん、安規が装丁や挿絵を担当した書物なども展示されており、十二分に安規の世界を堪能できました。やはりなんど見てもいいですね。

会期も長いので、ぜひ皆さん、安規展へ行きましょう。

素晴らしい展覧会ですが、亭主は少~し不満があります。
展覧会のサブタイトルには「蔵出し! M氏コレクション」とあるから、細かい文面など読まず、亭主はM氏コレクション(だけ)を見られると思って年末の忙しい時期を縫って出かけたのであります。
ところがよく見ると(読むと)「本展では、珠玉のM氏コレクションを中心に、当館と京都国立近代美術館の収蔵品を合わせた約170点の作品と資料を前後期に分けて展示します。(同展HPより)」とあるではないか。
いちいちキャプションを見なければどれが「M氏コレクション」だかわかりません。

コレクター(安規ファン)の心理(気持ち)をわかってないなあ(ため息)。
学芸員さんが可能な限りいろいろな作品を集め、大きな展示にしたいという気持ちはわからないではありません。
しかし「コレクション」というのは、特定の個人が、好みと財布と運(幸運も不運も)によって集めた一群の作品をいいます。
古くは松方コレクション(国立西洋美術館)、近年では洲之内コレクション(宮城県立美術館)、福原コレクション(世田谷美術館、東京都現代美術館)など個人名を記したコレクションが各地にあります。
珠玉のM氏コレクション」と銘打つなら、M氏が何を買って、何を買わなかったか(買えなかったか)をぜひ知りたい!

昔の話になりますが、某公立美術館で同じような例がありました。
学芸員さんというのは自分の手柄にしたいからついつい余計なものまで加えて「大展覧会」にしてしまう。寄贈なり寄託してくれたコレクターへの敬意がない。海外の美術館なら絶対にあり得ないと、亭主は思います。
その方(コレクター)はとびきりの紳士でしたから、一言も言いませんでしたが、私は内心の怒りを感じていました。

看板に偽りありとまでは言いませんが、たくさん飾りたいのなら、あれだけ広い美術館なのだから、M氏コレクションだけを一部屋にまとめて欲しかった。
招待券を送ってくれたMさんには申し訳ないのですが、ちょっぴり不満の残る展示でした。(ほんとはMさんも不満なんじゃあないかしら)

●同時開催で「版画大行進!」展が開催されています。
20151121谷中安規 裏
ここでは、小企画「谷中安規展」に関連し、当館が誇る日本近代の版画コレクションのなかから名品を精選して展示します。
名所絵の伝統を受け継ぐ最後の浮世絵師・小林清親から、自画石版による風景画で知られる織田一磨、浮世絵復興の「新版画」の川瀬巴水、谷中安規と並ぶ「創作版画」の代表的作家である前川千帆や川西英、戦後版画の旗手と呼ぶべき浜田知明、駒井哲郎、池田満寿夫、今日を代表する木口木版画家である柄澤齊にいたるまで、約20人の作家による傑作によって明治から昭和にかけての版画の流れをたどります。(同展HPより転載)

●今日のお勧めは駒井哲郎です。
komai_mebae駒井哲郎
《芽生え》
1955  
アクアチント・エングレーヴィング
イメージサイズ:15.5×28.0cm
Ed.ⅩⅩ  Signed

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●シンガポールのアートフェア出展のため1月17日(日)~1月25日(月)は臨時休廊します。
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