明日から始まるアートブックラウンジ Vol.01“版画挿入本の世界”」の舞台がこの本棚です。

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細川知夫さんにデザインしていただき、仙台の小林薫さんに製作していただきました。
半年がかりの労作であります。組み立て式で展示が終わったら解体して倉庫に収納。
明日からこの本棚に”お宝”を展示して、皆様のご来廊をお待ちしています。

今日、3月8日は織田一磨(おだ かずま)の命日です。
没後60年を迎えたこの石版画家のことを知る若い世代は少ないでしょうが、先日歴史的な大回顧展が東京国立近代美術館で開かれた恩地孝四郎より9歳ほど上、亡くなったのは恩地の翌年でした。
つまり昨年は恩地孝四郎の没後60年、今年が織田一磨の没後60年にあたります。

■織田 一磨 1882年(明治15年)11月11日生 - 1956年(昭和31年)3月8日没
恩地孝四郎 1891年(明治24年)7月2日生 - 1955年(昭和30年)6月3日没

ほぼ時代をともにしたこの二人は創作版画を代表する作家でした。
創作版画は1907(明治40)年に山本鼎、石井柏亭、森田恒友らが創刊した雑誌『方寸』がその黎明期を牽引しましたが、実は方寸同人たちの中で、最後まで(死ぬまで)版画制作を貫いたのは織田一磨ただひとりでした。
没後60年を記念しての回顧の展示をどこかでやってくれるといいのですが・・・・・

下に掲載したのは1979年に愛知県豊田の美術館松欅堂(設計:原広司)で開催した「織田一磨展」カタログで、序文は亭主が書いたのですが、そのまま再録します。
織田一磨石版画展
創作版画の人々―1
織田一磨

カタログ:B5版 64ページ
企画:美術館松欅堂/現代版画センター
執筆:小倉忠夫
発行人:綿貫不二夫
発行所:現代版画センター
発行日:1979年11月16日


 18世紀末から19世紀初頭にかけて、自らひきいる芝居の一座の脚本と楽譜を印刷することを目的としてゼネフェルダーが発明、開拓した石版印刷術は、たちまち印刷技術の花形として世界中に広がり、ポスターからマッチのラベルに至るまで幅広く利用されました。単なる複製化の手段としてばかりでなく、ゴヤ、ドーミエなどによって新しい版画の一表現手段として展開され、今世紀に入り、ボラールを始めとする近代的な画商達の出版活動に支えられ、石版画(リトグラフ)は、今や現代版画の中で欠かすことの出来ない大きな位置を占めています。
 印刷分野における石版術自体は、次の新しい技術(オフセット方式)によって駆遂され、日本に於いても明治初め以来、隆盛を誇り街の印刷所に沢山あった石版石も次第に消えていきます。
 織田一磨は、このような石版術の印刷分野に於ける興隆と衰退の時期を身をもって生き、日本に於ける創作石版画のパイオニアとして少年時代から死ぬまで石版画をつくり続けたのでした。
「純芸術的立場を有する自画石版の存在を明かに」することを生涯の道とし、作品の制作はもとより、未刊の大業「日本版画史」の研究など織田一磨の一生は、明治末「方寸」以来の創作版画運動の中でも特に異彩を放ち、また輝かしいものと言えましょう。
 美術館松欅堂と現代版画センターでは、創作版画運動と総称される時代の作家と作品に光をあて、体系的な展示と基礎資料の作成をはかる連続企画『創作版画の人々』の第一回として「織田一磨 石版画展」を開催致します。作家自らの執筆になる〝自画石版目録〟に記された346点の作品の中より、遺族の方々のご好意により、40余点を選び展示致します。
 石版作家としての歩み、技術と芸術に対する先見的な考え、浮世絵研究に於ける該博な知識、蝶や植物の採集を始めとする自然科学への傾倒など織田一磨の魅力は今日の私達に大きな刺激を与えるものであり、今回の試みが更に広い視野での再発見のきっかけとなれば幸いです。

1979年11月   美術館 松欅堂   現代版画センター
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●代表作「大阪風景」よりご紹介します。

織田一磨_大阪風_住吉織田一磨
《大阪風景 住吉》
1918年 石版
イメージサイズ:43.0×28.0cm
シートサイズ:48.5×33.5cm
サインあり


織田一磨_大阪風景_永大濱織田一磨
《大阪風景 永大濱》
1917年  石版
イメージサイズ:30.4×46.0cm
シートサイズ:32.4×48.0cm
サインあり

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アートブックラウンジ Vol.01“版画挿入本の世界”」
会期:2016年3月9日[水]~3月17日[木] ※日・月・祝日は休廊

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今回より日・月・祝日は休廊しますので、実質7日間の会期です。
短い会期ですが、ご来廊のうえ実物(版画挿入本)を手にとってご覧ください。
同時開催:文承根

ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサートのご案内
第1回「独奏チェロによるJ.S.バッハと現代の音楽~ガット(羊腸)弦の音色で~
日時:2016年3月19日(土)18時~19時
出演:富田牧子(チェロ)、木田いずみ(歌)
プロデュース:大野幸
曲目予定:J.S.バッハ、クルターク・ジェルジュ、ジョン・ケージ、尾高惇忠
*要予約=料金:1,000円
予約:メールにてお申し込みください。
info@tokinowasuremono.com

●ときの忘れものは2016年3月より日曜、月曜、祝日は休廊します。
従来企画展開催中は無休で営業していましたが、今後は企画展を開催中でも、日曜、月曜、祝日は休廊します。