野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」 第23回

「個展、ART BUSANを終えて」

大阪のNii Fine Artsさんでの個展終了後、中二日でART BUSAN出展の為に釜山へ発ちました。
釜山の街のイメージはソウルと特に変わりありませんでしたが、ほぼ観光はしていないものの、フェア開始前の午前中に一度海岸まで行って散歩に行った時は気持ちがよくて、やっぱり海がある街は良いなと思いました。

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今回のフェア、ときの忘れものブースの広さは過去最大、いつもアートフェアの展示作業は自分にできる範囲で他の作家さんの分もお手伝いしていますが、さすがに今回は作品数が多くて、終わったらもう皆さんクタクタでした。
フェアが始まると毎日一日がとても長く感じましたが、今回ホテルが会場から歩いて5分程の距離だったので移動が楽だったのもあり、長丁場のフェアでしたが最後まで元気に乗り切れました。
フェアの雰囲気や結果など以前もうスタッフの新澤さんが書かれていたので省略致しますが、価格交渉まで進みながらも今回私の作品は売れる事はなかったものの、出展した4点の内「Landscape#32」の大作はインパクトも強く一番人気で、フェア全体の中でも印象は強く残せたと思っています。

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今回もときの忘れものの皆さんには本当にお世話になり、通訳の井手さん、ギャラリーエデルの堀居さんたちにもお世話になりました。

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というわけで、今年前半のイベント2つ、大阪個展とART BUSANを無事に終える事ができましたが、
特に大阪での個展中、自分の作品に囲まれながら色々な方とお話する中で解った事が一つありました。
それは、自分が作りたいものは、ただ「美しいもの」ではなかったという事です。

沖縄に行ったりして広大な海や空を眺めている時にだだボーッとなる感じ、何か癒されるような無になるような感じ。
思わず言葉にするとつい「あぁ綺麗や」とか言ってましたが、よく考えてみるとあの時頭の中では綺麗とか美しいという解釈をしているわけではなかったように思いました。ただジワーっと無で、自然を感じてずっとそこに居たくなる感じ。

少し違うのかもしれませんが、過去にパリのルーブルやニューヨークのメトロポリタン美術館などで本当の名画を間近に観た時も、何か似た感覚だったように思います。圧倒されたというより、綺麗とか凄いというよりも、ただ引きこまれ言葉も出ず、心が静まって無になる感じ、、言葉にすればそれが「感動している」状態だと言われるかもですが(笑)これからも作品制作に最善を尽くし、そんな風に感じて頂ける作品が作れるように、少しずつでも近づければと思います。

あと一つ、大阪の個展には新作も多く準備でき、なかなか見応えある展示ができたと思っていますが、今までに無かったような真新しさを感じて頂けるものは少なかったかもしれません。そんな中で最後の最後に新しいスタイルの作品「Remembrance#A」ができた事は嬉しくて、救いでした。
これは箔を押した画面を針で引っ掻いて制作した作品で、今までの作品で星空などを作る途中にこの引っ掻いた感じのエッチングかドローイングのようにも見える工程があり、その感じがとても好きで、いつか完成した作品にしたいと思っていたのがやっと形にできました。
今後シリーズとして続けていくつもりですので、展開を楽しみにして頂ければと思います。

20160615_noguchi_09「Remembrance#A」


次は7月頭のART OSAKAにNii Fine Artsさんのブースから出展させて頂くので、新作制作がんばります。
のぐち たくろう

野口琢郎 Takuro NOGUCHI(1975-)
1975年京都府生まれ。1997年京都造形芸術大学洋画科卒業。2000年長崎市にて写真家・東松照明の助手に就く。2001年京都西陣の生家に戻り、家業である箔屋野口の五代目を継ぐため修行に入る。その後も精力的に創作活動を続け、2004年の初個展以来毎年個展を開催している。

●今日のお勧め作品は、野口琢郎です。
「Quiet wish」野口琢郎
「Quiet wish」
2015年
箔画(木パネル、漆、金・銀箔、石炭、樹脂)
65.2x53.0cm


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ファックス及び郵送での予約者の皆さんには、恐縮ですが、お知らせは明日以降になります。
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売れた作品(SOLD)は、6月9日ブログのリストに追記しましたので、ご参照ください。
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◆野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。