ただいま開催中の「アートブック・ラウンジVol.2~画廊のしごと(南画廊のカタログ)」では、戦後の現代美術を画商として牽引した南画廊のカタログを特集展示しています。
志水楠男さんが1956(昭和31)年6月に設立した南画廊は、閉廊した1979年11月までに199回の展覧会を開催しています。
亭主が南画廊の志水さんを初めて訪ねたのはを1974年でした。
美術のびの字も知らないのにいきなり新聞社の新規事業の一環として「現代版画センター」を設立することになり、先ず相談にあがったのが高校生のときからお世話になっていた井上房一郎さんでした。井上さんは直ぐに鎌倉の土方定一先生(当時神奈川県立近代美術館館長)のところに連れていってくださり、そこから亭主は久保貞次郎先生を知り、版画の道へと進みます。
井上さんは同時に「東京画廊の山本さんと、南画廊の志水さんを訪ねなさい」と助言してくれました。いま思うと28歳の若造にその後の筋道をつけてくれた井上さんの的確な目と助言に感謝するばかりです。
そうして知った南画廊は当時美術界の輝ける大画廊でした。
「私設外務省」という比喩がぴったりな、サム・フランシス、ジャスパー・ジョーンズなど海外から来る作家やコレクターの多くが南画廊の志水さんを頼ってくるのでした。
南画廊の最初の展覧会(1956年6月)は「駒井哲郎銅版画個展」でした。
若い志水さんが30歳で自分の画廊を開くにあたり、駒井先生を最初の作家に選んだことは、その後のお二人にとって画期的なことでした。
南画廊史である『志水楠男と南画廊』所収の年譜によれば<開廊記念展には「現代日本美術のパイオニアは誰か」と考えた末に、当時、銅版画家として清冽な作品を制作していた新人駒井哲郎を選んだ。>とあります。

南画廊の最初の展覧会「駒井哲郎銅版画個展」の案内状
上掲は志水さんが画廊の案内状として印刷したものですが、駒井先生はいかにもコレクターを大切にする銅版画家らしく、印刷の案内状とは別に手刷りの銅版画による案内状も制作しています。

駒井哲郎
「南画廊開廊記念個展案内状」(仏文、別に和文のものもあり)
会期=1956年6月18日~23日
銅版
12.0×17.6cm

駒井哲郎
「南画廊個展案内状」(仏文、別に和文のものもあり)
会期=1958年12月15日~20日
銅版
12.0×17.6cm
志水さんはその後、大画商としての地歩を固めていきます。
駒井先生は1956年の開廊記念展、1958年と1960年の計3回の個展を南画廊で開催し、その都度、オリジナル銅版画による案内状を制作しています。
駒井先生の手刷りの銅版による南画廊の1960年の個展案内状を入手した当時20代のあるサラリーマンはそれをきっかけに駒井作品の蒐集につとめ、やがて500点を超える大コレクションをつくるにいたります。自分で好きなものだけを集めた結果だけれど、文化財は社会のものでもあるからと考えたその人はすべてを世田谷美術館に寄贈します(「再び福原コレクションについて 発見された駒井哲郎」)。

駒井哲郎
「南画廊個展案内状(二匹の魚)」
会期=1960年4月18日~28日
銅版(福原コレクション)
たった一枚の案内状ですが、駒井哲郎先生、志水楠男さん、福原義春さんのそれぞれの大きな物語になっていったことを思うと、感慨深いものがあります。
駒井哲郎
《芽生え》
1955年 銅版
15.5×28.0cm
Signed

駒井哲郎
「嵐」
1962年 エッチング(亜鉛版)
18.5×18.5cm
Ed.20 Signed
※レゾネNo.175(美術出版社)
駒井哲郎
《街》
1973年 銅版
23.5×21.0cm
Ed.250 Signed
※レゾネNo.298(美術出版社)
●今日のお勧めは、貴重文献『志水楠男と南画廊』です。
『志水楠男と南画廊』
1985年
発行:「志水楠男と南画廊」刊行会
27×26.5cm 251ページ
執筆:大岡信、志水楠男、難波田龍起、今井俊満、小野忠弘、木村賢太郎、加納光於、オノサト・トシノブ、菊畑茂久馬、宇佐美圭司、野崎一良、靉嘔、中西夏之、清水九兵衛、飯田善國、戸村浩、菅井汲、保田春彦、桑原盛行、他
頒価:16,200円(送料250円)
*志水さん没後、ご遺族によって刊行された南画廊の全記録。60~70年代の世界の現代美術を知る上で、第一級の資料です。
特に巻末におさめられた座談会の顔ぶれと内容が凄い。
出席者は大岡信、東野芳明、読売の名物記者であり日本の現代美術の影の仕掛け人だった海藤日出男、志水さんを画商の道に導き最初のパートナーだった東京画廊の山本孝、志水さんの同級生でパトロンでもあった山本陽一(日本ノボパン工業社長)の5人が志水さんの生涯を率直に語り合っています。
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
◆ときの忘れものは「第2回アートブック・ラウンジ~画廊のしごと(南画廊のカタログ)」を開催しています。
「第2回アートブック・ラウンジ~画廊のしごと(南画廊のカタログ)」
会期:2016年6月14日[火]~6月25日[土]
*日曜、月曜、祝日は休廊
志水楠男が設立した南画廊が1956年から79年に開催した199回の展覧会から、1959年の今や伝説となったフォートリエ展はじめ、ヤング・セブン展、中西夏之展、サム・フランシス展などのカタログ50冊を頒布します。南画廊の作家たちー靉嘔、オノサト・トシノブ、駒井哲郎、菅井汲、嶋田しづ、山口勝弘、山口長男、難波田龍起、加納光於の作品を展示し、1968年10月南画廊で刊行記念展が開催された瀧口修造『マルセル・デュシャン語録』(M・デュシャン、荒川修作、J・ジョーンズ、J・ティンゲリー)の完璧な保存状態のA版も出品します。
◆同時開催:ここから熊本へ~地震被災者支援展
志水楠男さんが1956(昭和31)年6月に設立した南画廊は、閉廊した1979年11月までに199回の展覧会を開催しています。
亭主が南画廊の志水さんを初めて訪ねたのはを1974年でした。
美術のびの字も知らないのにいきなり新聞社の新規事業の一環として「現代版画センター」を設立することになり、先ず相談にあがったのが高校生のときからお世話になっていた井上房一郎さんでした。井上さんは直ぐに鎌倉の土方定一先生(当時神奈川県立近代美術館館長)のところに連れていってくださり、そこから亭主は久保貞次郎先生を知り、版画の道へと進みます。
井上さんは同時に「東京画廊の山本さんと、南画廊の志水さんを訪ねなさい」と助言してくれました。いま思うと28歳の若造にその後の筋道をつけてくれた井上さんの的確な目と助言に感謝するばかりです。
そうして知った南画廊は当時美術界の輝ける大画廊でした。
「私設外務省」という比喩がぴったりな、サム・フランシス、ジャスパー・ジョーンズなど海外から来る作家やコレクターの多くが南画廊の志水さんを頼ってくるのでした。
南画廊の最初の展覧会(1956年6月)は「駒井哲郎銅版画個展」でした。
若い志水さんが30歳で自分の画廊を開くにあたり、駒井先生を最初の作家に選んだことは、その後のお二人にとって画期的なことでした。
南画廊史である『志水楠男と南画廊』所収の年譜によれば<開廊記念展には「現代日本美術のパイオニアは誰か」と考えた末に、当時、銅版画家として清冽な作品を制作していた新人駒井哲郎を選んだ。>とあります。

南画廊の最初の展覧会「駒井哲郎銅版画個展」の案内状
上掲は志水さんが画廊の案内状として印刷したものですが、駒井先生はいかにもコレクターを大切にする銅版画家らしく、印刷の案内状とは別に手刷りの銅版画による案内状も制作しています。

駒井哲郎
「南画廊開廊記念個展案内状」(仏文、別に和文のものもあり)
会期=1956年6月18日~23日
銅版
12.0×17.6cm

駒井哲郎
「南画廊個展案内状」(仏文、別に和文のものもあり)
会期=1958年12月15日~20日
銅版
12.0×17.6cm
志水さんはその後、大画商としての地歩を固めていきます。
駒井先生は1956年の開廊記念展、1958年と1960年の計3回の個展を南画廊で開催し、その都度、オリジナル銅版画による案内状を制作しています。
駒井先生の手刷りの銅版による南画廊の1960年の個展案内状を入手した当時20代のあるサラリーマンはそれをきっかけに駒井作品の蒐集につとめ、やがて500点を超える大コレクションをつくるにいたります。自分で好きなものだけを集めた結果だけれど、文化財は社会のものでもあるからと考えたその人はすべてを世田谷美術館に寄贈します(「再び福原コレクションについて 発見された駒井哲郎」)。

駒井哲郎
「南画廊個展案内状(二匹の魚)」
会期=1960年4月18日~28日
銅版(福原コレクション)
たった一枚の案内状ですが、駒井哲郎先生、志水楠男さん、福原義春さんのそれぞれの大きな物語になっていったことを思うと、感慨深いものがあります。

《芽生え》
1955年 銅版
15.5×28.0cm
Signed

駒井哲郎
「嵐」
1962年 エッチング(亜鉛版)
18.5×18.5cm
Ed.20 Signed
※レゾネNo.175(美術出版社)

《街》
1973年 銅版
23.5×21.0cm
Ed.250 Signed
※レゾネNo.298(美術出版社)
●今日のお勧めは、貴重文献『志水楠男と南画廊』です。

1985年
発行:「志水楠男と南画廊」刊行会
27×26.5cm 251ページ
執筆:大岡信、志水楠男、難波田龍起、今井俊満、小野忠弘、木村賢太郎、加納光於、オノサト・トシノブ、菊畑茂久馬、宇佐美圭司、野崎一良、靉嘔、中西夏之、清水九兵衛、飯田善國、戸村浩、菅井汲、保田春彦、桑原盛行、他
頒価:16,200円(送料250円)
*志水さん没後、ご遺族によって刊行された南画廊の全記録。60~70年代の世界の現代美術を知る上で、第一級の資料です。
特に巻末におさめられた座談会の顔ぶれと内容が凄い。
出席者は大岡信、東野芳明、読売の名物記者であり日本の現代美術の影の仕掛け人だった海藤日出男、志水さんを画商の道に導き最初のパートナーだった東京画廊の山本孝、志水さんの同級生でパトロンでもあった山本陽一(日本ノボパン工業社長)の5人が志水さんの生涯を率直に語り合っています。
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
◆ときの忘れものは「第2回アートブック・ラウンジ~画廊のしごと(南画廊のカタログ)」を開催しています。

会期:2016年6月14日[火]~6月25日[土]
*日曜、月曜、祝日は休廊
志水楠男が設立した南画廊が1956年から79年に開催した199回の展覧会から、1959年の今や伝説となったフォートリエ展はじめ、ヤング・セブン展、中西夏之展、サム・フランシス展などのカタログ50冊を頒布します。南画廊の作家たちー靉嘔、オノサト・トシノブ、駒井哲郎、菅井汲、嶋田しづ、山口勝弘、山口長男、難波田龍起、加納光於の作品を展示し、1968年10月南画廊で刊行記念展が開催された瀧口修造『マルセル・デュシャン語録』(M・デュシャン、荒川修作、J・ジョーンズ、J・ティンゲリー)の完璧な保存状態のA版も出品します。
◆同時開催:ここから熊本へ~地震被災者支援展
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