石原輝雄のエッセイ「マン・レイへの写真日記」番外編

新刊『マン・レイへの写真日記』 2016年7月京都

番外-1 ごぶさたしております。

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『マン・レイへの写真日記』石原輝雄著 銀紙書房 2016刊
限定25部(著者本2) 240頁 限定番号・サイン入り 写真232図(カラー1) サイズ 21x14.7cm 著者自装(パピヨンかがりによる手製本) 本文; Aプラン・アイボリーホワイト 47.50kg 表紙; ケンラン・モスグレー 265kg 表紙カバー; キュリアスIRパール 103kg
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皆さま、おひさしぶりです。お元気ですか? 京都のマン・レイ狂いです。今回は、銀紙書房の新刊『マン・レイへの写真日記』について報告したいと思います。
 二年間続けさせて頂いた連載が終わって4ヶ月、公私ともに慌ただしい日々を過ごしております。マン・レイに関してはジェニファー・マンディ編による『マン・レイの芸術に関する著作集』の刊行を世界的な特記事柄としてあげたく思い、個人的には5月に開かれた京都国立近代美術館での展示会場でマン・レイ作品と共に、記念写真を撮ってもらったのが嬉しい事柄でした(日本の美術館も撮影OKが増えてまいりました)。 7月に入り京都の街では祇園会。お囃子も聴こえ、勤務先から近い長刀鉾でお披露目される見送りの伊藤若冲「旭日鳳凰図」に祭り好きの血が騒いでおります。

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祇園会後祭巡行 北観音山(2015年)

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吉田家屏風飾り(新町六角下ル)

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京都国立近代美術館『オーダーメイド: それぞれの展覧会』会場 壁面にはギルバート・コレクションの『アングルのヴァイオリン』
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番外-2 限定25部

 さて、連載させていただいたブログでは1975年7月から2012年7月に至る個人史から24編(作品19、展覧会4、出版1)を紹介させていただいた訳ですが、綿貫不二夫さんからお誘いを受けた時から、最後に纏めて本にしたいと考えておりました。その為に、ブログでは注記をせず(出版時に追記)、全体の原稿量も240頁程度で収まるように調整しつつの執筆でした。第22回で取りあげた『マン・レイ展のエフェメラ』のように、手作りの個人出版で限定25部刊行。家庭用プリンターとパピヨン縢りによる造本は、メモを参照しながら前回通りで行っているにもかかわらず、微妙にズレてしまいます。加齢による経年変化への対応が心許ない結果。そんな訳で、制作部数は25部。これ以上の作業は指先と目に悪い(笑)。銀紙書房本のファンの方々全てにお届け出来ないのは心苦しいのですが、どうか、お許しください。とはいえ「お知らせ」してから、完売となるまでの数日間は、どなたが注文して下さるのだろうかと気をもんで、心によろしくありません。

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印刷はエプソンPX-504A。 表裏のピッチズレ対応で、A4用紙を1mmカットしております。
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タイトル頁 扉図はコレクション第1号となった版画につながるマン・レイの写真『アンナ・ド・ノエールの肖像』

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12-13頁

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40-41頁
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今回の帯は、黄色の紙に黒文字で刷った。文言は想像上の会話と付ける薬が無い困った人の告白。表紙のデザインとマッチしていると思うのだけど、いかがですか?
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番外-3 未発表2編

 仕事の昼休みにイノダコーヒでゆっくり、仕上がった本の頁を繰っている。光に包まれた噴水に、水音が気持ち良い。ブログから書物に転身した『マン・レイへの写真日記』は、第1回の「アンナ」から始まって「シュルレアリスム展」「ヴァランティーヌの肖像」「青い裸体」「ダダメイド」「プリアポスの文鎮」「よみがえったマネキン」「マン・レイになってしまった人」「ダニエル画廊」「エレクトリシテ」「セルフポートレイト」「贈り物」「指先のマン・レイ展」「ピンナップ」「破壊されざるオブジェ」「マーガレット」「我が愛しのマン・レイ展」「1929」「封印された星」「パリ国立図書館」「まなざしの贈り物展」「マン・レイ展のエフェメラ」「天使ウルトビーズ」、そして、最終第24回の「月夜の夜想曲」に、未発表2編を加えております。モニターでのスクロール感と異なる紙の本がもらす指先の充実は、自作本の場合でも、うっとりとした気持ちにさせてくれる。わたしは、これが好きなんだ。未発表作は、購入していただいた方へのささやかなプレゼントとご理解ください。
 アラビアの真珠を飲みながら2年間を振り返ると、毎回、マン・レイにまつわる出来事に傾注する方法として、友人・知人・先輩方に登場願った。本を読んでいると、いろいろな人の顔が浮かびあがる。そうした中にはツァイト・フォト・サロンの石原悦郎さんのように、今年、鬼籍に入ってしまわれた方もいて、涙する場面に遭遇。残された我が身の衰えは、コレクションの行く末と重なって、人の世の黄昏と思っている。
 
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イノダコーヒ(堺町三条下ル) ガーデン席

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(いしはらてるお)

■石原輝雄 Teruo ISHIHARA(1952-)
1952年名古屋市生まれ。中部学生写真連盟高校の部に参加。1973年よりマン・レイ作品の研究と収集を開始。エフェメラ(カタログ、ポスター、案内状など)を核としたコレクションで知られ、展覧会企画も多数。主な展示協力は、京都国立近代美術館、名古屋市美術館、資生堂、モンテクレール美術館、ハングラム美術館。著書に『マン・レイと彼の女友達』『マン・レイになってしまった人』『マン・レイの謎、その時間と場所』『三條廣道辺り』、編纂レゾネに『Man Ray Equations』『Ephemerons: Traces of Man Ray』(いずれも銀紙書房刊)などがある。京都市在住。

day160614-1石原輝雄
『マン・レイへの写真日記 1975-2012』

2016年
銀紙書房 発行
238ページ
21.3x15cm
限定25部

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目次(抄):
・アンナ 一九七五年二月京都
・ヴァランティーヌの肖像 一九七七年一二月京都
・青い裸体 一九七八年三月神戸
・ダダメイド 一九八〇年三月神戸
・プリアポスの文鎮 一九八二年八月パリ
・よみがえったマネキン 一九八三年七月大阪
・マン・レイになってしまった人 一九八三年九月京都
・ダニエル画廊 一九八四年九月京都
・エレクトリシテ 一九八六年一二月パリ
・セルポートレイト 一九八六年七月ミラノ
・贈り物 一九八八年二月大阪
・ファシール 一九八九年五月東京
・指先のマン・レイ展 一九九〇年六月大阪
・ピンナップ 一九九三年七月東京
・破壊されざるオブジェ 一九九三年一一月ニューヨーク
・マーガレット 一九九五年四月ロンドン
・我が愛しのマン・レイ展 一九九六年1一二月名古屋
・1929 一九九九年九月東京
・封印された星 一九九九年六月パリ
・パリ国立図書館 二〇〇ニ年一一月パリ
・まなざしの贈り物展 二〇〇四年六月東京
・肖像 二〇〇六年一一月ロンドン
・マン・レイ展のエフェメラ 二〇〇八年一二月京都
・天使ウルトビーズ 二〇一一年七月東京
・月夜の夜想由 二〇一二年七月東京
・あとがき

石原輝雄のエッセイ「マン・レイへの写真日記」目次
第1回「アンナ 1975年7月8日 東京」
第1回bis「マン・レイ展『光の時代』 2014年4月29日―5月4日 京都」
第2回「シュルレアリスム展 1975年11月30日 京都」
第3回「ヴァランティーヌの肖像 1977年12月14日 京都」
第4回「青い裸体 1978年8月29日 大阪」
第5回「ダダメイド 1980年3月5日 神戸」
第6回「プリアポスの文鎮 1982年6月11日 パリ」
第7回「よみがえったマネキン 1983年7月5日 大阪」
第8回「マン・レイになってしまった人 1983年9月20日 京都」
第9回「ダニエル画廊 1984年9月16日 大阪」
第10回「エレクトリシテ 1985年12月26日 パリ」
第11回「セルフポートレイト 1986年7月11日 ミラノ」
第12回「贈り物 1988年2月4日 大阪」
第13回「指先のマン・レイ展 1990年6月14日 大阪」
第14回「ピンナップ 1991年7月6日 東京」
第15回「破壊されざるオブジェ 1993年11月10日 ニューヨーク」
第16回「マーガレット 1995年4月18日 ロンドン」
第17回「我が愛しのマン・レイ展 1996年12月1日 名古屋」
第18回「1929 1998年9月17日 東京」
第19回「封印された星 1999年6月22日 パリ」
第20回「パリ・国立図書館 2002年11月12日 パリ」
第21回「まなざしの贈り物 2004年6月2日 銀座」
第22回「マン・レイ展のエフェメラ 2008年12月20日 京都」
第23回「天使ウルトビーズ 2011年7月13日 東京」
第24回「月夜の夜想曲 2012年7月7日 東京」
番外編「新刊『マン・レイへの写真日記』 2016年7月京都」
番外編─2『Reflected; 展覧会ポスターに見るマン・レイ』
番外編─2-2『マン・レイへの廻廊』
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