スタッフSの海外ネットサーフィン No.45
「ART TAIPEI 2016」レポート


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読者の皆様こんにちわ。師匠も走り回る師走を目前に、恒例のサイレントオークションや来年の1月~3月間に参加するアートフェアの準備に「いくら何でも忙しすぎるのでは?」と疑問に思う間すら惜しいスタッフSこと新澤です。

今回のお題は日本の画廊に盛況で知られる台湾北部の都市・台北で11月12日~15日に開催されたART TAIPEI 2016
今年10回目の開催となるこのアートフェア、実はときの忘れものは数年前からその評判を聞きつけ、参加申し込みを行い続けていました。が、哀しいかな、結果は去年まで落選続き。
そんな過去から今年はついに受かったと期待に胸を膨らませての出展だったのですが、そこには何とも言い難い事情があった(と思われる)のでした。

ともあれ、まずはブースのご紹介をば。

ART_TAIPEI_16_003ブース全景
当初はコの字型のブースをもらえると思っていたら、実際に割り当てられたのは角地で壁は2面のみ。
慌てて出品作品数を調整する羽目に。
しかし、葉栗剛の大作を二点とも来場者へ効果的に見せることができたため、結果は良好でした。

ART_TAIPEI_16_007葉栗剛の大作《男気》シリーズ。
右の《男気》(ひょっとこ)は今回が初お目見え。

ART_TAIPEI_16_008葉栗剛小品シリーズ
左から《OUTLAW2》、《かれすすき》、《OUTLAW》
この頃の作品より入れ墨が描かれるようになった、《男気》シリーズの前身的作品達です。

ART_TAIPEI_16_009葉栗剛《金剛力士像》(1)、(2)
興福寺の金剛力士像をモデルに作られた作品ですが、作家は実物を見ることが出来なかったため、正面からの画像のみで全身が立体化されており、ある意味後の浮世絵シリーズの基となったと言えるかもしれない作品です。

ART_TAIPEI_16_010安藤忠雄
上段:《光の教会》《住吉の長屋》
下段:《中之島プロジェクトⅡ [アーバンエッグ1]》

ART_TAIPEI_16_011秋葉シスイ
《次の嵐を用意している》(24)《次の嵐を用意している》(8)

ART_TAIPEI_16_012野口琢郎
《Landscape#32》(左)、《Landscape#38》(右上)、《Landscape#37》(右下)

ART_TAIPEI_16_013関根伸夫
《空相-皮膚》シリーズ

ART_TAIPEI_16_014草間彌生
《南瓜》(上)、《夕映えの雨》(下)

浮田要三
《巻物》

ART_TAIPEI_16_015長崎美希
《ああちゃん》シリーズ

設営日は通路部分はゴミとペンキまみれのコンクリの床が露出しており、会場内をトラックが行き交うというカオスな風景が広がっていましたが、一晩明けてみれば綺麗にカーペットが敷かれて落ち着いた雰囲気に一変。例年通りの人入りがあれば売り上げも期待できそうなどと呑気に考えている内に、まずはSUPER VIPという、1画廊に付き3名までしか招待できない特別枠の入場が始まったのですが…哀しいほどに人が来ませんでした。まぁ招待人数自体が最大でも450名、そこから実際に来場する数は更に減るでしょうからこれは仕方がない、かもしれない。そう考えながら迎えたVIPプレビューでしたが、やはり聞いていた前評判からすると妙に人入りが少ない。
後から知ったのですが、今年のART TAIPEIは上海のアートフェアと会期がもろ被りしており、かなりの規模の大手画廊と来場者をそちらに取られてしまっていたらしいです。日曜日にブースに立ち寄ってくださった知り合いの海外ギャラリストの方も、木金土の3日を上海のイベント、日月火をART TAIPEIに割り当てており、他にも同じ日程で行動している来場者は多いだろうと仰られていました。
今年のART TAIPEIは日本から30を超える画廊が参加しており、全体の2割ほどを占めていたのですが、もしやこれが原因だったのか。ただの邪推ですが、上海に出展画廊を取られて出来た参加枠の空きに今回ときの忘れものが入り込めたのだとしたら、中々に複雑な気分です。
来年のフェアは何処とも被らないよう調整しているそうですが、さてどうなることやら…

ART_TAIPEI_16_029一般公開2日目。
思うところがあって展示を変更。

ART_TAIPEI_16_028草間彌生を移動し《水玉》と《WOMEN》、《WOMEN》(ユニーク)を追加。

ART_TAIPEI_16_024浮田要三を外側の壁に移動し、ギャラリーロゴの下には長崎美希の小品を一列に展示。

かように来場者数で言えば中々残念な結果にだったART TAIPEI 2016でしたが、売り上げ的にはまず最初に葉栗剛の大作が売約となり、その後も草間彌生が売約となってくれたおかげで何とかボウズは避けられました。他にも野口琢郎や秋葉シスイの大作を検討すると言う方もおられたのですが、残念ながらこれらは成立せず。
お国柄なのか、最初に購入者本人が作品を直に観に来て、後日代理人が詳細や価格について話に来るという、今までとはちょっと違うやり取りが何回かあり、アジア圏でも色々ちがうなぁと感心しました。

葉栗さんの大作をはじめ、台湾市場に若手作家の作品を紹介することができ、収穫がないということはなかったものの、盛大に肩透かしを食らったこともあっていささか不完全燃焼気味に今回のフェアは終了となりました。
ちなみに今年のART TAIPEIは上海に大手画廊を取られた分を、会場のストレージスペースを撤去することで出展数を増やして数で補おうとしたようですが、ストレージを外部に頼った結果、フェア終了後に木箱を各配送会社が大挙して搬入してきたものだから会場はてんやわんやとなってしまい、その回収手続きまで立ち会った所、会場を出れたのは夜の12時近く! もうグダグダすぎる…作家の皆様には最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

今回は初めての台湾に来たこともあり、フェア以外の部分もどうなることかと身構えていましたが、異常気象で11月なのに気温が30℃を超えていた以外ではホテルも過ごしやすく、食事も美味しくて言うことなしでした。

ART-TAIPEI-2016_2日本からは多くの作家たちが台湾へ。
彫刻家の舟越桂さんも個展とレクチャーのために来場されました。
左から舟越桂さん、亭主、葉栗剛さん、長崎美希さん。

ART-TAIPEI-2016_3台北でも着物姿が華やかなワンピース倶楽部代表の石鍋博子さん(右)とお嬢さん、野口琢郎さん(左)。

ART_TAIPEI_16_069シンガポールから出展していたkato art duoのスタッフの方達との夕食風景。
場所はこれまたシンガポールでは何回も食べに行ったディンタイフォン。
台北に本店がありますが、こちらはフェア会場隣の台北101地下にあるお店。

ART_TAIPEI_16_071台湾名物の夜市。
食べ物、洋服、アクセサリー、マッサージ、遊戯など、ありとあらゆる品物が雑多に軒を並べており、通り抜けるだけでも楽しめました。

ART_TAIPEI_16_072屋台で臭豆腐を購入してご満喫の葉栗剛さん。
自分も少し分けてもらいましたが、中々に個性的な味でした。

2016年度の海外アートフェアはこれにて終了。
とはいえ、最初に書いた通り、現在は来年1月のART STAGE SINGAPORE 2017と、3月のArt on Paper 2017の準備の真っただ中。あつ~いお茶を啜りながら「平和だ…」などとボケることは当分できそうにありません。焦ったところで自分では空回りするばかりなので、一つづつ作業を片付けていくことにします。

それでは皆様、また来月。

(しんざわ ゆう)

●本日のお勧め作品はART TAIPEI 2016でも個展が開催され会場の注目を集めていた舟越桂の初期版画です。
DSCF8520_600
舟越桂
「教会とカフェのために 2」
1987年 銅版
14.8×9.6cm  
Ed.50 Singed

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本日の瑛九情報!
~~~そして今日から瑛九展。この人はコラージュがまじやばいからみといたほうがいいよ。(坂口恭平 ‏@zhtsss ・ さんのtwitterより、11月22日)~~~
写真集『0円ハウス』で一躍時の人になった異色の建築家坂口さんのつぶやき。瑛九が死んでから半世紀も経つのに次々と若い世代にファンが増えてくるのは嬉しいですね。因みに坂口さんは光嶋裕介さんと同じく早稲田の石山修武研究室出身です。
瑛九 1935-1937 闇の中で「レアル」をさがす>展が東京国立近代美術館で始まりました(11月22日~2017年2月12日)。ときの忘れものでは会期終了まで瑛九情報を毎日発信します。

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