飯沢耕太郎「日本の写真家たち」第9回
普後均(Hitoshi FUGO 1947-)――思考と技術を融合させた希有な作品世界
飯沢耕太郎(写真評論家)
普後均は1947年に神奈川県で生まれ、3歳の時から山形県米沢市で育った。1970年に日本大学芸術学部写真学科卒業後、細江英公のアシスタントを3年間務め、73年に独立してフリーランスの写真家として活動し始めた。
普後が青年期を過ごした1960年代後半~70年代初頭は、日本の写真表現が大きく変わっていく時期であり、森山大道、中平卓馬、荒木経惟といった写真家たちが、個の眼差しにこだわるスナップショットや「私写真」を発表して、同時代の写真家たちに大きな影響力を及ぼしていた。だが、普後はそんな流れからは一歩距離を置いて、あくまで自分の作品世界を緻密に構築していく方向を目指した。学生時代や細江のアシスタントの時代に、撮影や暗室作業のテクニックを徹底して身につけたのも役に立ったのではないだろうか。
パリ、ニューヨーク滞在を経て、個展「遊泳」(画廊春秋、1976年)、「暗転」(フォト・ギャラリー・インターナショナル、1982年)などで、内面性、精神性を強調するスタイルを確立し、意欲的な個展を次々に開催して注目を集めた。その普後の作品世界が、大きく飛躍したのは、1984年のツァイト・フォト・サロンでの個展で「飛ぶフライパン」として発表され、1997年に写真集『FLYING FRYING PAN』(写像工房)として刊行された連作である。普後はこのシリーズで、見慣れた日常的な道具であるフライパンを、あたかも銀河にきらめく星々や、太陽や月の運行を思わせるような、壮大な宇宙的イメージとして再構築してみせた。彼の鮮やかな思考力と卓越した技術が見事に融合した傑作といえるだろう。
普後の緻密で粘り強い作品制作の姿勢は、2009年に銀座ニコンサロンで発表され、2012年に写真集『ON THE CIRCLE』(赤々舎)として刊行されたシリーズでも充分に発揮された。彼の家の近くにある、直径6メートルほどの貯水槽、そのコンクリートの蓋の上にさまざまな人物たちが召還され、現実と幻想のあわいを行き来するような、不思議なパフォーマンスが展開される。これまた長い時間をかけて、発想を煮詰めて形にしていった力作である。
今回、ときの忘れもので発表される「肉体と鉄棒」は、ある固定された空間で繰り広げられるパフォーマンスの記録という意味で、「ON THE CIRCLE」の延長上にあるシリーズである。鉄工所に特注して作ってもらったという高さ2メートル、幅1.8メートルの鉄棒に、さまざまなモノ、人、動物などが乗っかったり、ぶら下がったりしている。これまでとやや違って、その組み合わせは即興的であり、どこかユーモラスでもある。今年70歳になる普後は、円熟味を増しつつも、創作意欲をさらに昂進させ、融通無碍に新たな領域にチャレンジしていこうとしている。この作品を足がかりにして、また次のシリーズが生み出されていくのではないだろうか。
(いいざわ こうたろう)
●「普後均写真展―肉体と鉄棒―」出品作品のご紹介
価格はステップアップ方式です
Ed. 1/15 ~ 3/15: シート税込129,600円
Ed. 4/15 ~ 7/15: シート税込162,000円
Ed. 8/15 ~ 11/15: シート税込216,000円
Ed.12/15 ~ 15/15: シート税込270,000円
額代別途:税込16,200円
普後均
《〈肉体と鉄棒〉より 1》
2015年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり
普後均
《〈肉体と鉄棒〉より 4》
2014年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり
普後均
《〈肉体と鉄棒〉より 5》
2014年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり
普後均
《〈肉体と鉄棒〉より 6》
2016年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:35.8×44.8cm
シートサイズ:40.6×50.8cm
Ed.15
サインあり
普後均
《〈肉体と鉄棒〉より 7》
2015年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり
普後均
《〈肉体と鉄棒〉より 8》
2012年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり
普後均
《〈肉体と鉄棒〉より 9》
2015年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり
普後均
《〈肉体と鉄棒〉より 10》
2012年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり
普後均
《〈肉体と鉄棒〉より 11》
2010年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり
普後均
《〈肉体と鉄棒〉より 12》
2013年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり
普後均
《〈肉体と鉄棒〉より 14》
2012年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり
普後均
《〈肉体と鉄棒〉より 15》
2003年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:35.8×44.8cm
シートサイズ:40.6×50.8cm
Ed.15
サインあり
普後均
《〈肉体と鉄棒〉より 17》
2013年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり
普後均
《〈肉体と鉄棒〉より 18》
2012年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり
普後均
《〈肉体と鉄棒〉より 19》
2008年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり
普後均
《〈肉体と鉄棒〉より 20》
2013年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:35.8×44.8cm
シートサイズ:40.6×50.8cm
Ed.15
サインあり
普後均
《〈肉体と鉄棒〉より 21》
2003年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:35.8×44.8cm
シートサイズ:40.6×50.8cm
Ed.15
サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
ときの忘れものの通常業務は平日の火曜~土曜日です。日曜、月曜、祝日はお問い合わせには返信できませんので、予めご了承ください。
■普後均 Hitoshi FUGO(1947-)
1947年生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、細江英公に師事。1973年に独立。2010年伊奈信男賞受賞。国内、海外での個展、グループ展多数。主な作品に「遊泳」「暗転」「飛ぶフライパン」「ゲームオーバー」「見る人」「KAMI/解体」「ON THE CIRCLE」(様々な写真的要素、メタファーなどを駆使しながら65点のイメージをモノクロで展開し、普後個人の世界を表現したシリーズ)他がある。 主な写真集:「FLYING FRYING PAN」(写像工房)、「ON THE CIRCLE」(赤々舎)池澤夏樹との共著に「やがてヒトに与えられた時が満ちて.......」他。パブリックコレクション:東京都写真美術館、北海道立釧路芸術館、京都近代美術館、フランス国立図書館、他。
◆ときの忘れものは「普後均写真展―肉体と鉄棒―」を開催しています。
会期:2017年2月15日[水]―2月25日[土] *日・月・祝日休廊
作家在廊日
2月15日(水) 13:00~
2月16日(木) 13:00~
2月22日(水) 13:00~
2月24日(金) 13:00~
2月25日(土) 13:00~

ときの忘れものでは初となる普後均の写真展を開催します。新作シリーズ〈肉体と鉄棒〉から約15点をご覧いただきます。
作家と作品については大竹昭子のエッセイもお読みください。
●イベントのご案内
2月24日(金)18時より中谷礼仁さん(建築史家)をゲストに迎えてギャラリートークを開催します(要予約/参加費1,000円)。
※必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申込ください。
E-mail: info@tokinowasuremono.com
普後均(Hitoshi FUGO 1947-)――思考と技術を融合させた希有な作品世界
飯沢耕太郎(写真評論家)
普後均は1947年に神奈川県で生まれ、3歳の時から山形県米沢市で育った。1970年に日本大学芸術学部写真学科卒業後、細江英公のアシスタントを3年間務め、73年に独立してフリーランスの写真家として活動し始めた。
普後が青年期を過ごした1960年代後半~70年代初頭は、日本の写真表現が大きく変わっていく時期であり、森山大道、中平卓馬、荒木経惟といった写真家たちが、個の眼差しにこだわるスナップショットや「私写真」を発表して、同時代の写真家たちに大きな影響力を及ぼしていた。だが、普後はそんな流れからは一歩距離を置いて、あくまで自分の作品世界を緻密に構築していく方向を目指した。学生時代や細江のアシスタントの時代に、撮影や暗室作業のテクニックを徹底して身につけたのも役に立ったのではないだろうか。
パリ、ニューヨーク滞在を経て、個展「遊泳」(画廊春秋、1976年)、「暗転」(フォト・ギャラリー・インターナショナル、1982年)などで、内面性、精神性を強調するスタイルを確立し、意欲的な個展を次々に開催して注目を集めた。その普後の作品世界が、大きく飛躍したのは、1984年のツァイト・フォト・サロンでの個展で「飛ぶフライパン」として発表され、1997年に写真集『FLYING FRYING PAN』(写像工房)として刊行された連作である。普後はこのシリーズで、見慣れた日常的な道具であるフライパンを、あたかも銀河にきらめく星々や、太陽や月の運行を思わせるような、壮大な宇宙的イメージとして再構築してみせた。彼の鮮やかな思考力と卓越した技術が見事に融合した傑作といえるだろう。
普後の緻密で粘り強い作品制作の姿勢は、2009年に銀座ニコンサロンで発表され、2012年に写真集『ON THE CIRCLE』(赤々舎)として刊行されたシリーズでも充分に発揮された。彼の家の近くにある、直径6メートルほどの貯水槽、そのコンクリートの蓋の上にさまざまな人物たちが召還され、現実と幻想のあわいを行き来するような、不思議なパフォーマンスが展開される。これまた長い時間をかけて、発想を煮詰めて形にしていった力作である。
今回、ときの忘れもので発表される「肉体と鉄棒」は、ある固定された空間で繰り広げられるパフォーマンスの記録という意味で、「ON THE CIRCLE」の延長上にあるシリーズである。鉄工所に特注して作ってもらったという高さ2メートル、幅1.8メートルの鉄棒に、さまざまなモノ、人、動物などが乗っかったり、ぶら下がったりしている。これまでとやや違って、その組み合わせは即興的であり、どこかユーモラスでもある。今年70歳になる普後は、円熟味を増しつつも、創作意欲をさらに昂進させ、融通無碍に新たな領域にチャレンジしていこうとしている。この作品を足がかりにして、また次のシリーズが生み出されていくのではないだろうか。
(いいざわ こうたろう)
●「普後均写真展―肉体と鉄棒―」出品作品のご紹介
価格はステップアップ方式です
Ed. 1/15 ~ 3/15: シート税込129,600円
Ed. 4/15 ~ 7/15: シート税込162,000円
Ed. 8/15 ~ 11/15: シート税込216,000円
Ed.12/15 ~ 15/15: シート税込270,000円
額代別途:税込16,200円

《〈肉体と鉄棒〉より 1》
2015年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり

《〈肉体と鉄棒〉より 4》
2014年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり

《〈肉体と鉄棒〉より 5》
2014年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり

《〈肉体と鉄棒〉より 6》
2016年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:35.8×44.8cm
シートサイズ:40.6×50.8cm
Ed.15
サインあり

《〈肉体と鉄棒〉より 7》
2015年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり

《〈肉体と鉄棒〉より 8》
2012年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり

《〈肉体と鉄棒〉より 9》
2015年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり

《〈肉体と鉄棒〉より 10》
2012年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり

《〈肉体と鉄棒〉より 11》
2010年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり

《〈肉体と鉄棒〉より 12》
2013年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり

《〈肉体と鉄棒〉より 14》
2012年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり

《〈肉体と鉄棒〉より 15》
2003年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:35.8×44.8cm
シートサイズ:40.6×50.8cm
Ed.15
サインあり

《〈肉体と鉄棒〉より 17》
2013年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり

《〈肉体と鉄棒〉より 18》
2012年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり

《〈肉体と鉄棒〉より 19》
2008年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:44.8×35.8cm
シートサイズ:50.8×40.6cm
Ed.15
サインあり

《〈肉体と鉄棒〉より 20》
2013年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:35.8×44.8cm
シートサイズ:40.6×50.8cm
Ed.15
サインあり

《〈肉体と鉄棒〉より 21》
2003年撮影(2016年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:35.8×44.8cm
シートサイズ:40.6×50.8cm
Ed.15
サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
ときの忘れものの通常業務は平日の火曜~土曜日です。日曜、月曜、祝日はお問い合わせには返信できませんので、予めご了承ください。
■普後均 Hitoshi FUGO(1947-)
1947年生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、細江英公に師事。1973年に独立。2010年伊奈信男賞受賞。国内、海外での個展、グループ展多数。主な作品に「遊泳」「暗転」「飛ぶフライパン」「ゲームオーバー」「見る人」「KAMI/解体」「ON THE CIRCLE」(様々な写真的要素、メタファーなどを駆使しながら65点のイメージをモノクロで展開し、普後個人の世界を表現したシリーズ)他がある。 主な写真集:「FLYING FRYING PAN」(写像工房)、「ON THE CIRCLE」(赤々舎)池澤夏樹との共著に「やがてヒトに与えられた時が満ちて.......」他。パブリックコレクション:東京都写真美術館、北海道立釧路芸術館、京都近代美術館、フランス国立図書館、他。
◆ときの忘れものは「普後均写真展―肉体と鉄棒―」を開催しています。
会期:2017年2月15日[水]―2月25日[土] *日・月・祝日休廊
作家在廊日
2月15日(水) 13:00~
2月16日(木) 13:00~
2月22日(水) 13:00~
2月24日(金) 13:00~
2月25日(土) 13:00~

ときの忘れものでは初となる普後均の写真展を開催します。新作シリーズ〈肉体と鉄棒〉から約15点をご覧いただきます。
作家と作品については大竹昭子のエッセイもお読みください。
●イベントのご案内
2月24日(金)18時より中谷礼仁さん(建築史家)をゲストに迎えてギャラリートークを開催します(要予約/参加費1,000円)。
※必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申込ください。
E-mail: info@tokinowasuremono.com
コメント