『間取りと妄想』著者からのメッセージ

大竹昭子


 間取り図をつくり、そこから13の短篇を書く、とまさに『間取りと妄想』というタイトルのどおりの短編集です。
 ちいさいときから間取りを見たり、描いたり、街を歩きながら家のなかを想像したり、知り合いの住まいを見せてもらったりするのが大好きで、だから子供のときの夢は「建築家!」でしたが、算数ができないとダメだとわかってあえなく断念しました。
 その無念な思いを晴らしたいという気持ちがどこかにあったのか、間取りの物語はいつか書いてみたいと思うテーマのひとつでした。
 「マドリスト」なんて言葉もあるくらい、世間には私のような間取り好きは多いようです。しかもその楽しみは間取りからいろんなことを妄想するとことにあることが、「間取り」と「妄想」と入れてインターネットで検索すると驚くほどたくさんヒットすることからわかります。
 もしかしてこれは日本的な傾向かもしれない、とふと思い当たりました。狭い住環境のもとでは奇想天外な間取りが生まれ、またその内部が外観からは想像がつかないことが多いです。同じように、わたしたちの行動も内と外という概念にしばられており、表情や態度や体形など人の外側にあらわれているものが、内部で考えたり感じたりしていることとちぐはぐなことがよくあります。つまり、間取りは人間の内面、人体の内側、意識世界、見えない領域などのアレゴリーでもあるわけです。
 間取りが示唆するこうした要素をあたまのなかでころがしながら、13の物語をつむいでみました。
おおたけ あきこ

20170616大竹昭子大竹昭子
『間取りと妄想』

2017年
亜紀書房 発行
203ページ
18.8x13.0cm
税別1,400円


目次:
・船の舳先にいるような
・隣人
・四角い窓はない
・仕込み部屋
・ふたごの家
・カウンターは偉大
・どちらのドアが先?
・浴室と柿の木
・巻貝
・家のなかに町がある
・カメラのように
・月を吸う
・夢に見ました

“世界初”の間取り小説集!
まず家の間取りを決め、次にそこで展開される物語を書いたのは大竹さんが世界初だろう、たぶん。13の間取りと13の物語。
藤森照信氏(建築家・建築史家)

家の間取りは、心身の間取りに似ている。思わぬ通路があり、隠された部屋があり、不意に視界のひらける場所がある。空間を伸縮させるのは、身近な他者と過ごした時間の積み重ねだ。その時間が、ここではむしろ流れを絶つかのように、静かに点描されている。
堀江敏幸氏(作家)

川を渡る船のような家。海を見るための部屋。扉が二つある玄関。そっくりの双子が住む、左右対称の家。わくわくするような架空の間取りから、リアルで妖しい物語が立ちのぼる。間取りって、なんて色っぽいんでしょう。
岸本佐知子氏(翻訳家)
(本書帯より転載)

大竹昭子 Akiko OTAKE(1950-)
1950年東京都生まれ。上智大学文学部卒。作家。1979年から81年までニューヨークに滞在し、執筆活動に入る。『眼の狩人』(新潮社、ちくま文庫)では戦後の代表的な写真家たちの肖像を強靭な筆力で描き絶賛される。都市に息づくストーリーを現実/非現実を超えたタッチで描きあげる。自らも写真を撮るが、小説、エッセイ、朗読、批評、ルポルタージュなど、特定のジャンルを軽々と飛び越えていく、その言葉のフットワークが多くの人をひきつけている。現在、トークと朗読の会「カタリココ」を多彩なゲストを招いて開催中。
主な著書:『アスファルトの犬』(住まいの図書館出版局)、『図鑑少年』(小学館)、『きみのいる生活』(文藝春秋)、『この写真がすごい2008』(朝日出版社)、『ソキョートーキョー[鼠京東京]』(ポプラ社)、『彼らが写真を手にした切実さを』(平凡社)、『日和下駄とスニーカー―東京今昔凸凹散歩』(洋泉社)、『NY1980』(赤々舎)など多数。

●今日のお勧め作品は、大竹昭子です。
20170616_otake_12_parking大竹昭子
"parking"
1980-82年撮影
(2012年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:47.0x31.6cm
シートサイズ:50.8x41.0cm
Ed.10
サインあり


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