埼玉県立近代美術館の「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展でのイベントのご案内です。

【特別イベント】上映会 ジョナス・メカス監督作品「ウォールデン」
本展の出品者でもあるジョナス・メカスの代表作「ウォールデン」。自在のカメラワークと情感豊かな詩情に満ちた本作は、「日記映画」というジャンルを生み出した記念碑的作品であり、メカスが身を置いた1960年代のニューヨークのアートシーンのポートレートでもあります。
日時:3月2日 (金)、3日(土)、4日(日) 各 13:00~16:00 (12:30開場)
※各日、10:00から、1階総合案内・受付で入場整理券を配布します(1人あたり1枚まで)。
 12:30から、整理券の番号順に会場にお入りいただきます。
場所:埼玉県立近代美術館2階講堂
定員:100名 (当日先着順)、自由席/費用:無料

担当学芸員によるギャラリー・トーク
本展覧会の担当学芸員が展覧会の見どころをご紹介します。
日時:3月10日 (土) 15:00~15:30
場所:2階展示室
費用:企画展観覧料が必要です。

トークイベント「ウォーホルの版画ができるまで――現代版画センターの軌跡」
およそ80人の作り手と協力して700点を超えるエディション作品を次々と世に送り出し、同時代の美術の一角を牽引した現代版画センター。その活動において欠かすことができない存在が、版画の「刷師」である。このイベントでは、ウォーホルをはじめ、多数の作家との共同作業を担った刷師を招き、現代版画センターのオリジナル・エディションについて語っていただきます(第2部)。また、第1部では、エディション作品の提案やオークションの開催など、時代に先駆ける活動を展開した同センターの活動を振り返ります。
日時:3月18日 (日) 14:00~16:30 (13:30開場、2部制)
第1部 西岡文彦 氏(伝統版画家 多摩美術大学教授)、聞き手:梅津元(当館学芸員)
第2部 石田了一 氏(刷師 石田了一工房主催)、聞き手:西岡 文彦 氏
場所:2階講堂
定員:100名 (当日先着順)/費用:無料
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◆埼玉県立近代美術館で「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展が開催されています。
埼玉チラシメカス600会期:2018年1月16日(火)~3月25日(日)
現代版画センターと「ときの忘れもの」については1月16日のブログをお読みください。
詳細な記録を収録した4分冊からなるカタログは、ときの忘れもので扱っています。

現代版画センターは会員制による共同版元として1974年~1985年の11年間に約80作家、700点のエディションを発表し、全国各地で展覧会、頒布会、オークション、講演会等を開催しました。本展では45作家、約280点の作品と、機関誌等の資料、会場内に設置した三つのスライド画像によりその全軌跡を辿ります。

展覧会をご覧になった皆さんからのメールや、未知の方たちのtwitterやfacebookでの感想を拝読すると、よくぞここまで読み込んでくださったと賛嘆するしかない文章も多々あります。関係者としてありがたい限りですが、今日はぶろっこりーさんという方のブログ(座敷牢群島)からお許しをいただいて全文を再録させていただきます。

○<埼玉県立近代美術館「版画の景色 現代版画センターの軌跡」(座敷牢群島より再録)
「現代版画センター」についての詳細を知っているという方は戦後美術について相当通暁していると思われる。センター活動時には生まれてすらいない私は展覧会の名前を聞くまでは存在すら知らなかった。
 知らないとはいえ、埼玉近美で現代美術を取り上げるときに行かないという選択肢はない。例のごとく北浦和公園を少し歩いてから埼玉県立近代美術館へと入った。

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 靉嘔や木村光佑、高柳裕オノサト・トシノブといった面々の作品は当然面白く、見ているだけで楽しい。とはいえ、「各作家の面白さはわかるけど現代版画センターとは何ぞや?」という疑問も浮かぶ。そんな疑問を持ちながら歩みを進め、大きな空間へ抜けると、そこにはプロジェクションされるスライドと大量の資料があった。
 ここに置かれているのは現代版画センターが刊行していた『版画センターニュース』や『画譜』といった刊行物である。上述したような疑問を持っていた私は資料を読み始めたが、現代版画センターは想像していたよりも遥かに面白い組織であることがわかった。
 現代版画センターは作家側主体ではなく、コレクター・愛好者の側から設立された団体なようだ。センターは版元として活動することによって量産できる体制を整え、会員制システムを導入し「エディション」の形で作家に作品を依頼することで会員に手頃な形で良質な作品を提供することを可能にしたのだ。会場に並べられた多くの刊行物には、当時の作家たちの熱気だけでなく美術ファンたちの熱気も迸っていた。
  資料に目を通し終えて次の部屋に向かうと大量の作品が大きな部屋に展示されており、順路も設定されていない。大量の作品の放つ圧に気圧されながらも、彷徨うように作品を見ていく。美術作品の価値はタブローが持つような「世界に一枚しかない」単一性に(のみ)あるわけではなく、エディションが付されて複数枚産み出される版画も高い価値を持ち人々を惹き付ける。版画が持つ魅力とメリットを最大限に活かそうとしたのが、現代版画センターによる普及の試みなのだろう。
  日本画壇の旗手である加山又造、「原の城」で知られる彫刻家舟越保武、
磯崎新安藤忠雄といった建築家など他分野で活躍した作家たちの版画もある(磯崎新の版画にこんなに短いスパンで再遭遇するとは……)。ポップ・アートのレジェンドであるアンディ・ウォーホルの作品もある。様々なエネルギーが集まってきた「場」として「現代版画センター」が存在したのだろうと胸が熱くなった。高い価値を持ちながらも所有することも可能である版画という媒体を通じて、美術を社会へと広げていくための壮大な試みとして「現代版画センター」が立ち現れてくるような気がした。これが版画の景色なのだろうか。
 自宅へ帰り、もらってきた資料や図録を机上に開く。
 埼玉近美の広報紙『ZOCARO』2017/12-2018/1号には、五味良子と梅津元による現代版画センターが持つ3つの軸についてのわかりやすい説明が掲載されていた。版画センターは①メーカー(版元としての活動)、②オーガナイザー(オークション、展覧会などのイベント組織)、③パブリッシャー(刊行物の編集・発行)という3つの役割を担い、この3つの軸が相乗効果を起こしているという。この「現代版画センターの軌跡」展の狙いについてはこう述べられている。


この展覧会では、この3つの軸に注目して、現代版画センターを、時代の熱気を帯びた多面的な運動体としてとらえてみたいと考えています。そして、その多面的な運動体が帯びていた「熱気」を体感できる展示空間の出現と、その運動体が時代に残した「爪痕」としての作品、出来事、出版物を俯瞰的にとらえうる印刷物(カタログ)の出版を目指しています。

 少なくとも私にはこの狙いは成就しているように感じられる。現代版画センターの熱気は空間として出現していた。
 極めて魅力的な形状を持つカタログについても付言しておく必要があるだろう。A(テキスト・ブック)、B(ヴィジュアル・ブック)、C(アトラス)がケースに収められている。

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 テキスト・ブックにはエディション作品や刊行物の目録、関係者へのインタビューが、ヴィジュアル・ブックには図版が収められている。年譜と地図が巨大な一枚になっているアトラスを見るとこのプロジェクトの大きさ・熱量・密度がよくわかる。
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 1974年に活動を始めた「現代版画センター」は11年後の1985年で活動を終えてしまったという。この壮大かつ魅力的な試みを再検討する、さらにいえば美術と社会のかかわりについての思索をさらに深める端緒としてこの展覧会の持つ意味は大きいだろう。惜しむらくはセンターの終焉の経緯が掴めなかったこと、そして資料を読むことを敬遠した読者にセンターの意義が伝わりきらなかったのではないかということだ。しかし、その点を差し引いても大変に素晴らしい展覧会だった。
(20180221/ぶろっこりーさんのブログ座敷牢群島から再録)>


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西岡文彦さんの連載エッセイ「現代版画センターという景色が始まりました(1月24日、2月14日、3月14日の全3回の予定です)。草創期の現代版画センターに参加された西岡さんが3月18日14時半~トークイベント「ウォーホルの版画ができるまでー現代版画センターの軌跡」に講師として登壇されます。

光嶋裕介さんのエッセイ「身近な芸術としての版画について(1月28日ブログ)

荒井由泰さんのエッセイ「版画の景色―現代版画センターの軌跡展を見て(1月31日ブログ)

スタッフたちが見た「版画の景色」(2月4日ブログ)

毎日新聞2月7日夕刊の美術覧で「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展が紹介されました。執筆は永田晶子さん、見出しに<「志」追った運動体>とあります。

倉垣光孝さんと浪漫堂のポスター(2月8日ブログ)

嶋﨑吉信さんのエッセイ~「紙にインクがのっている」その先のこと(2月12日ブログ)

大谷省吾さんのエッセイ~「版画の景色-現代版画センターの軌跡」はなぜ必見の展覧会なのか(2月16日ブログ)

塩野哲也さんの編集思考室シオング発行のWEBマガジン[ Colla:J(コラージ)]2018 2月号が展覧会を取材し、87~95ページにかけて特集しています。

○埼玉県立近代美術館の広報誌 ソカロ87号1983年のウォーホル全国展が紹介されています。

○同じく、同館の広報誌ソカロ88号には栗原敦さん(実践女子大学名誉教授)の特別寄稿「現代版画センター運動の傍らでー運動のはるかな精神について」が掲載されています。

現代版画センターエディションNo.460 内間安瑆「FOREST BYOBU(Fragrance)」
現代版画センターのエディション作品を展覧会が終了する3月25日まで毎日ご紹介します。
ForestByobu (Fragrance)_600
内間安瑆「FOREST BYOBU(FRAGRANCE)」
1981  
木版(摺り:米田稔)
Image size: 76.0x44.0cm
Sheet size: 83.6x51.0cm
Ed.120  Signed
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パンフレット_05
出品作家45名:靉嘔/安藤忠雄 /飯田善国/磯崎新/一原有徳/アンディ・ウォーホル/内間安瑆/瑛九/大沢昌助/岡本信治郎/小田襄/小野具定/オノサト・トシノブ/柏原えつとむ/加藤清之/加山又造/北川民次/木村光佑/木村茂/木村利三郎/草間彌生/駒井哲郎/島州一/菅井汲/澄川喜一/関根伸夫/高橋雅之/高柳裕/戸張孤雁/難波田龍起/野田哲也/林芳史/藤江民/舟越保武/堀浩哉 /堀内正和/本田眞吾/松本旻/宮脇愛子/ジョナス・メカス/元永定正/柳澤紀子/山口勝弘/吉田克朗/吉原英雄

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
20170707_abe06新天地の駒込界隈についてはWEBマガジン<コラージ12月号>をお読みください。18~24頁にときの忘れものが特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。