スタッフSの海外ネットサーフィン No.60
「A Colossal World: Japanese Artists and New York, 1950s – Present」
WhiteBox, NewYork
読者の皆さまこんにちは。ふと気付けば東京では桜の花が満開な今日この頃、いかがお過ごしでしょうか? 年末年始のアートフェアラッシュもようやく終わり、ほっと一息…つけたらいいなぁと夢想しております、スタッフSこと新澤です。
今月の頭には2回目の出展となるArt on Paper 2018がありましたが、こちらは大番頭の尾立が近日中にレポートしますので、自分は本ブログでも記事を書かれている荒井由泰さんにご紹介いただいたイベント「A Colossal World: Japanese Artists and New York, 1950s – Present」について書かせていただきます。

この展覧会は2018年3月6日から4月14日まで、ニューヨーク・ロウワーイーストサイドに居を構えるWhiteBoxで開催しているのですが、自分は丁度展覧会のスタートの日にArt on Paper出展のために渡米し、しかも会場が宿泊しているホテルから徒歩10分圏内と近場であることもあり、フェア開始前の自由時間中に見て回る機会がありました。
会場のWhiteBoxは、1998年のオープンよりコンテンポラリ作品を取り扱う非営利のアートスペースとして、AICA(美術評論家連盟)にベストグループ展にノミネートされるなど、高く評価されています。
今回の「A Colossal World: Japanese Artists and New York, 1950s – Present(邦題=大きな世界を求めて:日本人アーティストとニューヨーク 1950年代から現在)」はWhiteBoxの創立20周年を記念する企画「EXODUS(出国)」シリーズの第一弾となっており、第二次世界大戦後、アメリカの占領下で日本が大いにその影響を受けた50年代から今日に至るまでに、日本からNYに移住して活躍した55人もの作家の作品を、年代順ではなく様々なテーマと相互影響を組み合わせ、総合的に構成しています。
以下、展示作品の一部をご紹介します:
出展作品は多岐にわたり、絵画、版画、写真は勿論、オブジェ、動画や当時の雑誌の記事、作家と市の間に交わされた手紙なども資料して展示されています。




千住博
《Waterfall》
久保田成子
《Nam June Paik》
ときの忘れものでも作品を取り扱っているナム・ジュン・パイクの奥様。
ホームページに掲載しているパイクの作品とよく似た雰囲気の作品です。
靉嘔
《Finger Box Kit》
作品と作品を見る人をインタラクトさせるために、指を差し入れるという機能に特化した立体作品。
ときの忘れものでは現代版画センター時代から平面作品を数多く取り扱っているため、靉嘔によるプレーンな色合いの立体作品というのはとても新鮮でした。
靉嘔
《Rooster》《Pig》
こちらは逆にとても見慣れた靉嘔スタイル。
普段画廊で日常的に触れている作品を、こうして海を隔てた海外で展示されているのを見ると、やはり不思議に感じます。
AIKO
《Sweetheart Kiss》
去年の6月の連載記事で紹介した「Wynwood Walls」にも作品を展示していたグラフィティアーティスト。今回も壁一面に独自の世界を描いています。
村上隆
《Eco Eco Ranger Earth Force》
奈良美智と並び、日本のサブカルチャーをアートにして、それを知らしめた作家。
この作品は2005年にジャパンソサエティNYでキュレーションした「Little Boy: the Arts of Japan's Exploding Subculture」の成功を記念して制作されたもの。
猪熊弦一郎
ジョン・ケージ、マース・カニンガム等との自宅での記念写真。
杉本博司
アメリカ自然博物館から作家に宛てた、館内ジオラマの撮影許可。
オノ・ヨーコ
《Painting to be stepped on》
踏みつけてできた足跡を作品にするという、コンテンポラリとしては良くある手法のように思えますが、作品の表に「Stepped on by Yoko & John」と書かれているのを見ると、途端に価値が違って見えてしまう辺り、作家の意図に嵌っているのか、単に自分が俗っぽいのか…。
佐藤正明
《Subway No. 24》
下記掲載の週刊NY生活のトップを飾った作品です。
佐藤正明
《The Big Apple No. 42》
長澤伸穂
《Nuke Cuisine》
今回の個人的な一押し作品。
アメリカン・ポップアートのモチーフとしては世界有数であるキャンベルのマッシュルームスープ缶に、原爆で発生するキノコ雲をコラージュするという作品。
何が凄いって、アメリカでこの作品を作って、しかもそれを真珠湾攻撃50周年を記念する個展で発表するところが凄いです。ちなみにアイデアの段階ではアメリカが公式に発表している核実験回数と同数を制作する予定だったそうですが、流石に835個は多すぎたのか実現はされていない様子。
上記作品のアップ。
裏面の成分表にはカップ1杯の「砕かれた」平和、2.5オンスの「みじん切りの」希望、「軽く打ちのめした」人種1個等、少々どころではなくブラックなユーモアが。ちなみにこれ一缶で53億人前だそうです。

佐藤正明《Subway No. 24》がトップを飾った週刊NY生活667号。
クリックすると拡大可能なアーカイヴ版のページに移動します。
展示空間は1階と地階でそこまで広くありませんが、それだけに密度は高いです。
ニューヨーク・チャイナタウンやソーホーに出向かれた際にお時間があれば、是非お立ち寄りください。
(しんざわ ゆう)
WhiteBox公式ページ(英文)
展覧会紹介ページ(英文)
●今日のお勧め作品は、靉嘔です。
靉嘔
「70 GRADATION RAINBOW LANDSCAPE」
1984年
シルクスクリーン
Image size: 55.8x75.4cm
Sheet size: 60.0x78.2cm
Ed.80 Signed
※レゾネNo.518(阿部出版)
●埼玉県立近代美術館で開催されていた「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展は昨日終了いたしました。出品作品と資料を提供した者として、たくさんの皆様がご覧になってくださったことに深い感謝をささげます。
立派な展覧会に組み立ててくださった埼玉県立近代美術館の学芸員の皆さん、ほんとうにご苦労さまでした。
展覧会が始まった1月16日から毎日、現代版画センターのエディション作品をご紹介してきましたが、最終日の昨日は西岡文彦さんご推薦の草間彌生の「南瓜」でした(エディション番号523番)。
現代版画センターのエディションには1番・靉嘔「I love you」から726番・菅井汲「赤の空間」まで番号がついています(欠番も多々あり)。その他にもエディション番号無しの「番外」作品が50点ほどあります(余りに昔のことなので今回の資料作成では番外作品すべてを発掘できませんでした)。
本日はそれら番外作品の代表としてオノサト・トシノブ「銀河」をご紹介します。

オノサト・トシノブ「銀河」
1981年
シルクスクリーン(刷り:岡部徳三)
Image size: 43.7×100.1cm
Sheet size: 54.6×110.8cm
Ed.150 Signed
*群馬県桐生支部(奈良彰一)への協力作品
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●書籍・カタログのご案内
『植田正治写真展―光と陰の世界―Part II』図録
2018年3月8日刊行
ときの忘れもの 発行
24ページ
B5判変形
図版18点
執筆:金子隆一(写真史家)
デザイン:岡本一宣デザイン事務所
価格:800円(税込)※送料別途250円

『植田正治写真展―光と陰の世界―Part I』図録
2017年
ときの忘れもの 発行
36ページ
B5判
図版33点
執筆:金子隆一(写真史家)
デザイン:北澤敏彦(DIX-HOUSE)
価格:800円(税込)※送料別途250円
◆スタッフSの「海外ネットサーフィン」は毎月26日の更新です。
●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18~24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

「A Colossal World: Japanese Artists and New York, 1950s – Present」
WhiteBox, NewYork
読者の皆さまこんにちは。ふと気付けば東京では桜の花が満開な今日この頃、いかがお過ごしでしょうか? 年末年始のアートフェアラッシュもようやく終わり、ほっと一息…つけたらいいなぁと夢想しております、スタッフSこと新澤です。
今月の頭には2回目の出展となるArt on Paper 2018がありましたが、こちらは大番頭の尾立が近日中にレポートしますので、自分は本ブログでも記事を書かれている荒井由泰さんにご紹介いただいたイベント「A Colossal World: Japanese Artists and New York, 1950s – Present」について書かせていただきます。


会場のWhiteBoxは、1998年のオープンよりコンテンポラリ作品を取り扱う非営利のアートスペースとして、AICA(美術評論家連盟)にベストグループ展にノミネートされるなど、高く評価されています。
今回の「A Colossal World: Japanese Artists and New York, 1950s – Present(邦題=大きな世界を求めて:日本人アーティストとニューヨーク 1950年代から現在)」はWhiteBoxの創立20周年を記念する企画「EXODUS(出国)」シリーズの第一弾となっており、第二次世界大戦後、アメリカの占領下で日本が大いにその影響を受けた50年代から今日に至るまでに、日本からNYに移住して活躍した55人もの作家の作品を、年代順ではなく様々なテーマと相互影響を組み合わせ、総合的に構成しています。
以下、展示作品の一部をご紹介します:






《Waterfall》

《Nam June Paik》
ときの忘れものでも作品を取り扱っているナム・ジュン・パイクの奥様。
ホームページに掲載しているパイクの作品とよく似た雰囲気の作品です。

《Finger Box Kit》
作品と作品を見る人をインタラクトさせるために、指を差し入れるという機能に特化した立体作品。
ときの忘れものでは現代版画センター時代から平面作品を数多く取り扱っているため、靉嘔によるプレーンな色合いの立体作品というのはとても新鮮でした。

《Rooster》《Pig》
こちらは逆にとても見慣れた靉嘔スタイル。
普段画廊で日常的に触れている作品を、こうして海を隔てた海外で展示されているのを見ると、やはり不思議に感じます。

《Sweetheart Kiss》
去年の6月の連載記事で紹介した「Wynwood Walls」にも作品を展示していたグラフィティアーティスト。今回も壁一面に独自の世界を描いています。

《Eco Eco Ranger Earth Force》
奈良美智と並び、日本のサブカルチャーをアートにして、それを知らしめた作家。
この作品は2005年にジャパンソサエティNYでキュレーションした「Little Boy: the Arts of Japan's Exploding Subculture」の成功を記念して制作されたもの。

ジョン・ケージ、マース・カニンガム等との自宅での記念写真。

アメリカ自然博物館から作家に宛てた、館内ジオラマの撮影許可。

《Painting to be stepped on》
踏みつけてできた足跡を作品にするという、コンテンポラリとしては良くある手法のように思えますが、作品の表に「Stepped on by Yoko & John」と書かれているのを見ると、途端に価値が違って見えてしまう辺り、作家の意図に嵌っているのか、単に自分が俗っぽいのか…。

《Subway No. 24》
下記掲載の週刊NY生活のトップを飾った作品です。

《The Big Apple No. 42》

《Nuke Cuisine》
今回の個人的な一押し作品。
アメリカン・ポップアートのモチーフとしては世界有数であるキャンベルのマッシュルームスープ缶に、原爆で発生するキノコ雲をコラージュするという作品。
何が凄いって、アメリカでこの作品を作って、しかもそれを真珠湾攻撃50周年を記念する個展で発表するところが凄いです。ちなみにアイデアの段階ではアメリカが公式に発表している核実験回数と同数を制作する予定だったそうですが、流石に835個は多すぎたのか実現はされていない様子。

裏面の成分表にはカップ1杯の「砕かれた」平和、2.5オンスの「みじん切りの」希望、「軽く打ちのめした」人種1個等、少々どころではなくブラックなユーモアが。ちなみにこれ一缶で53億人前だそうです。

佐藤正明《Subway No. 24》がトップを飾った週刊NY生活667号。
クリックすると拡大可能なアーカイヴ版のページに移動します。
展示空間は1階と地階でそこまで広くありませんが、それだけに密度は高いです。
ニューヨーク・チャイナタウンやソーホーに出向かれた際にお時間があれば、是非お立ち寄りください。
(しんざわ ゆう)
WhiteBox公式ページ(英文)
展覧会紹介ページ(英文)
●今日のお勧め作品は、靉嘔です。

「70 GRADATION RAINBOW LANDSCAPE」
1984年
シルクスクリーン
Image size: 55.8x75.4cm
Sheet size: 60.0x78.2cm
Ed.80 Signed
※レゾネNo.518(阿部出版)
●埼玉県立近代美術館で開催されていた「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展は昨日終了いたしました。出品作品と資料を提供した者として、たくさんの皆様がご覧になってくださったことに深い感謝をささげます。
立派な展覧会に組み立ててくださった埼玉県立近代美術館の学芸員の皆さん、ほんとうにご苦労さまでした。
展覧会が始まった1月16日から毎日、現代版画センターのエディション作品をご紹介してきましたが、最終日の昨日は西岡文彦さんご推薦の草間彌生の「南瓜」でした(エディション番号523番)。
現代版画センターのエディションには1番・靉嘔「I love you」から726番・菅井汲「赤の空間」まで番号がついています(欠番も多々あり)。その他にもエディション番号無しの「番外」作品が50点ほどあります(余りに昔のことなので今回の資料作成では番外作品すべてを発掘できませんでした)。
本日はそれら番外作品の代表としてオノサト・トシノブ「銀河」をご紹介します。

オノサト・トシノブ「銀河」
1981年
シルクスクリーン(刷り:岡部徳三)
Image size: 43.7×100.1cm
Sheet size: 54.6×110.8cm
Ed.150 Signed
*群馬県桐生支部(奈良彰一)への協力作品
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●書籍・カタログのご案内

2018年3月8日刊行
ときの忘れもの 発行
24ページ
B5判変形
図版18点
執筆:金子隆一(写真史家)
デザイン:岡本一宣デザイン事務所
価格:800円(税込)※送料別途250円

『植田正治写真展―光と陰の世界―Part I』図録
2017年
ときの忘れもの 発行
36ページ
B5判
図版33点
執筆:金子隆一(写真史家)
デザイン:北澤敏彦(DIX-HOUSE)
価格:800円(税込)※送料別途250円
◆スタッフSの「海外ネットサーフィン」は毎月26日の更新です。
●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18~24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

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