「一日だけの須賀敦子展」

会期:2018年11月22日(木)
須賀敦子の旅路
11時~19時/大竹昭子の写真作品10余点と、書籍の展示販売(入場無料)

*19時30分よりの大竹昭子さんと植田実さんによるトーク「須賀敦子の文学を読み直す」は満席です(受付終了)。

会場:ときの忘れもの
東京都文京区本駒込5-4-1 LAS CASAS 電話03-6902-9530
主催:BOOKS青いカバ


ゲストの植田実さんは仏文から建築界に入った変わり種。文学と建築に等しく愛を注ぐ尊敬する書き手であり、私をギャラリーときの忘れものにつないでくださった方です。会場の「ギャラリーときの忘れもの」は阿部勤さんの設計、須賀敦子さんが感嘆の声をあげたであろう名建築です! その場所で須賀さんにゆかりのある写真に囲まれつつ植田さんとお話ができるとは、夢のような企画です。というのも、須賀さんはとても建築が好きでした。『時のかけらたち』というヨーロッパの建築や街路について綴った著作には、ローマのパンテオンが登場しますが、その描写にはなんど読み返してもうならされます。だれよりも須賀さんに見ていただきたい、そんな気持ちを込めて準備いたします。
大竹昭子

●販売する書籍リスト(著者名の欄、翻訳者の記載がないものは須賀敦子訳 )
須賀敦子注文リスト-001
上掲リストのとおり、須賀敦子さんの著書など多数を展示販売いたします。

当日は、イタリア文化会館のご協力を得て、須賀敦子さんがイタリアで出版した本をお借りして展示できることになりました。
展示予定のひとつは、近代日本文学作品から須賀さんがセレクトし、ペッピー丿の協力を得てイタリア語に翻訳した、イタリアでの最初の大きな仕事『現代日本文学選』です。
ここにはヨーロッパではじめて紹介された日本の小説もはいっており、
当時、日本文学に興味のあるイタリア人は、川端康成、谷崎潤一郎などをイタリア語で読めるなんてなんという幸運! と思ったそうです。
さらに、コルシア書店が版元となって出版され、河出書房新社が日本語版をだした『こうちゃん』も展示したいと思います。
日本語版は当日販売もいたしますので、あわせてご覧になれるまたとない機会です。
どうぞお出かけください。

●大竹昭子さんからの追伸
イタリア文化会館に伺って以下の5冊借りてきました。

『こうちゃん』1960
須賀の作品が活字になった最初の本で、ミラノに転居した年に出ている。こうちゃんという男の子が主人公で、書き始めたのはローマ。出会ってすぐにペッピーノに書いていると伝えたところ、出版しようということになり、彼がイタリア語に訳してコルシア書店から出版された。シンプルなレイアウトが美しく、最初と最後に版画が入っている。

『春琴抄』谷崎潤一郎 1963
谷崎潤一郎は須賀がもっとも敬愛した作家である。ペッピーノの紹介でボンピアーニ社のセルジョ・モランドに会い、日本文学について訊かれたときに、おそらくもっとも力を込めて語ったのが谷崎だったのではないか。イタリア語訳を依頼されてまず仕上げたのが「春琴抄」だった。ペッピーノとの共訳。

『現代日本文学選』1965
須賀が選者になって日本文学のアンソロジーを編むという話は、セルジョ・モランドに会って間もなくもちあがったのだろう。4年がかりで24人の25作品を翻訳。唯一、谷崎潤一郎だけが2作選ばれており、須賀の谷崎への思い入れの深さがわかる。ほかにも当時のイタリアはおろか、世界でもまだ翻訳されていないものが数多くあり、日本文学を世界に紹介した先駆的な仕事だった。

『夕べの雲』庄野潤三 1966
本書が日本での刊行は1965年なので、出版されてすぐに読み、翻訳を決めたのだろう。インターネットなどない時代に、どのようにしてこの本が出たことを知ったのか興味をそそられる。新刊情報を伝える人がいたのだろうか。帰国後、庄野と行き来するようになり、自宅に招かれたことなどを、須賀の口から聞いた記憶がある。

『山の音』川端康成 1969
川端は1968年にノーベル文学賞を受賞。授賞式の後にイタリアに立ち寄った際、須賀は『山の音』を翻訳する許可をもらうために川端と会食の機会をもった。2年前に夫を亡くし、彼からもっといろいろことを聞いておくべきだったと悔やんでいると漏らすと、「それが小説なんだ、そこから小説がはじまるのです」と川端に言われたという記述が「小説のはじまるところ」(『本に読まれて』)に出てくる。
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◎「Narratori giapponesi moderni」(現代日本文学選、1965)収録作品
夏目漱石「坊っちゃん」
森鴎外「高瀬舟」
樋口一葉「十三夜」
泉鏡花「高野聖」
国木田独歩「源叔父」
田山花袋「兵卒」
志賀直哉「范の犯罪」
菊池寛「忠直卿行状記」
谷崎潤一郎「刺青」「夢の浮橋」
芥川龍之介「地獄変」
井伏鱒二「山椒魚」
横光利一「春は馬車に乗って」
川端康成「ほくろの手紙」
坪田譲治「お化けの世界」
太宰治「ヴィヨンの妻」
林芙美子「下町」
丹羽文雄「厭がらせの年齢」
井上靖「闘牛」
大岡昇平「俘虜記」
三島由紀夫「志賀寺上人の恋」
深沢七郎「東北の神武たち」
石川淳「紫苑物語」
庄野潤三「道」
中島敦「名人」
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●写真作品の展示
大竹昭子さんが撮影した、須賀敦子と関わりの深いミラノ・ヴェネツィア、ローマの写真作品10余点を展示販売いたします。
1大竹昭子(1)No.1)大竹昭子
「ミラノ/ランブラーテ墓地 中央左よりマリオ、ルイージ、ブルーナの墓」
Type-Cプリント
シートサイズ:35.5×43.0cm
Ed.8 Signed


2大竹昭子(8)出品No.2)大竹昭子
「ヴェネツィア/カナル・グランデ」
Type-Cプリント
シートサイズ:35.5×43.0cm
Ed.8   Signed


3大竹昭子(9)出品No.3)大竹昭子
「ミラノ/市電」
Type-Cプリント
シートサイズ:35.5×43.0cm
Ed.8 Signed


4大竹昭子(12)No.4)大竹昭子
「ローマ/ヴィラ・デステ」
Type-Cプリント
シートサイズ:35.5×43.0cm
Ed.8  Signed


5大竹昭子(13)出品No.5)大竹昭子
「ミラノ/須賀の義父が勤めていた信号所」
Type-Cプリント
シートサイズ:35.5×43.0cm
Ed.8   Signed


6大竹昭子(3)出品No.6)大竹昭子
「ヴェネツィア 冬のフォンダメンタ・ヌオーヴェ」
Type-Cプリント
シートサイズ:35.5×43.0cm
Ed.8   Signed


7大竹昭子(15)出品No.7)大竹昭子
「ローマ/ナタリア・ギンズブルグ邸」
Type-Cプリント
シートサイズ:43.0×35.5cm
Ed.8  Signed


8大竹昭子(16)出品No.8)大竹昭子
「ヴェネチア/水路」
Type-Cプリント
シートサイズ:43.0×35.5cm
Ed.8  Signed


9大竹昭子(17)出品No.9)大竹昭子
「ローマ/ヴィラ・アドリアーナの廃墟」
Type-Cプリント
シートサイズ:35.5×43.0cm
Ed.8  Signed


10大竹昭子(18)出品No.10)大竹昭子
「ミラノ/ランブラーテ墓地」
Type-Cプリント
シートサイズ:35.5×43.0cm
Ed.8  Signed


11大竹昭子(19)出品No.11)大竹昭子
「ヴェネツィア/リド島」
Type-Cプリント
シートサイズ:35.5×43.0cm
Ed.8  Signed


12大竹昭子(20)出品No.12)大竹昭子
「ローマ/アラチェリの階段」
Type-Cプリント
シートサイズ:35.5×43.0cm
Ed.8  Signed


13大竹昭子(21)出品No.13)大竹昭子
「ミラノ/須賀が住んでいたムジェッロ街のアパート」
Type-Cプリント
シートサイズ:43.0×35.5cm
Ed.8  Signed

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須賀敦子時のかけらたち


●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18~24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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