<迷走写真館>一枚の写真に目を凝らす 第72回
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四つの窓のなかに12個の顔がある。
奥にもっといるかもしれないが、窓のなかに見えているのは12人だ。
年齢はさまざまで、いちばん小さい子は一、二歳で、上は七、八十代といったところだ。
子どもの性別が判断がつきにくいのだけれど、ぜんいん女のように見える。
彼らは窓際に張りついて下を見下ろしている。
視線が真下に向けられている人と、左か右の方向に向けられている人とがいるから、
きっと眼下にパレードが行き過ぎようとしているのだ。
建物は年期が入っていて、上部に煉瓦があしらわれ、頑丈そうだ。
四つの窓は上下に仕切られ、フレームの数はぜんぶで八つ。
矩形の集合という感じがする。
右上にはエアコンの室外機が取り付けられているが、これも矩形。
小さな正方形と長方形が組み合わされた上部の煉瓦壁も、矩形ばかり。
しかもカメラはそのディテールをしっかりとらえているから、堅牢なファサードという印象は強まり、ちょっとやそっとのことではびくともしそうにない。
そのような堅い壁の内側に、12個の顔が並んでいる。
顔は一様に丸くて、平たい。
矩形の力が丸い円を際立たせているのだ。
窓枠ごとに人が立っているが、その人たちの年格好と顔立ちには共通性がみられる。
いちばん左の窓のふたりは姉妹と言われたら信じてしまうほど似ている。
同様に、その隣の窓にいる三人の子どもそっくりで、その後ろに立っている人も彼らの母親ではないかと想像させる。
右に移るにつれて顔の形は曖昧になっていくが、それでも何か共通するものが感じられるのは、窓のフレームの効果だろうか。
区切られると、眼はそこに共通項を見いだそうとするようだ。
真剣な表情で窓の内側から街路を見下ろしている彼らは、この建物に住んでいる、というより、収容されている、という感じがしてならない。
窓の表面がかすんでいて、室内の様子が見えないこともあるが、それだけではない。
いちばんの理由は四角形だらけのファサードにある。
矩形にはなにかを閉じこめたいという意思が秘められていて、円はころころと転がってそれに従ってしまうのだ。
大竹昭子(おおたけあきこ)
●掲載写真のタイトル
East Broadway Chinatown, 1 p.m. October 15, 1986
●掲載写真のクレジット
© Masao Gozu 郷津雅夫 写真集『New York』(2018) より
●作家紹介
郷津雅夫 Masao Gozu
1946年長野県生まれ
1971-73年ブルックリン・ミュージアム付属アートスクールに絵画を学ぶ。
1980年、ニューヨーク、O.K. Harris Galleryにてマイノリティの表情を捉え たWindows」の個展。以降、O.K. Harris galleryで専属アーチストとして写真展、写真から転化した窓の立体彫刻展を発表し続ける。 その他、世界の美術館等でグループ展多数。
1985年、第10回伊奈信男賞(ニコンサロン年度賞)受賞。1990年パリ写真月間特別審査員賞を受賞。
コレクション:窓(立体,写真)
The Magulies collection at the Wearehouse, Maiam
(マーティン マグリスコレクション、マイアミ、フロリダ)
The New Orleans Museum of Arts(ニューオーリンズ美術館)
Lowe Art Museum,Maiam Florida(ローウアートミュージアム、マイアミ、フロリダ)
Musee National D’art Modern, Paris France
(ポンピドゥー近代美術館、パリ、フランス)他
現在、マンハッタンの自宅から2時間ほどの山中にアトリエを構え、窓の彫刻を制作中。
●写真集のご紹介
New York
判型250 x 175 mm
頁数152頁
製本ハードカバー
発行年 2018
出版社:禅フォトギャラリー
言語英語、日本語
ISBN978-4-905453-64-2
●2018年元旦のお勧め作品は靉嘔です。
靉嘔
《ルソーに捧ぐ》
1987年
シルクスクリーン(刷り:岡部徳三)
イメージ・サイズ:60.0x45.5cm
シート・サイズ:75.2×55.5cm
Ed. 200 Signed
レゾネNo.597(『虹・虹 靉嘔版画全作品集 1982-2000』阿部出版)
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●ただいま冬季休廊中
ときの忘れものは1月7日(月)までは冬季休廊中、新年の営業は1月8日(火)からです。
ブログは年中無休、毎日更新していますのでお楽しみください。
◆ときの忘れものは「第27回瑛九展 」を開催します。
会期:2019年1月8日[火]―1月26日[土] 11:00-19:00※日・月・祝日休廊

ときの忘れものは3月末開催のアートバーゼル香港2019に「瑛九展」で初出展することになりました。
香港に作品を持って行く前に、ギャラリーで出品作品を公開いたします。
瑛九がさまざまな技法で試みた「光の絵画」への志向が最後に行き着いたのが点描で画面全体を埋め尽くす独自の抽象絵画でした。本展では輝くばかりの100号の油彩大作《海の原型》(1958年)など代表作ほか、カメラを使わず印画紙に直接光を当ててデッサンする「フォトデッサン(フォトグラム)」など1930年代最初期から最晩年までの作品をご覧いただきます。
●ときの忘れものは〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。


四つの窓のなかに12個の顔がある。
奥にもっといるかもしれないが、窓のなかに見えているのは12人だ。
年齢はさまざまで、いちばん小さい子は一、二歳で、上は七、八十代といったところだ。
子どもの性別が判断がつきにくいのだけれど、ぜんいん女のように見える。
彼らは窓際に張りついて下を見下ろしている。
視線が真下に向けられている人と、左か右の方向に向けられている人とがいるから、
きっと眼下にパレードが行き過ぎようとしているのだ。
建物は年期が入っていて、上部に煉瓦があしらわれ、頑丈そうだ。
四つの窓は上下に仕切られ、フレームの数はぜんぶで八つ。
矩形の集合という感じがする。
右上にはエアコンの室外機が取り付けられているが、これも矩形。
小さな正方形と長方形が組み合わされた上部の煉瓦壁も、矩形ばかり。
しかもカメラはそのディテールをしっかりとらえているから、堅牢なファサードという印象は強まり、ちょっとやそっとのことではびくともしそうにない。
そのような堅い壁の内側に、12個の顔が並んでいる。
顔は一様に丸くて、平たい。
矩形の力が丸い円を際立たせているのだ。
窓枠ごとに人が立っているが、その人たちの年格好と顔立ちには共通性がみられる。
いちばん左の窓のふたりは姉妹と言われたら信じてしまうほど似ている。
同様に、その隣の窓にいる三人の子どもそっくりで、その後ろに立っている人も彼らの母親ではないかと想像させる。
右に移るにつれて顔の形は曖昧になっていくが、それでも何か共通するものが感じられるのは、窓のフレームの効果だろうか。
区切られると、眼はそこに共通項を見いだそうとするようだ。
真剣な表情で窓の内側から街路を見下ろしている彼らは、この建物に住んでいる、というより、収容されている、という感じがしてならない。
窓の表面がかすんでいて、室内の様子が見えないこともあるが、それだけではない。
いちばんの理由は四角形だらけのファサードにある。
矩形にはなにかを閉じこめたいという意思が秘められていて、円はころころと転がってそれに従ってしまうのだ。
大竹昭子(おおたけあきこ)
●掲載写真のタイトル
East Broadway Chinatown, 1 p.m. October 15, 1986
●掲載写真のクレジット
© Masao Gozu 郷津雅夫 写真集『New York』(2018) より
●作家紹介
郷津雅夫 Masao Gozu
1946年長野県生まれ
1971-73年ブルックリン・ミュージアム付属アートスクールに絵画を学ぶ。
1980年、ニューヨーク、O.K. Harris Galleryにてマイノリティの表情を捉え たWindows」の個展。以降、O.K. Harris galleryで専属アーチストとして写真展、写真から転化した窓の立体彫刻展を発表し続ける。 その他、世界の美術館等でグループ展多数。
1985年、第10回伊奈信男賞(ニコンサロン年度賞)受賞。1990年パリ写真月間特別審査員賞を受賞。
コレクション:窓(立体,写真)
The Magulies collection at the Wearehouse, Maiam
(マーティン マグリスコレクション、マイアミ、フロリダ)
The New Orleans Museum of Arts(ニューオーリンズ美術館)
Lowe Art Museum,Maiam Florida(ローウアートミュージアム、マイアミ、フロリダ)
Musee National D’art Modern, Paris France
(ポンピドゥー近代美術館、パリ、フランス)他
現在、マンハッタンの自宅から2時間ほどの山中にアトリエを構え、窓の彫刻を制作中。
●写真集のご紹介

判型250 x 175 mm
頁数152頁
製本ハードカバー
発行年 2018
出版社:禅フォトギャラリー
言語英語、日本語
ISBN978-4-905453-64-2
●2018年元旦のお勧め作品は靉嘔です。

《ルソーに捧ぐ》
1987年
シルクスクリーン(刷り:岡部徳三)
イメージ・サイズ:60.0x45.5cm
シート・サイズ:75.2×55.5cm
Ed. 200 Signed
レゾネNo.597(『虹・虹 靉嘔版画全作品集 1982-2000』阿部出版)
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●ただいま冬季休廊中
ときの忘れものは1月7日(月)までは冬季休廊中、新年の営業は1月8日(火)からです。
ブログは年中無休、毎日更新していますのでお楽しみください。
◆ときの忘れものは「第27回瑛九展 」を開催します。
会期:2019年1月8日[火]―1月26日[土] 11:00-19:00※日・月・祝日休廊

ときの忘れものは3月末開催のアートバーゼル香港2019に「瑛九展」で初出展することになりました。
香港に作品を持って行く前に、ギャラリーで出品作品を公開いたします。
瑛九がさまざまな技法で試みた「光の絵画」への志向が最後に行き着いたのが点描で画面全体を埋め尽くす独自の抽象絵画でした。本展では輝くばかりの100号の油彩大作《海の原型》(1958年)など代表作ほか、カメラを使わず印画紙に直接光を当ててデッサンする「フォトデッサン(フォトグラム)」など1930年代最初期から最晩年までの作品をご覧いただきます。
●ときの忘れものは〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

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